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神経線維腫症1型とうまく付き合うための2つのポイント

QLife 2024年5月27日 10時0分

多彩な症状にスムーズに対応するための継続受診の重要性

 茶色い皮膚のあざが特徴的な神経線維腫症1型という疾患があります。NF1と呼ばれる遺伝子の変異を原因とし、約3,000人に1人1,2)の割合で発症する遺伝性の希少疾患です。

 希少疾患に特化する製薬会社のアレクシオンファーマは、2024年5月12日、市民公開講座「ともにあゆむ 神経線維腫症1型〜子どものころの症状や知っておきたい社会制度〜」を開催しました。

 神経線維腫症1型について、馬場直子先生(神奈川県立こども医療センター皮膚科 兼 横浜市立大学皮膚科臨床教授)は「生後間もなくカフェ・オ・レ斑と呼ばれる皮膚のあざが現れ、その後、神経線維腫や骨の変形、目の腫瘍など全身にさまざまな症状が出現する。ただし、症状の種類や程度には個人差がある」と解説しました。

 さらに馬場先生は「症状が軽度な場合は経過観察でよいが、ずっと安定しているとは限らない。成長にともない新たな症状が出てくる可能性は高く、まれに腫瘍が悪性化することもあるので、途中で受診をやめないで」と定期的な継続受診を推奨します。

 定期受診には、医療者側が患者さんの症状の変化に気づきやすく、フォローしやすい、といったメリットもあります。

 また症状にバリエーションがある疾患のため、馬場先生は「医療者は症状の進行によって神経内科や脳神経外科、形成外科、整形外科、眼科など皮膚科以外の診療科との連携を図ることも必要」と話します。

負担を軽減する医療・福祉制度とその相談窓口

 患者さんが神経線維腫症1型とうまく付き合い、定期受診を継続するためには、負担を軽減する工夫が必要です。患者さんには学校や仕事との両立という生活面の課題や、医療費などの経済的負担があります。

 そのような課題に対して、患者さんやご家族に寄り添い、解決に向けてサポートをする専門職が医療ソーシャルワーカー(MSW)です。

 MSWの野邑瞳さん(名古屋大学医学部附属病院 地域連携・患者相談センター)が、患者さんの利用できる主な医療・福祉制度と相談窓口を紹介しました。

 神経線維腫症1型の患者さんが利用できる主な医療・福祉制度には以下が挙げられます。

医療費の負担軽減制度(高額療養費制度、小児慢性特定疾病医療費助成、指定難病[特定医療費助成制度]) 療養環境を整える制度(障害者総合支援法、介護保険) 生活費の負担軽減制度(障害年金、傷病手当金)

 野邑さんは「各制度には自己負担額を抑えられたり、助成金を得られたりなど、それぞれ特徴がある。ただし、利用できるかどうかは症状の程度や年齢、居住地域などによって異なるため、まずは受診している病院にいるMSWや各種窓口に相談を」とアドバイスします。

 主な相談窓口としては以下が挙げられます。

【全般的な相談窓口】 難病診療連携拠点病院・協力病院(治療、療養、制度、就労などの相談) 保健所・保健センター(保健師などによる療養相談) 難病相談支援センター(療養生活や制度利用、就労相談。専門医による医療相談など) 【仕事に関する相談窓口】 ハローワーク(難病患者就職サポーター) 産業保健総合支援センター

 野邑さんは「難病診療連携拠点病院や難病相談支援センターが、お住まいの地域のどこにあるかは、 難病情報センターのホームページから確認可能です。各都道府県には1、2か所ずつ、病気の特性を踏まえて就労相談ができる難病患者就職サポーターが配置されているハローワークがある。こちらも事前にチェックを」と相談先探しで役立つポイントを補足しながら解説しました。

 今回の講座では、患者さんが疾患とうまく付き合うために大切な「継続受診」と「負担軽減に役立つ制度とその相談先」を紹介していました。情報を理解し、制度を活用することで、みなさんの負担は大きく軽減される可能性があります。悩みが解決しないときは、まずMSWや相談窓口に連絡してみてはいかがでしょうか。(QLife編集部)

【参考文献】 1)神経線維腫症1型診療ガイドライン改定委員会(編). 日皮会誌 128(1): 17-34, 2018 2) 高木 廣文ほか: 厚生省特定疾患神経皮膚症候群調査研究 昭和62年度研究報告書: 11-15, 1988

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