1980~1990年代のアイドル黄金期のグラビアは日本社会に大きな活力を与えた──。日本初のグラビア写真集ガイド『一度は見たい!アイドル&グラビア名作写真集ガイド』を1月24日に上梓するグラビア評論家の徳重龍徳氏が、1980~1990年代のグラビア写真集の名作をガイドする。
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令和の現在、アイドルはもはや誰でもなれる職業となったが、「アイドル黄金期」と呼ばれた1980年代は選ばれし者だけがなれる特別な職業だった。被写体のレベルは高く、中森明菜や小泉今日子といったトップアイドルも水着になった。後の大物女優たちが映画や写真集で脱ぐことも多く、裸になることへの抵抗感は現在のそれとは別だった。
当時はカメラマンの存在も今よりも大きかった。その代表格が野村誠一だ。年収1億円を超えた売れっ子は、今も続く「ミスマガジン」の創設に携わり、グラビアを通し斉藤由貴、南野陽子をスターにした。アイドルに触れられるような距離感の写真に定評のある野村は「グラビアの仕事は本気でカメラマンが被写体に恋をしなきゃ、いい表情は撮れない」と熱く語る。
1990年代には空前のヘアヌードブームが到来する。累計165万部を売り上げた宮沢りえの『Santa Fe』は社会現象となり、川島なお美や島田陽子の作品も50万部を超える大ヒット作に。出せば写真集が売れる中、名だたるタレントが次々にアンダーヘアを晒していった。
グラビアアイドルという職業が確立したのもこの頃だ。歌を主体とするアイドルが下火になる一方、イエローキャブを中心に、巨乳と水着が売りのグラドルが雑誌だけでなくテレビでも活躍した。
この時代のグラビアは、日本社会に大きな活力を与えていたのだ。
日本社会に大きな活力を与えてきた写真集が大集結
■南野陽子『陽子をひとりじめ……』(1986年/講談社)撮影/野村誠一
43万部を売り上げた大ヒット作。デビュー直後で無邪気さが漂う圧倒的な美少女ぶりに息をのむ。現在のアイドルも圧倒する、時代を超えた輝きだ。アイドル写真集史に残る傑作。
■手塚さとみ『少女だった 手塚さとみ写真集』(1981年/小学館)撮影/沢渡朔
「10代最後の記念に何か残したかった」という手塚が19歳時に出したヌード写真集。沢渡朔がカメラマンを務め、少女から大人へと成長する過渡期の美が収められている。ヌードになった際の日焼け跡も若さを強調させる。
■大西結花『FLORE』(1995年/ワニブックス)撮影/渡辺達生
『スケバン刑事III』でブレイクした大西のヘアヌード作品。冒頭から最後まで惜しげもなく大胆な姿を披露してくれる。内容もアイドル時代を彷彿とさせる爽やかなものからベッドでの官能的なヘア露出までと多彩。
■由美かおる『妖精の舞踏──由美かおるRE 写真集』(1998年/竹書房)撮影/池谷朗
バレエで鍛え上げた肢体はまさに芸術で、乳房を露わにしても品格を保つのは流石。「水戸黄門」での入浴場面が有名で、映画でもヌードとなっている由美だが、実はへそだけは決して見せない。本作でも絶妙に隠しており見どころ。
■島田陽子『KirRoyal』(1992年/竹書房)撮影/遠藤正
1980年版の映画『将軍 SHOGUN』でヒロインを演じた島田陽子のヘアヌード作。資金繰りに困った事務所に頼みこまれて撮った作品だが「さあ私の裸を見てみなさい」という強い目線で読者を射抜き、女優としての格を感じさせる。
■池上季実子『ささやいて愛 淋しくて悲しくて幸せです』(1980年/ワニブックス)撮影/玉川清
気品高く官能的──相反する要素を兼ね備える池上の魅力は当時21歳だった本作でも垣間見える。ビキニやワンピース水着で抜群のプロポーションを披露。今では常識のアンダーショーツをはいておらず体のラインもクッキリ。
■ひし美ゆり子『ひし美ゆり子写真集 All of Anne:2021』(2021年/復刊ドットコム)
ひし美が演じた「ウルトラセブン」アンヌ隊員としての姿のみで構成された写真集で、劇中場面からオフショットまで収録。少年たちを熱くさせたボディラインを際立たせるピチピチのウルトラ警備隊の制服が素晴らしい。
■小島可奈子『39℃』(1998年/メディア・クライス)撮影/渡辺達生
小島は90年代後半の人気グラドル。オールヌードはないが、こたつからあられもなくのぞく尻や布ごしに見える肌が裸以上にセクシーでこれぞグラビアの醍醐味。特に雪原で雪のみで乳首や陰部を隠したカットの遊び心が楽しい。
■川島なお美『WOMAN』(1993年/ワニブックス)撮影/渡辺達生
川島が32歳の時に出したヘアヌード作は年齢以上の妖艶さが漂う。実家で撮られた清楚な日常写真と一糸纏わぬ姿が交互に入れ替わり、女の二面性を写し出した中盤は必見。本作のヒットで川島は大人の女優へと脱皮した。
■大場久美子『大場久美子写真集 映画ファン特別編集 臨時増刊号』(1980年/愛宕書房)撮影/池谷朗
大場のアイドルとしての全盛期に撮られた写真集。水着姿もたっぷりで、華奢な体には今のアイドルにはない奥ゆかしさも感じる。手ブラからこぼれた白いバストと日焼けした肌のコントラストが艶かしく、後のヌード作品より刺激的。
■斉藤慶子『ひとり胸さわぎ この愛つかまえて』(1983年/ワニブックス)
熊本大学出身の才媛は在学中に「JAL沖縄キャンペーンガール」に選ばれグラビアデビュー。少し垢抜けない表情とお腹周りの油断が古き良きグラビアを感じさせる。還暦を迎えた2021年には30年ぶりとなるビキニも披露。
【プロフィール】
徳重龍徳(とくしげ・たつのり)/ライター、グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆。1980年代から現在までに発売された写真集108タイトルを一挙紹介する、徳重氏と写真集ガイド制作委員会による著書『一度は見たい!アイドル&グラビア名作写真集ガイド』(玄光社)は1月24日発売。
※週刊ポスト2025年1月31日号