2月1日にキャンプインしたプロ野球。リーグ連覇と13年ぶりの日本一を目指す巨人の阿部慎之助監督(45)だが、ストーブリーグの動きが活発だったことで、大きな“難題”に直面している。
今オフに70億円の大補強を敢行した阿部・巨人。過去最大の補強との声もあるが、結果として“抱え込んだ戦力を有効活用できるのか?”という問題が生じている。
阿部監督が現状でレギュラーを明言するのはセカンドの吉川尚輝(29)と主砲の岡本和真(28)のみ。その岡本のポジション次第で今季の陣容は大きく変わりそうだ。スポーツ紙デスクが語る。
「岡本はメジャー行きを見据えてレフトで起用のようだが、その場合、外野のポジションが大変なことになる。センターは残留が決定したヘルナンデス(30)でほぼ確定。レフトは岡本の控えに5年目の秋広優人(22)、プロで一、二を争う守備範囲を誇る佐々木俊輔(25)、昨季西武からトレードで加入した若林楽人(26)がいる。さらに過酷なのがライト。丸佳浩(35)が本命視されていたが、阿部監督は3年目の浅野翔吾(20)と競わせたいようです。ほかにもオコエ瑠偉(27)や六大学の三冠王になった萩尾匡也(24)にもチャンスがある。現時点で外野のレギュラー候補が9人。実績十分の丸が弾き出される可能性もある」
阿部監督は元日のスポーツ報知のインタビューで、〈(岡本の守備位置は)サードかレフトかな。勇人(坂本)とかがサードで元気だったらレフトが和真になるだろうし〉と坂本勇人(36)のサード起用をほのめかした。
「サードにはただでさえ中山礼都(22)と新人の荒巻悠(22)という若手のライバルがいます。岡本がサードに回る場合、坂本は窮地に陥る。
坂本をファーストに回すプランもあり得ますが、阿部監督は3Aでトリプルスリーを達成した新助っ人のキャベッジ(27)をファーストに固定し、5番を打たせる構想が頭にある。昨季はレギュラー確定宣言をされた坂本ですが、今季のポジション争いでは一気に負け組の可能性がある」(同前)
FA加入・甲斐の居場所は?
さらに飽和状態なのが、扇の要である捕手だ。FAでホークスから獲得した甲斐拓也(32)に加えて、岸田行倫(28)、小林誠司(35)、大城卓三(31)、若手の山瀬慎之助(23)らが鎬を削る。阿部監督は「理想は甲斐を固定」と三顧の礼で迎えるが、V9時代にエースのジョーと呼ばれた城之内邦雄氏はこう語る。
「甲斐がコーチ役として岸田や大城にリードや捕球、ブロックなどの技術を教えるならチーム力は向上するが、甲斐がメインで試合に出ると岸田や大城の成長が止まります。特にせっかく育ってきた岸田は試合経験を積むことが大事なので、甲斐と岸田の2人体制にするなど育成にも力を入れるべきではないか」
小林は昨季、菅野智之(35)との「スガコバ」コンビで最優秀バッテリー賞を獲得したが、「菅野のメジャー移籍で、使いどころが難しい」(前出のスポーツ紙デスク)と出番が激減しそうだ。
各ポジションが満席状況の一方、ポッカリと抜け落ちたのが投手陣。1995年にヤクルトからFAで巨人に移籍した広澤克実氏はこう言う。
「本来、巨人が補強すべきは先発でした。にもかかわらず中日から守護神のマルティネス(28)を獲得。大勢(25)とバッティングしている。これではモチベーションは上がらないし、補強にビジョンが見えない」
今オフ、巨人は投手陣の目玉として楽天を退団した田中将大(36)を獲得したが指揮官の期待度は決して高くないようだ。
スポーツ報知の新年インタビューで、阿部監督は田中について〈先発ローテーションの6番目くらいに入って1年間、ローテーションで回ってほしい〉としている。
「昨季15勝でリーグMVPの菅野の代わりどころか先発6番手と評価が低く、赤星優志(25)、高橋礼(29)、横川凱(24)らと先発ローテの当落線上で争うことになり、ローテから漏れる可能性も十分にある。春季キャンプでは調整が本人に一任される『S班』に入ったが、どこまで早めの調整を進められるか次第です」(前出・スポーツ紙デスク)
こうした巨人の現状について、城之内氏は言う。
「V9を達成した川上(哲治)巨人はピンポイントで選手を獲得して、その都度、レギュラーに刺激を与えました。阿部巨人のように確たる狙いも見えないまま手当たり次第に選手を獲るのとは大きく違う。キャンプで全ポジションを競わせたうえで、各ポジションをある程度固定できるかどうか。それができなければ、日本一は遠くなります」
激しい競争にビジョンがなければ、大補強が逆効果となりかねない。
※週刊ポスト2025年2月14・21日号