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《ふざけんな!》『ザ・ノンフィクション』クズ芸人のその後、坊主頭で出家も1日で脱走 相方が明かした「鉄拳の真意」と現在

NEWSポストセブン 2025年1月27日 10時59分

 芸人・小堀敏夫は言う。「たった1時間の番組で、俺のことを撮りきれるわけがない」──撮りきれていないのなら、3度目の『ザ・ノンフィクション』出演に期待をしたい。しかし、その後のパートナー探し、滞納した結婚相談所の会費、坊主頭で出家した寺院からの逃亡など、その後は行方がわからぬまま……。

 小堀が落語の世界に入門したのは1992年。三遊亭圓丈(三代目)に弟子入りして、華々しいスタートを切ったはずだった。あれから33年──クズ芸人と揶揄されるようになった男の生き様はドキュメンタリーにまでなった。

 番組視聴者から寄せられた声のように、実は小堀のクズ人生が世の中の多くの人に、勇気と元気を与えているのかも知れない。【全3回の第3回。第1回を読む】

──『ザ・ノンフィクション』で、滞納していた結婚相談所の会費の金策として、魔法使い太郎ちゃん(小堀さんの一番弟子)が浜松市で店長を務める焼肉店でバイトをすることに。意外なほどの軽快な働きぶりでしたが、あのようにバイトをしながら芸人や婚活を続けるという選択肢はないのでしょうか。

「放送では一生懸命働いているように見えたかも知れないけど、あれっていいところだけつまんでるんですよ。あの日、6時間ぐらい働いたんだけど、後半は俺ブチ切れてるから。『てめえ、なんでこんなに忙しいんだよ。いい加減にしろ!』って。途中から仕事をボイコットして、奥の部屋でタバコ吸ってた。バイト代をもらうときも、放送では『ありがとな』なんて素直に受け取ってるけど、実際は『1万円ってなんだよ。5万出せ』とかゴネたりね(笑)」

──せっかく好印象が残った場面なのに、なんでわざわざ“クズ”エピソードをバラしちゃうんですか(笑)

「あいつ(魔法使い太郎ちゃん)は弟子だし、俺にもギリギリのメンツがあるからね。ビシッと言うところは言わないと。ただ、今回は借りた金額が10万円とそこそこ大きかったから、前半の1時間ぐらいはちゃんと働いて恩を返しておかなきゃいけないなと」

──その後、自らラーメン屋を起業すると言い出しますが、その発想はどこからだったんですか。

「太郎はね、そんなに優秀な弟子じゃないんですよ。頭も俺のほうが圧倒的にいい。日本史だったら、100対0ぐらいの差がある。そんなあいつにも焼肉店の店長ができるんだから、俺にできないわけがない。あと、あいつが売上の札束を数えているのを見て、『お金って、こんなに簡単に稼げるのか』って。で、ピンときた」

──簡単に稼いではいないと思いますよ(笑)。ただ、その足で愛知県に向かい「ガッポリ建設」の相方・室田稔さんのところへ行き、土下座までして100万円の資金援助を取り付けた行動力は圧巻でした。その土下座も、ラーメン屋修業の初日に寝坊して、無駄になるわけですが……。

「だから、100万円も結局借りてないんですよ」

──100万円はともかく、今度は出家宣言。ラーメン屋の件といい、発想が唐突過ぎます。さすがに室田さんも激怒して「ふざけんな!」「ナメるな人生を」と、鉄拳を食らいましたね。

「俺としては、出家も唐突な発想じゃないんだよ。昔から戦国武将や日本史が好きで、司馬遼太郎も全部読んだ。なかでも、上杉謙信が特に好きでね。天下を取れなかった謙信を、ちょっと自分に置き換えてるところもある。謙信もそうだし、名だたる武将はみんな出家してる。だから、俺もいつかは出家しようと前から思ってた。『どうせネタだろう』なんて言ってるネット民がたくさんいたけど、ネタで出家なんかしないから」

──謙信や出家への真っ直ぐな思いは分かりました。ただ、頭を丸めて室田さんにツテを紹介してもらったんですから、せめて3日間の体験出家はやり遂げて欲しかったです。

「1日目の10時に寺院に入って、翌日の11時に逃げちゃったから、1泊2日だね。俺にしたら、1泊しただけでも大したもんだよ。初日の30分で逃げるのも、俺の性格だと普通にあるから。1泊分の徳はちゃんと積めたと思う。ただまぁ、バチが当たるのは怖いから、手を合わせながら脱走したよ」

──ラーメン屋を寝坊で遅刻、相方に殴られて丸坊主、出家するも1泊で脱走。怒涛の“クズ”エピソード連発で、放送中からネット上では炎上状態。寺院への尻拭いも、室田さんにやらせたそうですね。

「尻拭いをさせたと言うか、LINEで『お寺の師匠には丁重に謝っといてくれ』と。あいつの怒りもしばらくすると浄化されるだろうから、近いうちに謝りに行ってくるよ。昔からこういうことは多かった。ワハハ(本舗)の芝居の稽古を競艇ですっぽかしたときも、室田が代わりに謝って稽古の代役をしてくれた。

 室田に殴られたのも初めてじゃないんだよ。昔、地方の番組をパチンコで飛ばしたことがあって、『別にいいだろ、田舎の番組なんか誰も見てないだろ』って言ったら、やっぱり室田にぶん殴られた。あいつは体格がいいし、俺は口で戦うタイプだから、ケンカをしても俺が一方的にやられるだけだよね(笑)」

──そんな室田さんもワハハ本舗主宰の喰始さんも、何度も何度も小堀さんに激怒しながら、最後は許してくれる。これも小堀さんの人徳…ということにしておきます。

「今は亡き師匠の三遊亭圓丈からも、『柳家小三治さん(十代目)のとこだったら、お前なんか半日ももたない。11時でクビになってる』ってよく言われました。問題ばっか起こす、本当にどうしようもない奴なんですよ、俺は。それを許し続けてくれた師匠は、本当にすごい。

 喰さんも人格者だから結局許してくれるんだけど、俺がつい失言しちゃう。決別した前回の放送後に電話して『放送を見たら、俺も少しだけ悪かったと思いました』なんて。で、『少しだけってどういうことだ。俺がいっぱい悪いみたいだろ、バカ野郎!』ってまた怒られる。今回の『ザ・ノンフィクション』も喜んでくれてるはず。おもしろいってことに貪欲で、俺にそれを教えてくれた人だから」

──落語界の第2の師匠とも言える春風亭小朝さんも、小堀さんのよき理解者だそうですが。

「理解者というか、単に変わった動物を見てるような感じだと思いますよ。俺みたいな奴が寄席の楽屋に顔を出すと、『あんな奴に近づくな』と露骨に嫌な顔をする人もいる。だけど、小朝師匠は一切そんなところがなく、俺が振るバカ話にもちゃんと付き合ってくれる。例のごとく、適当な嘘を並べてると『君が言うことは全部嘘だから、ひとつも信用しません』なんて。本当に懐が深い。ただ、今年の正月にお年玉をもらったとき、つい『すいません、社長』って言っちゃったのはマズかったな(笑)。ついギャラ飲みの癖が出ちゃうんだよ。喰さんのことも『社長』って呼んで怒られた。親父にも『いやいや、社長ねえ……』なんて話しかけて、『バカ野郎、社長じゃねえ。俺はお前の親父だ!!』って怒鳴られたっけ(笑)」

──まさに今バブルがきているギャラ飲みの展望は?

「どうせなら、すげえビッグな人に呼ばれたい。石破総理とか、ビル・ゲイツとか呼んでくれないかな。焼肉のタレのCMでおなじみだった月の家圓鏡(八代目橘家圓蔵)師匠も、あれだけ売れてるのに超大企業の会長から声がかかると、顔に落書きをさせたりして宴会を盛り上げてた。俺もそれぐらいになりたいよね」

 クズを極めようとする相方を長年、どう見てきたのか。芸人活動をしながら、愛知県の「稲沢CATV」で映像制作に携わる室田さんが相方への本心を打ち明けた。

「基本的に芸人だから相方が笑いを取りに行こうとするのはわかるし、理解はしているんですよ。番組で殴ったのは、『お前、仲間にそういうことはするなよ!』という行き過ぎた不義理への怒りでした。相方はなんでも長続きがしないし、『俺は売れても週2回しか働きたくない』と言っていたほどの怠け者。先のことは考えず、金持ちになりたいタイプでもない。目先のお金をなんとかしたいだけで、考えなしに動く人間。

 迷惑ばかり掛けて腹が立つし、人としてはクズだけど、憎めない。番組でも言いましたけど、『小堀敏夫』のファンというのは本当で、そのおもしろさがどこかで伝わるといいなと思っていたら、『ザ・ノンフィクション』が彼の人間性を映し出してくれた。クズだろうがなんだろうが、反論があって叩かれようが、それが芸人の生き様だと思っています」

 師匠の三遊亭圓丈も、まさか弟子がこれほど世間を“炎上”させるとは、夢にも思わなかったに違いない。

(了。第1回を読む)

撮影/岩松喜平

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