警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、大いに酔っ払わせて前後不覚にさせた人をコンビニに誘導したうえで行われる”犯罪”について。
* * *
にぎわう繁華街で「目が覚めたら、駅前で寝ていた」という男性の話を聞いた。当時、酔った男性に声をかけ、コンビニのATMに連れて行き、現金を引き出させてだまし取るという手口が相次いでいた。新橋の繁華街では、酔った通行人を狙って店の女の子たちに客引きをさせ、店で強い酒を飲ませて泥酔させて高額な飲食代を請求したり、カード決済させるというぼったくり事案も相次いでいた。
「新橋で飲んで酔っ払い、女の子に声をかけられついていったのは覚えてるが」と語る彼も被害者の1人だ。40代の彼は大企業に勤める中間管理職。結婚しているが単身赴任で1人暮らし。家に1人ということもあり、友人や同僚たちと飲んで歩くのが好きだった。
その日の朝、待ち合わせの場所に現れない彼を心配し、友人たちは彼に何度も電話した。連絡もなく時間に遅れるような人物ではなく、電話はつながらない。ラインを入れても既読にならない。仕方なく同僚らはラインにメッセージを入れて出発した。昼前、彼からようやく電話がきた。「どうしたんだ?」「今、どこだ?」と聞く同僚に、彼は「目が覚めたら、新橋の駅前で…」と答えた。
前夜、彼は友人たちと新橋にある焼鳥屋に出かけた。昔の仲間との飲み会は楽しく、店をはしごし飲み会は終了。だが酒に強い彼はまだ飲み足りなかった。「友人と別れて1人店を探して歩いていたら、駅の近くで『お兄さん遊ばない。安くするよ』って」。声をかけてきたのはアジア系の若い女性。「カタコトの日本語で話しかけられ『いいことしよう』と腕を組まれ、『いいね』と答えたら、店に連れていかれた」。この時点で彼はけっこう酔っていたが、意識はしっかりしていた。
店の中が暗かった。ボックス席に座ると、声をかけてきた女の子が隣に座り、水割りを作ってくれた。それを飲んでいるうちに意識が朦朧とし始め、気が付いたら新橋の駅前に寝転がっていたのだ。「目が覚めてからも頭がぼーっとして、気持ちが悪くて。今考えると、酒の中に何か入れられたのかもしれない」。枕にしていたカバンの中に財布もスマホもあったが、財布の中にあったはずの一万円札は消えていた。
自宅に帰り、はっきりしない頭で思い出したのはコンビニのATM。「コンビニで金をおろされたかもしれない」と口座を調べてみると、やはり30万円がおろされていた。窃盗か詐欺かわからないが、被害にあったと交番へ行き相談した。都内の繁華街で同様の事案が多発していたため、警察官には「あなたもですかという顔をされたが、話は丁寧に聞いてくれた」という。
コンビニの監視カメラを確認してもらったところ、そこに映っていたのはATMの前に立つ泥酔した彼本人。へべれけになりながらも自ら暗証番号を入力。引き出し金額を押したところで、彼の後ろから白い手がにゅっと伸び、ボタンをポンと押した。「たぶん桁を増やすため0を押したんだろうな」と警察官。金が出てくると、再び白い手が伸びてきてその金をわし掴み。カメラの映像に女の顔は映っておらず、見えたのは白い手だけ。その後、彼は女に引きずられるようにしてコンビニから出て行った。本人がATMを操作したなら事件にはできない、それが警察の見解だった。「飲んで気が大きくなって。ちょっと遊んでみようかな、なんてエッチなことを考えたのが間違いだった」と彼は反省している。
狙いは「1人歩きの陽気な酔っ払い」
暴力団関係者が関わっているクラブのマネージャーに、このような手口について聞くと、女の子たちが狙うのはあくまで酔っ払いで、泥酔している客ではないという。「泥酔してしまうと暗証番号を聞き出せない。千鳥足でフラフラだとコンビニまで歩かせるのが大変だ。酔っている客を店に連れて行き、さらに酒を飲ませ、タイミングを見て「いいことしよう」と金額を告げる。金のない客はATMに行くといい、女の子に逃げられると嫌なので手を組んで歩こうとする。コンビニの監視カメラには、2人仲良く店に入ってくる様子が撮られ、ATMには操作する男の姿が映る」
狙うのは「1人歩きの陽気な酔っ払い。歩いている女や店の前に立つ女の子を見ているようなヤツ。身体の大きなヤツ、やんちゃそうに見えるヤツには声をかけない。暴れられると危ないし、体格がいいと泥酔した時に女の子が支えきれない」。彼の体格も中肉中背、酔っ払うと陽気で気が大きくなるタイプで、被害にあった時は1人だった。
狙うタイプは決まっているようだ。当てはまるかもと思う人は気をつけたほうがいいだろう。