「折田氏の発言と斎藤知事の認識には“大きな乖離”がある 」──昨年11月に行われた兵庫県知事選挙において、斎藤元彦・兵庫県知事(47)に浮上していた公職選挙法違反の疑い。2月7日、兵庫県警と神戸地検は折田楓氏(33)が社長を務めるPR会社「merchu」ほか、複数の関係先に家宅捜索を行った。
大手紙社会部記者が解説する。
「捜査関係者によれば、これまでに折田氏に対して任意の聞き取りなどを行なっていましたが資料提出の要請などに十分応じず、“強制捜査”が必要と判断したということです。捜索ではスマートフォンなどが押収されました。
現状、斎藤知事側に対しての捜索などはされていません。しかし、もし公職選挙法に違反する証拠が見つかれば“当選取り消し”の可能性もあり、知事にとっても対岸の火事ではない」
2024年11月、折田氏が投稿サイト「note」で選挙のPR活動を“報告”したことに端を発したこの問題。同年12月1日には神戸学院大学の上脇博之教授と郷原信郎弁護士が、斎藤知事と折田氏を買収の疑いで刑事告発し、これを受理した県警と神戸地検が調べを進めていた。この告発から2か月あまり、今回、事態は大きく動いた。
両者にある“認識の溝”
捜査が進むなか、改めて注目が集まっているのが折田氏と斎藤知事の主張の齟齬だ。前出とは別の社会部記者が語る。
「斎藤知事はこれまで、“ポスター制作費”などの名目で折田氏に70万円あまり支払ったことは認めましたが、SNSの運用に関しては『斎藤陣営が主体的に考えてきた』と主張し、公選法違反疑惑の指摘を否定。『広報全般を任せた』ことは虚偽であり、代理人弁護士は『(折田氏が)話を盛っている』とも発言しています。
一方の折田氏は騒動後、『note』の投稿を削除・修正し完全に“雲隠れ”してしまった。テレビ朝日の取材に対して『(弁護士に)答えるなと言われている』と返して以来、公式の発信もありません」
斎藤元彦知事は2月7日、報道陣に対して「私としては公職選挙法に違反しないという認識には変わりない」と説明しており、一連のPR活動などは折田氏個人の判断によるものとする姿勢を崩さないままだ。
次々と自治体SNS案件を受注指摘た折田楓氏
折田氏の会社は2017年創業。今回の騒動では「ポスター制作費」などの名目で受注していることにされているが、ポスター制作はメインではなく、強みは「SNS運用代行・コンサルティング」だ。だからこそ、「広報全般を任された」というnoteでの投稿につながったとみられる。実際、兵庫県知事選の前にも、複数の自治体でSNS運用関連の仕事を受注するなど存在感を放ってきた。
「広島市が実施している公募型プロポーザル『SNS活用プロモーション業務』のコンペで、『merchu』は2019〜2024年の5年連続で受注を勝ち取っているんです」(別の全国紙社会部記者)
2020年は、『KADOKAWA』や『楽天』『凸版印刷』などの大手企業を含む合計16社のコンペを勝ち抜き、1位に。それ以降は年々参加企業が減り、「2024年には広島県が運営する『広島県SNS運用支援業務』も約1305万円で単独落札しています」(同前)。
それについて昨年11月、NEWSポストセブン取材班が同県の観光政策部・観光プロモーション課の担当者に、審査について取材をしたところ、こう回答している。
──名前が通っている大手を破って、「merchu」が勝ち続けているのはなぜですか?
「それは審査の内容になるので、総合的に評価されたという、審査の段階で。それしかお答えのしようがないです」
──出来レース的なところはない?
「それは絶対にないです。審査員が厳正に評価して点数を決めています。改めて念押ししますが、絶対にありません」
自治体からのSNS運用を次々と落札してきた折田氏だが、斎藤氏側は兵庫県知事選については“個人的なボランティア”だったと主張している。
いま、彼女はどこにいるのか──。NEWSポストセブンは2月8日、「merchu」のオフィスを訪ねたが、誰も応対することはなく、人気も感じられなかった。
はたして今後、本人の口から真実が語られることはあるのだろうか。県警と神戸地検は、立件の可否を慎重に検討している。