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フジテレビの危機的状況に冬ドラマ5作が「偶然?必然?騒動とのシンクロ」切実な背景

NEWSポストセブン 2025年2月3日 7時15分

中居正広の女性トラブルから、スポンサー離れにまで広がっているフジテレビに関する問題。そうした中、フジテレビの冬ドラマが「フジの現状にシンクロしている」との声が上がっている。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 1月の終わりとともに2025年最初の連ドラがようやく出そろいました。今冬は高校と文部科学省が舞台の『御上先生』(TBS系)、バカリズムさんらしいファンタジー+雑談の『ホットスポット』(日本テレビ系)、資産の形成や管理がテーマの『プライベートバンカー』(テレビ朝日系)など個性が際立つ作品がそろう中、違う意味で注目を集めているのがフジテレビ制作のドラマ。

 現在フジテレビは中居正広氏の女性トラブルについての対応の失敗などから、75社超のスポンサーがCMを差し替え、社長と会長が辞任するなど危機的状況に陥っています。そんな中、ネット上で目につくのが「フジの冬ドラマが同社の現状にシンクロしている」という声。カンテレ制作も含めゴールデン・プライム帯(19~23時)で放送されている5作のドラマはどんなタイトル、どんな内容で、フジテレビのどんなところと重なっているのでしょうか。

 さらにそのラインナップ全体を見ていくと、制作の狙いだけでなくフジテレビの現状が透けて見えてきます。

主要4局で断トツの5作を放送続行

 現在ゴールデン・プライムタイムで放送されているフジテレビ系の冬ドラマは、『119エマージェンシーコール』(月曜21時)、『秘密~THE TOP SECRET~』(カンテレ制作、月曜22時)、『アイシー ~瞬間記憶捜査・柊班~』(火曜21時)、『問題物件』(水曜22時)、『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(木曜22時)。苦しい状況ながら、主要4局の日本テレビ、テレビ朝日、TBSより2作も多い計5作の放送を継続しています。

『119エマージェンシーコール』は、消防局の通信指令センターが舞台の作品。危機に瀕した命を救うために司令管制官たちが奮闘する物語ですが、「一刻を争う緊急事態」「助けを求めた切実な通報」という状況などをフジテレビと重ね合わせる声があがっています。

『秘密~THE TOP SECRET~』は、脳に特殊なMRIスキャナーをかけて映像化する“MRI捜査”を扱った刑事サスペンスですが、会見での不透明な受け答えに同作のタイトルを引っかけて揶揄するような声がありました。

『アイシー ~瞬間記憶捜査・柊班~』は、カメラアイ(瞬間記憶能力)を持つ柊氷月(波瑠)が難事件に挑む刑事ドラマ。「氷月には忘れたくても忘れられない過去があり、心の傷を抱えながら懸命に今を生きる姿を描く」という設定を中居氏とのトラブルが発生した女性に重ね合わせる人がいるようです。

『問題物件』は、さまざまな物件で起こる奇々怪々な事件の謎を解明する不動産ミステリー。こちらはタイトルそのままにフジテレビを問題物件としてたとえる声があります。また、フジ・メディア・ホールディングスは不動産事業で大きな利益をあげていることをあげてメディア・コンテンツ事業を問題物件とみなすようなものもありました。

『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』は、人生崖っぷちに追い込まれた大森一平(香取慎吾)が義弟やその子どもたちとニセモノ家族を演じることでさまざまな社会問題に向き合っていく物語。女性トラブルにかかわる経営幹部の対応について『日本一の最低男』というタイトルに重ね合わせて批判する声がありました。

実は超保守的ラインナップだった

 こうして見ていくとシビアな設定やシリアスなムードの作品が多いことに気づくのではないでしょうか。特に主人公が追い込まれるシーンが目立つため、フジテレビそのものに重ね合わせやすいのかもしれません。さらに主人公が1つの苦難を乗り越えても、すぐに次の苦難がはじまり、コメディパートなどの気が休むシーンが少ないことも含め、良くも悪くも作品ジャンルや脚本・演出の偏りが見られます。

 そしてもう1つ見逃せない偏りは、『日本一の最低男』以外の4作は週替わりゲストが登場する一話完結型の構成であること。しかも4作すべてが命をめぐる物語であり、それは業界内で「視聴率獲得という点で一定の結果が見込め、失敗のリスクが少ない」といわれる安定路線のコンセプトです。

しかし、今回の騒動によって視聴率獲得どころかスポンサーがCMを差し替えるという真逆の事態に陥ってしまいました。それ以上に深刻なのは、数年前からドラマ業界では「マーケティングを踏まえた安定路線の作品では視聴率が取れなくなり、ネット上の話題性や配信再生の動きも鈍い」と言われていること。つまり、今回の騒動がなくても苦戦しそうな保守的なラインナップだったのです。

 さらに気がかりなのは他局のドラマに比べて主要キャストの数が少ないこと。実際、番組ホームページの相関図を見ると、『問題物件』は6人、『日本一の最低男』は7人。『アイシー』も物語の多くを柊班の5人が占めていますし、出演俳優を絞ってコンパクトに制作している様子がうかがえます。

「今回の騒動でさらなる制作費削減は免れない」と言われる中、春以降は思い切った作品を仕掛けられるのか。現場スタッフの奮起に期待したいところです。

【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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