1月26日に告示される大阪府・岸和田市議会議員選挙に、永野耕平市長(46)の妻、紗代さん(38)が出馬する。
紗代さんといえば、昨年末に永野市長が開いた“不倫・性加害疑惑会見”に同席した姿を記憶している人も多いだろう。“不倫した夫”を擁護する姿に、〈公開モラハラだ〉〈マインドコントロールされているのではないか〉といった意見が飛び交った。
永野市長は政治活動で関係のあったA子さんから不同意性交で訴えられ、500万円の解決金を支払い示談。しかしA子さんの処罰感情は強く、いまだ問題はくすぶっている。A子さんの、精神的な支配関係があるなかで同意のない性行為を受けたといった主張に対し、市長は反論。A子さんとの不倫は認めたが、あくまで同意の上だったと主張している。
前編では、紗代さんが永野市長の会見に同席した理由について「家族の絆はあります」としつつ、その複雑な胸中を明かしてくれた。そんな紗代さんはなぜ、市議会選挙への出馬を決意したのか。その思いを聞いた。【前後編の後編。前編から読む】
──なぜ市議選出馬を決断されたのでしょうか。
「もともと2年前の選挙にも出馬しようと思っていたので、興味はあったんです。私には5人の子供がいます。今の議会には、子育てをしている現役の母親はいないので、だからこそ私にも出来ることはあるのかなと考えたんです」
──ご主人の件は関係ないということですか。
「はい、関係ありません。たとえば子供を産んだ母親へのケア体制について改善ができればと考えています。産後、2週間健診というものがあるのですが子供の状態を確認するとともに、母親の産後うつの早期発見や防止にもつながるんです。大切な健診なので近隣自治体には行政の補助があるのですが、岸和田市にはないんです。そういったことを改善していけたらいいなと考えています。
私自身、1人目と2人目のときには、相談する相手もあまりいなくて本当に大変で、辛い時期がありました。実際に自分も子育て中の母親だからこそ、同じ境遇の市民の方のためにできることというのはあると思うんです」
──議会には首長率いる執行部を監視する役目もあります。市長が夫だとやりにくい面もあるのではないでしょうか。
「夫婦とはいえ、私と主人は別人格です。主人がやることでもおかしいものがあれば、それはもちろん反論しますよ」
──昨年末、市長の不信任決議を可決した当時の議会についてはどのように思いますか。
「主人も言っていますが大義はなかったかと思います。不信任決議の大きな理由としては『説明責任を果たしていない』ということでしたが、A子さんのこれからの生活もあるなかで、彼女に大きな迷惑をかけない範囲で言えることはしっかりと言ったと思っています。そのほかにも不信任の理由はありましたが、どれも見当違いで、“辞めさせたいありき”の不信任決議だと感じました」
夫としての「永野市長」
──夫婦で同じ政治の道に進もうとしています。これまでの市長として永野氏をどのように感じていますか。また、ご家庭ではどのような夫なのでしょうか。
「主人は判断がものすごく速いそうです。役所の方が説明すると、すぐに『じゃあこれはこうして』『あれはああしよう』という感じで物事を決めていくと聞いています。そういった部分は、市長に向いていると考えています。
家庭では、実はかなり家事をしてくれます。食事作りや洗濯も。私が母親なのにあまりやっていないじゃないか、と言われてしまうでしょうか……。ただ、お互いのことを助け合いながら生きているので、5人の子供がいても市議会選挙に立候補できるのだと思います」
──市長は多忙そうですが……。
「あの人は仕事で会食によく行きますが、お酒を飲めないので、無駄に夜出歩かないということもあるのかもしれません。子育てでも夫婦でアメとムチを分担して、うまく協力できていると思います。私が『テレビは宿題が終わってから!』と叱っていると、主人は『あと10分だけ見てから、宿題やるんだよね?』といった感じで子供にフォローをいれています。主人がアメなんです」
──市長とご結婚するまではどのような人生を歩まれたのですか。紗代さんの学生時代と、これまでの経歴について教えて下さい。
「大阪府内の北摂出身です。陸上やバレーボールなどずっと運動をしてきて、小さい頃は活発だったと思います。進学した関西大学では英語の教員免許を取ろうと思い、教育実習にいきました。そこで生徒達を見ていたとき、高校の頃にテレビで見たドキュメンタリー番組を思い出したんです。
当時、番組をみて『児童養護施設で働きたい』という夢を描いたことがあったなって。そこで大学で求人票を調べたら、ある施設が見つかりまして。主人のおじいさんが戦後から運営していた児童養護施設です。新卒で入社して、親と離れて暮らす子供たちの面倒を見ていました」
──そこで永野市長と出会ったわけですね。
「はい、そうですね。これまで5人の子供を産んで育てていますので、育休・産休を取りながら、途中からは会計など事務方にまわっていました」
──今も新卒入社した施設の職員なのですか。
「現在は、その施設の事業を発展させた一般社団法人で事務局を務めています。簡単に言うと、寄附を募って近畿地方の児童養護施設などで生活する高校3年生を対象に、大学受験時に7万円を支援するという活動をしています。7万円というのは大学2校分の受験料をイメージしています。
私自身、多くのお子さんと接する中で、大人になって『大学に行きたかった』という声をたくさん聞いてきました。もしお金に余裕があったら、少し難しい大学にチャレンジしたい、という方も多い。養護施設出身者の大学進学率はものすごく低いので、それを少しでも改善できたら良いと思って、取り組んでいます。生活保護世帯の家庭よりも、進学率は低いんです」
──5人の子育てに加えて、市議会議員に養護施設の改善とやりたいことがたくさんあってパワフルですね。
「主人のことで、岸和田市がとても混乱してしまっていることは誠に申し訳ないと思います。一方で、SNSを中心に事実ではないことが事実であるかのように広がっていくことが怖いです。主人も苦しいかも知れませんが、私自身は私自身で選挙にむけて頑張るつもりです」
──最後に、もし市議に当選したら、市議会は市長に再び不信任決議をすることが予想されます。そこでは反対するのでしょうか。
「同じ事をある新聞社からの調査票で聞かれました。反対、と回答しましたが、内容によってだと思っています。前回と同じ内容であれば反対です」
紗代さんは年末の市長の会見に同席した大人しそうな印象とは異なり、ハキハキとした受け答えが印象的だった。
(了。前編から読む)