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《中居正広引退で広がる動揺》「ヅラの皆さん」と呼びかけた発表文でファンを刺激した一文

NEWSポストセブン 2025年1月27日 7時15分

 中居正広が引退を公表してから、インターネット、とくにSNSでは様々な思いが飛び交っている。特に「中居ヅラ」と言われるファンの間では動揺が広がっている。臨床心理士の岡村美奈さんが、大切な対象を失うファン心理を分析する。

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 タレントの中居正広さんが自身のファンクラブサイトで突然、発表した芸能界引退。それを見たファンの心境はいかばかりだっただろう。女性トラブルを起こしていたことが発覚し、それを事実と認めて謝罪したお詫び文以上にショックだったかもしれない。

 だが起こした問題は女性との性的トラブルだったとされる。世間の目は厳しく、芸能活動の継続は不可能。例え活動を休止したとしても復帰は難しいのが現実。引退するかもしれないと思っていたファンもいただろう。

“少しでも早くにご報告”と題した文書がファンクラブサイトに掲載されたのは1月23日。「私、中居正広は本日をもって芸能活動を引退します」という文章から始まった報告には、この日に発表した理由が、これまで携わってきたテレビ各局やラジオ、スポンサーなどとの打ちきり・降板・中止。契約解除等に関する会談がすべて終了したためと書かれていた。ネットやメディアでは、責任感が強いといわれる中居さんだけに、関係各所との話し合いが終わった時点で発表を決めたのだろう。

 報告は「これで、あらゆる責任を果たしたとは思っていません」と続き、「全責任は私個人にあります」と謝罪したが、ファンクラブの会員さんたち、ファンの人たちへの説明は不足していたのではないだろうか。SMAPという国民的アイドルのリーダーとして活躍し、アイドルだけでなく俳優や司会などマルチな才能を見せていた彼を応援していたファンは数多い。中には30年を超えるファンもいるという。

 SNSには今、そんなファンたちの動揺や混乱の声が溢れている。感じている怒りや悲しみ、失望や落胆をどこに持っていけばいいのか、誰に向けていいのか。感情を抱えきれなくなった人の中には、彼が陥れられた、嵌められたという陰謀説を信じたり、トラブルとなった相手の女性を恨み、誹謗中傷を行ったり、フジテレビの責任を追及しているケースさえある。中居さんが引退したということを認められず、認めたくないのだ。

 愛する者との別れ、大切な人の喪失は人生の中でも最も大きなストレスである。ファンが中居さんの突然の引退に衝撃を受け、驚き、怒りや悲しみといった感情に襲われたのは「モーニング」と呼ばれる情緒的な経験をしたからだ。大切な対象を失うと、人は情緒的な危機から抜け出すために「モーニングワーク」というプロセスを経るといわれる。第一段階はショックによる情緒的危機の時期であり、あまりにショックが強く、どうしていいのかわからず、混乱するという。人によっては不安や無力感から身体的は不調を感じるかもしれない。

 ショックの後は喪失や否認の段階であり、失った者への思いが強く、失ったという事実を認めることができない時期になる。人によっては思いの強さとともに恨みや憎しみの感情が強くなり、はけ口を求めてるようになるかもしれないが、それが誹謗中傷のような形を取るのは悲しみや辛さを癒すことにはならない。その後は失った対象がもう戻ってこないという事実を認めざるを得ず、諦めるという絶望や失意の段階に入る。その後にやっと失った事実を認めて、前を向くようになる再生や再建の段階になるといわれる。動揺し混乱しているファンたちは今、ショックか喪失や否認の段階にいるのだろう。

 さらに「ヅラの皆さん」というファンクラブの会員への呼びかけが、ファンの感情をさらに辛くさせたかもしれない。「一度でも、会いたかった 会えなかった 会わなきゃだめだった」という文章にある「会えなかった」がファン心理を刺激した気がする。「会いたかった 会わなきゃだめだった」は、一人称の文章で中居さん本人の気持ちであるが、会えなかったというのはそうしたかったのに、できなかったということを意味する。会えなかったのはなぜなのか、ファンたちは様々に憶測するはずだ。

「こんなお別れで、本当に、本当に、ごめんなさい」と謝りつつ、「さようなら…。」という言葉を残して表舞台から姿を消した中居さん。一方的な報告文書だけではファンも心の区切りがつかないだろう。トラブルを起こした”相手さま”との守秘義務などから会見を開くことは難しいだろう。だがせめてファンクラブの会員に向けて10秒でもいいから「本当にごめんなさい」そして「今まで応援してくれてありがとう」というビデオメッセージを出していればよかったのに、と思うばかりだ。

 中居さんとしては大切なファンだからこそ、少しでも早く報告をしようと思ったはずだ。そのファンたちをこんなにも動揺させたまま芸能界を去ってしまうとは。彼自身も追い詰められていたのだろうが、「今後も、様々な問題に対して真摯に向き合い、誠意をもって対応して参ります。」というコメントに反している気がして残念でならない。

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