2023年7月、札幌・繁華街ススキノのホテルで男性会社員（62＝当時）が殺害された事件。逮捕・起訴された親子3人のうち、殺人ほう助や死体損壊ほう助などの罪に問われている父親・田村修被告（61）の裁判員裁判初公判が1月14日に札幌地裁で開かれた。
現在保釈中の修被告、手錠と腰縄はつけられていない。黒いスーツに紺色のネクタイという服装で、逮捕当時よりも痩せているようだった。
妻である浩子被告（62）の裁判などを通して、これまで田村一家の異常な家庭環境が明らかになってきた。殺人や死体損壊などの罪に問われている娘の田村瑠奈被告（30）は、中学から不登校になり、18歳ごろから自宅に引きこもるようになったという。裁判を傍聴したジャーナリスト・高橋ユキ氏が語る。
「いつしか彼女は、自身に複数の人格が入り込んでいるという“ゾンビ妄想”を抱えるようになりました。『田村瑠奈は死んだ』と言って、『シンシア』や『ルルー』などと名乗っていたといいます。そんな不安定な状態にある娘を下手に刺激してしまわないように、両親は細心の注意を払って生活していたようです」（高橋氏）
事件発生後、瑠奈被告は被害男性Aさんの頭部を持ち去り、自宅浴室に保管。しかし、本当におぞましい行為はここからだった。今回行われた修被告の初公判では、瑠奈被告がAさんの頭部を損壊した際の様子が、昨年の浩子被告の公判よりも詳細に語られた。
詳細に語られた「損壊」
「瑠奈被告はAさんの頭部から皮膚を剥ぎ、左眼球、舌、食道を切除しました。瓶に入れてエタノールにつけたAさんの左眼球を両親に“披露”し、修被告は、『すごいね』などと言葉をかけたとのことです」（同前）
瑠奈被告が遺体を弄ぶ過程は、修被告によって克明に記録されたという。
「7月7日夜、修被告は浩子被告からLINEで『撮影カメラマンするでしょ』と依頼され、瑠奈被告が頭部から右眼球を取り出す様子を撮影しました。検察側の主張では、“修被告は瑠奈被告の指示を待つことなく、彼女の手元をペンライトで照らし、ズームをしながら眼球を鮮明に撮影した”ことで、直接的にも心理的にも犯行を手助けしたと指摘しています。
さらに同月19日には、瑠奈被告はAさんの頭部から剥ぎ取った頭皮をワイヤーに吊るして加工したものを“作品”と呼び、浩子被告に見せていました。その後、浩子被告は修被告に『よろしかったらお嬢さんの作品ご覧くださいな』とLINEを送っていたそうです」（同前）
真っ向から対立する検察側と弁護側
今回の公判では、「被告人の行為は、瑠奈被告の殺害や死体損壊の手助けにあたるか？」が争点となっている。検察側は、以下のように指摘している。
「被告人は、（瑠奈被告が）頭部の隠匿保管にあたり自宅を利用していたことを認識し、やめさせる態度を取らなかった。また、撮影を頼まれたのを引き受けて、右眼球を摘出することを認識しながらも拒否しないばかりか、瑠奈被告の指示なくズームし手元を照らすなど調整しつつ残したいところを鮮明に撮影し、右眼球摘出行為を容認していた」（検察側の主張）
一方の弁護側は、「犯行意図を事前に知らず、犯行を容易にするという認識もなく、死体遺棄ほう助にあたらない」などとして、修被告の無罪を主張。双方の言い分は、真っ向から対立している。
修被告による娘の意図を汲み取るようなスムーズな撮影が、犯行を助長させたのか。“お嬢さんの作品”に修被告が加担していたと認められるかどうか、世間の注目が集まっている。