目の前に現れたのは、黒いタートルネックを着た黒髪の女性。張りのある声でハキハキと話す様子からは、“会見”での「夫を支える大人しそうな妻」といったイメージとは違い、快活な印象を受けた。彼女の名前は永野紗代さん(38)。夫である、永野耕平岸和田市長(46)の“不倫・性加害疑惑会見”に同席した女性だ──。【前後編の前編】
関西政界では混乱が続いている。兵庫県では、斎藤元彦知事のパワハラ疑惑に端を発し、SNSなどを中心に論戦が激化。1月18日には、県議会調査特別委員会(百条委)の委員だった竹内英明前県議(50)が亡くなり、生前、誹謗中傷に思い悩んでいたと報道された。
大阪府の岸和田市でも政界関係者に対するSNS上での“口撃”が飛び交っている。渦中の人が永野市長だ。
「昨年11月、岸和田市の永野市長は、政治活動で関係のあったA子さんから『性的関係を強要された』などと訴えられ、解決金500万円を支払い、和解していたことが発覚。所属していた大阪維新の会は永野市長を離党勧告処分とし、岸和田市議会は『説明責任を果たしていない』と不信任決議を提出しました。
辞職か議会解散という選択に迫られた永野市長は、不倫自体は認めて謝罪したものの、『性加害や女性の権利の侵害はない』と主張。『不信任に大義はない』として議会を解散しました」(在阪社会部記者)
永野市長とA子さんの主張は食い違っており、A子さんが代理人弁護士を通したコメントには強い処罰感情がにじんでいる。
「泣きながら拒絶する私を、立場(地位)や権力を乱用し、恐怖でおさえつけ、人格否定などの言葉の暴力で精神的に支配し、逃げられないようにすることが同意なのでしょうか(中略)被告によるあまりにも身勝手で愚かな行為によって傷つけられた人は、私1人ではありません」
そんな中で、永野市長が年末に行った会見に、妻・紗代さん(38)が同席したことが話題になった。紗代さんが夫の不倫について多くを語ることはなかったが、『加害はなかったのに、あるように報道されてつらい』など発言。“不倫した夫”を擁護する妻に対して、SNSでは〈かわいそう〉〈公開モラハラではないか〉という同情や、〈マインドコントロールをされているのでは〉といった疑問の声があがった。
そして1月21日、市長は自らのXにこのように投稿した。
〈岸和田市議会議員選挙に妻の永野紗代が挑戦します。〉
1月26日に告示される岸和田市議会議員選挙に、紗代さんが出馬するというのだ。いったいどういうことなのか。本人にすべての疑問をぶつけてみた。
「永野市長の妻」が思っていること
──お忙しい中、取材に応じていただきありがとうございます。紗代さんの市議選の出馬を市長がSNSに投稿しましたが、批判的な意見も多くあります。市長は〈生きていくのが難しい〉などと相当に堪えた様子の投稿をしています。今、どのような状況なのでしょうか。
「SNSはあまり見ないようにしているので、ひとつひとつの投稿はわかりません。ただ、市役所前や駅前で『性暴力許さない』『レイプ』などと書かれたプラカードを持って活動されている方がいます。これは子供の目にもつくし止めてほしい。事実ではありませんから」
──被害女性A子さんの主張と、市長の主張には大きな隔たりがあります。A子さんは、「精神的に支配された上で同意がなかった」と言う一方、市長は「性暴力やレイプではなく、同意のある不倫行為だった」と主張しています。
「はい。私は、当事者のようなものなので双方がどのようなことを訴えているかは把握しています。関係者とのLINEのやりとりなど、物証になるようなものも見ています。その上で、先方を批判したくはないのですが、間違いなくA子さんは事実ではないことも言っている。私は夫が言っていることが正しいと信じています。なので、昨年末の会見にも同席して、説明すべきだと思いました」
──不倫した夫の会見に同席したことで、「市長にマインドコントロールされているのではないか」とか「モラハラだ」といった同情の声もあったかと思います。
「まったくそんなことはありません。主人に一緒に会見に出てくれと言われたわけでもなく、自然と自分も出なきゃいけないなという流れになりました。ものすごく緊張しましたが……」
──ご主人が主張するように男女の行為はあったが「性暴力」「レイプ」ではないと考えているのでしょうか。
「はい。ましてやA子さんが主張している4Pなどあるはずがありません。あったら、どこかの防犯カメラに一緒に居るところが映っているなど証拠があるはず。そのようなものはないんです」
──一般的に不同意性交は密室で行われることが多く、決定的な証拠が残りにくい面もあります。そもそも市長は不倫自体はしていたわけですが、そのあたりはどのように考えていますか。
「主人は会見で『許してもらってると思ってません』と言っていましたね。この件で主人は私にものすごく謝っています。私自身こんなことをされて……というのは感じました。ただ、相手の主張と主人の話を聞くなかで、主人が言っていることが正しいとわかり、応援しようと思うようになった。この話は家庭内の問題で、夫婦間ですでに解決していますので、これ以上は差し控えさせてください」
──では夫である市長を応援したいと考えているということでしょうか。
「家族の絆はありますからね。A子さんを悪く言いたくはないのですが、一度和解したことをなぜこのように再燃させるのか、という思いはあります。なんのために金銭も払ったのでしょうか」
──解決金としての500万円は高額です。もう払ったのですか。
「はい。ただこの500万円については他でも説明していますが、A子さんや交際相手の府議の方が別の負債などもあることを鑑みて出した結論です。
実は府議は私たち夫婦にとって息子のような存在なんです。府議に私は約250万円を貸しているし、府議はA子さんと交際を始めたときには不倫関係でして、今は離婚していますが、元妻の方にも慰謝料などを払う必要がでてくるかもしれません。そういった事情を踏まえて、彼らがしっかりと次の人生を歩めるように渡したお金です。決して、主人が性暴力をしてしまったから払ったわけではありません」
紗代さんはあくまで夫を擁護し続けた。彼女と永野市長はどんな関係なのか。そこに“マインドコントロール”はないのか。これまでの経歴や市議選出馬への思い、永野市長との夫婦関係についても話を聞いた。
(後編に続く)