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「従業員の人が驚くといけないから…」田村瑠奈被告が母・浩子被告に告げた「殺害現場のホテルをキレイにした理由」【ススキノ事件公判】

NEWSポストセブン 2025年2月9日 16時19分

 2023年7月、札幌市・ススキノのホテルで、頭部を切断された男性の遺体が発見された事件。逮捕された親子3人のうち、殺人ほう助や死体損壊ほう助などの罪に問われている父・田村修被告(61)の裁判員裁判が、1月14日から札幌地裁で行われている。 

 1月29日、30日の公判には、死体損壊ほう助などの罪に問われている母・田村浩子被告(62)も証人として出廷し、弁護側の尋問に答えた。娘・田村瑠奈被告(30)は被害男性と出会い“初夜”を過ごしたのち、約束していた避妊具の装着をしなかったことへの謝罪を求めるため、「ススキノの街に男性を探しに行く」と言い出したという——ライターの普通氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】

 瑠奈被告から「被害男性を探しに街に行く」と告げられた浩子被告。広い札幌で見つかるはずがないと思いつつ、これもまた「娘が自ら解決に向けて自発的に動くのなら」と協力した。街へ探しに出る6月17日、浩子被告は修被告に「鹿(※注:瑠奈被告による被害男性の呼称。過去の公判で明かされていた)がいるかクラブに短時間潜入捜査するの可能ですか」とのLINEを送っている。

弁護人「どうして鹿と送ってるんですか」
浩子被告「全然覚えてないです」

弁護人「推測でもわかりませんか」
浩子被告「娘に言われたままなので。恐らく(男性の)名を知らないので、ニックネームつけないと不便かなと」

弁護人「スマホの記録だと“鹿”と打つ前に“獲物”とも打ってるようですが」
浩子被告「記憶にありません。娘に言われたまま打っただけなので」

 その後の捜索で、瑠奈被告は被害者と遭遇する。被告はその場で謝罪を受け、次に会う日程を取り付け、「次はSMをする」と喜んだ。

 瑠奈被告は、SM女王になりたいという願望を以前より口にしており、「スポーツウィップ」という鞭さばきを競う競技のサークルにも参加していた。家では修被告に実践していたというが、スカーフで顔まわりを撫でるというもので、当時を微笑ましいと回想する浩子被告は、法廷でも発する言葉に少し笑みを含めていた。

 ただ、浩子被告は、瑠奈被告の能動的な行動を歓迎しつつ、一度不本意な関係となった人物とまた会うことに不安を覚えていた。反社勢力を装い「二度と近づくな」「守らなければ海に沈める」と言った電話用メモを作ったが、修被告から却下された。

 また、瑠奈被告は被害者と再会する前に別の男性ともホテルへ行っていた。「クラブで知り合った人が女王様をさせてくれた」「楽しかった」などと語り、使用済みのコンドームを持ち帰っていたという。違和感を覚えつつ、母は「自分の感覚が古いのかと」思うようにした。

会話の中で突然「頭を持って帰ってきた」

 2023年7月1日の被害者との再会日、金髪のショートウィッグをつけて出かける直前の瑠奈被告に感想を聞かれた。服装に目がいったので、スーツケースを所持していたかは見ていないという。ウィッグも多数所有しているので違和感を覚えることはなかった。

 また、出発前に修被告に対し「そういえば車のGPS記録残りますか」とLINEをした記憶があるかと、弁護側から浩子被告は尋問されている。瑠奈被告に言われるがまま送ったとのことで、意味はわからないと答えた(検察はこれが、浩子被告が犯行計画を知っていた証左なのではないかと指摘している)。

 外出を見守ると、浩子被告は横になった。その後の様子を修被告にLINEで確認することもなかった。なお、修被告はそのころ、家にスマホを忘れていたが、そのことを浩子被告は把握していなかったという。

 翌2日午前3時、瑠奈被告と修被告は帰宅した。浩子被告は、被害者との再会が気になり深く眠れなかったが、階段を上がる音で無事を感じた。直接会うことはなく、その後、2人はまた別のクラブに出かけて行った。

 朝8時ごろ、クラブから瑠奈被告が帰宅。洗面所のほうで何か物音を立てたあと自室に戻っていった。入れ違いで洗面所を利用した浩子被告は、洗面所横の浴室に衣装ケースのようなものが置かれてることに気付いたという。そのときは何かもわからず、ただ娘の物に触れない習慣があったため、特に疑問を持たなかった。

 浩子被告の証言によると、夕方、娘と会話をしている中で突然「頭を持って帰ってきた」と瑠奈被告から伝えられたという。また変なことを言ってると思ったというが「従業員の方が驚くといけないから血をキレイにしてきた」と娘は続けた。

 浩子被告はこのとき、娘が普段と変わらない様子で話しており、その後もクラブの話に移行したので、突拍子もないことを言っているくらいにしか思わなかったという(浩子被告は、一連の“計画”を知らなかったと主張するためにこの供述している可能性もある)。

 翌日の新聞で、事件を知ったと主張する浩子被告。瑠奈被告に新聞を見せると「それ、とっといて」と返された。何かしらの関与を確信し、当時の心境を「足もとから世界が崩れる感覚」と証言している。そんな中、同日の修被告とのLINEは日常的なものばかりであった。

浩子被告「家で話すと娘が聞くかもしれないし、『娘が誰かを殺したかも』と文字を打つのも恐ろしく、ただ繋がっていたかった思いでした」

「地獄は死んでからでなく、今ここにあるんだね」

 7日、瑠奈被告に「来てみて」と言われ、洗面台へ向かったという浩子被告。浴室では床に横になった頭部が見えた。

弁護人「頭部の状態というのは」
浩子被告「(言葉に詰まる)赤い状態で…目はこちらを向いていて」

弁護人「赤いというのは、皮がないということですか」
浩子被告「そうです」

弁護人「それを見てどんな気持ちになりましたか」
浩子被告「地獄がここにある、と思いました」

 娘の様子はごく普通だった。その内心がわからず、浩子被告は合わせるように「すごいね」と言った。その後は、修被告と報道されている事件と、浴室に置かれた頭部に関係があるか話すなか、衝撃的な内容に多数の記憶がおぼろげながら、「地獄は死んでからでなく、今ここにあるんだね」と会話をしたことは覚えていた。

 その後、瑠奈被告から「撮影して欲しい」と頼まれる。皮がない頭部を見て、「(何の撮影を頼まれてるか)わからない」、「これ以上の損壊が行われると思わなかった」と思っていたものの、その異常な光景に耐えられず、修被告に撮影を依頼した。

 後日、瑠奈被告から頭部の写真、眼球を入れたビン、水きりザルにかけられた頭皮を見せられた。その後、修被告に対し「よろしかったらお嬢さんの作品ご覧くださいな」とLINEをしている。

弁護人「なぜこのような言い方を」
浩子被告「娘にLINEを見られる可能性があったのと、まさか頭皮をとも言えず」

 瑠奈被告所有のスマートフォンにはLINEが入っておらず、連絡はすべて修被告または浩子被告経由で行われた。そのため事件の重要な情報が残されていると想像できるが、削除されたやりとりも多い。この点について浩子被告は、「被害者に関することを残したくなかった」、「事件以外のやりとりも瑠奈被告に見られたくないものを消している」などと説明した。

 報道の様子や日常的に尾行されている感覚などから、捜査の手が近づいていることは認識していた。しかし、通報や自首は考えなかったという。

浩子被告「どこかでターニングポイントがあれば止められたのかなと。そのようなことができず、事件になり本当に申し訳ない思いがあります。通報をしなかったのは、瑠奈を思う親としての気持ちで。ただ、被害者ご遺族の気持ちを考えると、時間も空いて、耐えられない思いだったろうと思います」

 ここまで浩子被告の主張をまとめて記したが、証言の取り扱いには注意が必要だ。

 2月4日の公判では、「検察側の尋問内容が、残っている取り調べの録音・録画の内容と異なっている」と弁護側が指摘。今後、公判での検察側の尋問の正当性が問われる可能性もゼロではない。

 大きな注目を集める本公判。父・修被告の判決言い渡しは、3月12日に予定されている。

(了。前編から読む)

◆取材・文/普通(ライター)

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