警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ヤクザが所属する団体の「代紋」をつける資格、名乗る資格について。
* * *
新年が開けた1月25日、恒例となっている六代目山口組の司忍組長の誕生日会が愛知県の傘下事務所で行われた。司組長はこの日、83歳になった。高齢のため誕生日会の前には「司組長が電撃引退を発表する」という情報がSNSで流れていたが、山口組関係者A氏は「分裂抗争が終わるまで、組長が引退することはない」と言い切っていた。
誕生日会の会場に到着した司組長は白っぽいグレーの着物に白い足袋に下駄を履いていたと、会に密着していたNEWSポストセブンが、『《司忍組長83歳の誕生日会に密着》灰色の着物姿で宴会に参加 電撃昇格した有名幹部の胸元に光る「山口組のチェーン付き”プラチナ”」』の記事で報じた。2024年の誕生日会では、黒っぽい濃い目のグレーの着物に藍色がかった帯と藍色の足袋を履いていた組長の姿が山口組新報第30号の掲載されている。誕生日会は着物と決めているのだろう。
前日の24日、山建組の中田浩司組長が若頭補佐に昇格したという情報がSNSで流れた。令和7年度六代目山口組住所録、いわゆる山口組名簿の六代目山口組役付き、若頭補佐の欄に中田組長の名前はないことから、電撃昇格が行われたのだ。記事によると誕生日会に出席した中田組長の胸元には、直参組長がつけるプラチナ製の代紋、通称プラチナに、執行部に入った者がつけられるチェーンがついていたという。A氏によると「直参になれば、名刺や書状などの代紋もプラチナ色(シルバー)になる」。
最近は名前だけ
組の名前や代紋はヤクザにとって、アイデンティティーやステータスともいえるほど重要だ。山口組の代紋はその意匠から「菱」と呼ばれ、稲川会は「稲穂」、住吉会は「マル住」と呼ばれてきた。六代目山口組から分裂した神戸山口組も代紋に菱を使用している。ヤクザも羽振りよく豪遊していたバブル全盛期、夜の街で働く人たちの間では、客でくるヤクザがどこの組の者なのかを区別するため、組の代紋にちなんで隠語が使われていた。
山口組の山菱はローマ字のCとDの組み合わせに見え、CDのブランドロゴに似ていたことから”クリスチャン・ディオール”。ブランドには迷惑だったことだろう。稲川会は代紋に稲穂が描かれていることから”農協”、住吉会は住の漢字を丸く囲んでいるのが、昔の日本住宅公団のロゴマークに似ていたことから”住宅公団”と呼ばれていた。当時は「あいつはクリスチャン・ディオールだ」「こっちに座っているのは農協の団体」などと隠語を使って、客の素性を話していたという。
組員になれば”虎の威を借る狐”で、虚勢を張って堂々名乗りたいところだろうが、六代目山口組ではそうもいかないらしい。直参にあたる二次団体から三次、四次と多くの傘下組織を持つ六代目山口組では、プラチナ以外、六代目山口組とは名乗ることができないという。A氏は「自分の名刺に代紋は入れられても、六代目山口組とは入れられない。六代目山口組の傘下にいるが、司組長から直接盃をもらっていない者は六代目山口組とは名乗れない」。
名乗れないのは直参の組の幹部も同じだ。「山口組の名簿には毎年、その時点での直参の組が載せられ、組の名前、組長の名前、若頭や舎弟頭と呼ばれるナンバー2の名前に本部長の名前が書かれている。しかし若頭や本部長として名前が載っていても、名刺に六代目山口組とは入れられない。名乗る時は自分が所属する組の名前になる」とA氏はいう。「仕事で出す名刺は代紋なしの名前だけという名刺も多くなった。ヤクザも肩身が狭くなったからね」。
華やかな席でお披露目されたチェーン付きプラチナの代紋とは違い、傘下組織の幹部が代紋を胸につけるのは、もう定例会や幹部会、葬式くらいだという。