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中居正広とフジテレビから「火に油を注がないための心得」を学ぶ

NEWSポストセブン 2025年1月25日 16時15分

 もはや不祥事の域を越えた大問題。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

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 タレントの中居正広をめぐる一連の騒動は、日に日に大ごとに発展しています。これを書いている1月23日昼に、中居が芸能界を引退することを発表しました。トラブルに深く関係しているフジテレビに対しても、雪崩を打つ勢いでスポンサー離れが進んでいます。

『女性セブン』で女性との「重大トラブル」がスクープされたのは、2024年12月19日のこと。わずか1ヵ月ちょっとのあいだに、誰も想像できなかった事態になりました。23日午後にはフジテレビで、臨時の取締役会と全社員に向けた説明会が行なわれるとか。その中身は現時点ではわかりませんが、まだまだ混乱は続きそうです。

 どんなトラブルがあったかについては、当事者同士の問題であり、外野が詮索するのは控えたいところ。中居正広やフジテレビの未来を心配する立場でもないし、ましてここぞとばかりに威勢のいい言葉をぶつけるのは、あまりにも残念すぎる行為です。

 話は変わって一般論ですが、人は誰しも失敗なしでは生きられません。仕事やプライベートで失態を犯すこともあれば、配慮の足りない発言で誰かを傷つけることもあります。そんなときに気を付けたいのが、対処を間違えて火に油を注がないこと。小さなミスでも、うっかり火に油を注ぐと取り返しのつかないことになりかねません。

「自分に都合のいい解釈や展望」を自分で言ってしまうのは危険

 一連の騒動は、私たちに「火に油を注ぐ」とはどういうことか、それがいかに恐ろしい事態を招くかをまざまざと見せつけてくれています。備えあれば患いなし。渦中の人たちの“失敗”から「火に油を注がないための心得」を学び取ってみましょう。

 最初に火に油を注いだのは、1月9日に中居が自分の事務所のHP上に発表した「お詫び」と題した声明でした。そこに〈なお、示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました〉という一文があったことで、多くの批判を受けることになります。

 いささか不自然な文面と口調であり、どういう意図でわざわざ入れたのか、いろんな人がいろんな解釈を試みました。今となっては、その真相はわかりません。はっきりしているのは、この一文には火の勢いを一気に大きくするパワーがあったということ。

 おそらく「聞かれてもいないのに、自分に都合のいい解釈や展望を言ってしまった」という点が、強力な「油」になったと考えられます。言ってみれば、エッチなお店に行ったことが妻にバレた夫が「お店の会員証は捨てたし、きちんと謝ってお詫びに高いバッグも買ってあげたから、今後の夫婦関係も支障なく続けられるよね」と言っているようなもの。

 これではどう考えても、妻の怒りを増幅させてしまうでしょう。「支障なく続けられる」かどうかを決めるのは、怒られている夫ではなく怒っている妻です。夫としては反省している様子をわかりやすく示して、妻が「そろそろ許してやるか」という気持ちになってくれるのを祈るしかありません。夫は一刻も早く「もう大丈夫だよね」と確認したいかもしれませんが、その誘惑に負けてしまうと見事に火に油を注いでしまいます。

罪を軽く見せるための悪あがきやウソ臭い言い訳は逆効果

 まだまだ火の勢いが衰えない中で、さらに大量の油を注いでしまったのが、1月17日に行なわれたフジテレビの港浩一社長らの記者会見。テレビカメラの撮影を禁じたりテレビ局の記者は質問が許されなかったりなど、報道機関とは思えない閉鎖的なやり方で行なわれました。さらに「被害女性のプライバシー保護」などを理由に「回答を差し控える」という逃げのコメントを連発します。

 それでもやり取りの中で、フジテレビ側が2023年6月から被害状況を把握し、中居側からも報告を受けていたことが判明。スポンサー側にはいっさい知らせず、何食わぬ顔で中居のレギュラー番組を放送していたこともバレてしまいました。この会見に疑問を抱いたスポンサーが、我も我もと自社のCMをACジャパンのものに差し替えます。

 港社長の会見が「油」になったのは、なるべく自分たちの責任を軽く見せたいという悪あがきと、いちおう記者会見は開くけど都合の悪い話はしたくないという姑息な魂胆が見え見えだったから。言ってみれば部下にパワハラを告発されて、会社から事情を聴取されている場面で、話が核心に触れると「部下の名誉に関わることなので」と説明を拒否したり、自分に質問できる相手を勝手に選別したりしているようなものです。

 22日に行なわれた関西テレビの大多亮社長(トラブルが起きた当時はフジテレビ専務)の会見も、違和感だらけでした。レギュラー番組の放送を継続したことについて、あくまでも女性を守るための配慮で「中居氏のほうを守ろうとか、そういう意識はなかったです」と語ります。これも真相はともかく、後付けの自己弁護にしか聞こえません。

 パワハラを告発された場面に当てはめると、「部下の成長のために怒鳴った」と言い訳したり、部下が心を病んで休職したとしても「部下のプライバシーを守るために原因を調べることはしなかった」と言っているようなものです。大多社長はフジテレビの立場を逃げ隠れせずにきっちり説明して、「俺はちゃんと報告したんだ」と言いたかったのかもしれませんが、火の勢いを維持する効果しかありませんでした。

 火に油を注がないためには、どうやら「自分に都合のいい解釈や展望を自分で口にしない」「罪を小さく見せようとしない」「ウソ臭く聞こえる言い訳をしない」といったことが大切。逆に、何かしでかしたときは「迅速に、素直に、真摯に謝る」「謙虚な態度を保つ」ということを心がければ、結果的に早めに鎮火するでしょう。なかなか勇気がいることだし、そもそもこれらの心得を実践するチャンスがないほうがいいんですけど。

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