1月19日より、イスラエルとイスラム組織ハマスが6週間の停戦期間に入った。停戦の合意に基づき、イスラエル側は刑務所などに収監していたパレスチナ人90人を釈放し、ハマス側は女性の人質3人を解放。停戦の第1段階として、ハマスはおよそ100人の人質のうち、計33人を解放する予定となっている。
イスラエル当局によると、解放された人質3人の健康状態は良好だという。晴れて自由を取り戻した3人は、病院で治療を受けた後、実に471日ぶりに家族と再会した。彼女たちが家族と抱きしめ合う感動的なシーンに、世界中からSNSで〈本当によかった〉〈残りの人生が健康で平和でありますように〉などと祝福の声が寄せられている。
今回解放された人質のひとり、イギリスとイスラエルの二重国籍を持つエミリー・ダマリさん(28)は、2本の指が欠損してしまった。ハマスの戦闘員に攻撃されて、中指と薬指を失ったという。昨年12月、当時エミリーさんの解放を願っていた母親のマンディさんは、「BBC」の取材に対し、娘が拉致された日についてこう語っている。
「ハマスによる大規模な越境攻撃が行われた2023年10月7日、エミリーさんはイスラエル南部の自宅から引きずり出され、拉致されました。そのときに撃たれて手と足を負傷したといいます。また、愛犬も撃たれて死んだことを明かしています。
『BBC』の取材でマンディさんは、『毎日、毎秒心配している』『もし娘が生きていても、十分な食べ物を与えられず、体を洗うことも水を飲むこともできず、病気になっている可能性がある』と吐露していました」(国際ジャーナリスト、以下同)
娘を救出するべく、マンディさんはイギリス政府に働きかけるなどの運動を続けてきた。昨年10月7日にロンドンで開かれた追悼式典にも登壇し、「毎日が地獄で、エミリーがどんな思いをしているのかわからない。戻ってきた人質から、彼ら(人質)が飢え、性的虐待を受け、拷問を受けたことは知っている」と訴えていた。
これまで解放された元人質たちは、メディアを通して監禁生活の劣悪な環境について証言してきた。
「2023年11月下旬に解放された女性は、アメリカの『AP通信』の取材に対し、満足に食事を与えられず、体重が11キロ減ったことを明かしています。部屋の流しやゴミ箱で用を足したこともあったそうです。
また、イスラエル人で弁護士のアミット・スーサナさんは、ハマスの元人質として初めて性被害を公表しました。ある日の早朝、スーサナさんがシャワーを浴びていると、いつのまにか銃を持った男がバスルームに立っていたといいます。必死に抵抗したものの、子供部屋のベッドに連れて行かれて、そこで性被害にあったことを告白しています」
ハマスの性暴力問題が国連でも報告される一方、イスラエル側にも国際的な批判が集まっている。イスラエル軍は民間人を巻き込んだ報復攻撃を繰り返しており、ハマス運営のガザの保健当局は、パレスチナ人の死者数は4万6000人以上にのぼるとしている。
イスラエルとハマスはこれから段階を踏んだ協議を経て、戦闘の恒久的な終結を目指すという。そのゴールが達成されること、そして、双方の攻撃・加害行為について適切な調査がなされることを祈る。