Infoseek 楽天

ポスティングでドジャース移籍が決まった佐々木朗希の“強行決断”と“変質”への強い違和感 高校時代は「自己主張する子ではなかった」

NEWSポストセブン 2025年1月20日 16時15分

 千葉ロッテからポスティングによるメジャー移籍を目指してきた佐々木朗希の移籍先がロサンゼルス・ドジャースに決まった。マイナー契約とはいえ契約金は650万ドル(10億1500万円)にのぼり、大谷翔平や山本由伸という日本人の先輩がいることも決断を後押ししたのだろう。

 大船渡高校時代から令和の怪物と呼ばれた佐々木は、いつからメジャーの舞台を夢見たのだろうか。筆者をはじめ多くの報道陣が動向を追った高校時代には、一度も口にしたことがなかったはずだ。同じく岩手県の沿岸部で生まれ育ち、佐々木とバッテリーを組んだ捕手の及川惠介も「聞いたことがない」と話していた。

 しかし、貴重な証言をするのは別の同級生だ。

「大船渡高校時代から、将来はアメリカで勝負したいと話していましたし、入団交渉の席でも『いずれはアメリカに』という話はしていたようです。その頃から漠然と5年後というような考えでいた。だから僕自身も、(5年目のオフのポスティング移籍に関しては)とうとうこの時が来たかという感じでした」

 5シーズンという歳月は、一度は高校から渡米を目指していた大谷が日本のプロ野球で過ごし、同じようにマイナー契約で海を渡るまでの期間を目安にしたのかもしれない。千葉ロッテ入団時から2025年からメジャーに渡る構想を佐々木は思い描いていたとも取れる証言だ。

 佐々木はポスティング移籍を表明した昨年11月9日から移籍先決定までの約2か月の間、故郷の岩手県大船渡市と米国を往復しながら、20球団以上ともいわれたメジャー球団と面談を重ねて来た。同級生は言う。

「入団以来、オフにここまで長期的に大船渡にいた年はありません。アメリカに行く前に、原点となる地元で自主トレをしたかったんじゃないでしょうか」

 大船渡では4歳下の弟である佐々木怜希(中央大)や自身のマネージャー的役割を担う高校の同級生を練習パートナーにして自主トレに励み、プロアマ規定に抵触しないように気を遣いながら12月29日から1月5日までは母校で練習に励んだ。12月30日には、「みんなでサッカーしよう」と佐々木が号令をかけ、同級生や後輩、中学時代の仲間が母校に集まったという。

大船渡高校の在校生に語った「高校時代からアメリカに行くことを考えていた」

 また、大船渡に帰省中の11月下旬、佐々木は母校の在校生を前に、こんな発言もしていたという。

「僕は中学時代の仲間と甲子園に行くために、大船渡高校に進学しました。高校時代はとにかく練習をしました。全体練習を終えて、先生が帰ったあとも、こっそりグラウンドに戻って練習していました。あまり大きな声では言えないですし、今ではそんなことも許されないと思いますが。そして、僕は高校時代からメジャーに対する憧れがありましたし、将来はアメリカに行くことを当時から考えていました」

 しかし、大船渡高校時代から佐々木を追ってきた筆者からしたら、ポスティング移籍を表明した経緯には強い違和感を覚える。

 大船渡高校時代、甲子園出場のかかった2019年夏の岩手大会決勝で、当時の監督であった國保陽平氏がマウンドに上げなかった時も、佐々木は國保監督に登板を直訴することなく、試合中はずっとベンチに座って戦況を見守っていたような選手だった。高校3年生ながら163キロを出した佐々木に対し、「あまり自己主張する子ではありません」と語ったのは、佐々木も参加した2019年の高校日本代表を率いた永田裕治監督(当時)だが、その点に関して筆者は永田氏に“激しく同意”であった。

 だが、一昨年のオフには早期のポスティング移籍を千葉ロッテに訴えて契約更改が越年し、日本プロ野球選手会も脱退していたことが発覚。その姿は高校時代の印象とは対照的で、“わがまま怪物”といったイメージが定着してしまった。千葉ロッテでは慎重な起用法のもとで大切に育てられた一方、在籍5年間で1シーズンをフルでマウンドに上がり続けた年がないことや、ポスティングに伴うわずか162万5000ドル(約2億5390万円)ほどの譲渡金だけで大切に育てられた千葉ロッテを離れることも相まって、素直に佐々木の挑戦を応援できないという声があるのも無理はないだろう。

 口数が少なく、自己主張をしない純朴な野球人の姿を知っているからこそ、一昨年頃からなりふり構わずメジャー挑戦を直訴し、日本プロ野球選手会を脱退してまでポスティング移籍を強行することに私は強い違和感を覚えてしまう。

 これが本当に佐々木朗希自身が望んだ道なのか、と。

■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター、『甲子園と令和の怪物』著者)

この記事の関連ニュース