「重い病気にかかったら治療に専念しなければならない」「治療を優先するために、やりたいことも諦めるべきだ」―。そう思っている人も少なくないのではないでしょうか。
総合ヘルスケア企業のジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は2024年11月15日に「“治療も、やりたいことも諦めない”ための鍵とは」をテーマにメディアセミナーを開き、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸博幸さんが自身の闘病体験を語りました。
岸博幸さん(ジョンソン・エンド・ジョンソン提供)
岸さんは2023年1月に多発性骨髄腫と診断を受けています。多発性骨髄腫とは血液のがんの一種で、免疫機能において重要な「抗体」をつくり出す「形質細胞」の腫瘍です。比較的ゆっくり進行するものの、完治が得られにくく、治療を続けることが重要な病気と言われています。
岸さんは、診断から約2年間にわたって続けてきた治療について、体力の低下や治療にかかる費用などの具体的なエピソードを交えながら、「正直に言ってしんどい」「思った以上に大変」と振り返りました。そのうえで、そうした状況で治療を続けるためにも、「自分のやりたいことはどんどんやることが大切」と話しました。
続けて、自分のやりたいことをやるには「主治医との信頼関係」「周囲の理解」が重要であると指摘。「私自身は周囲のサポートもあり、治療の傍らやりたいことを続けてきたが、治療をしながら仕事やプライベートも充実させるのはなかなか大変。今後は患者が治療と仕事・プライベートの両立を実現できる社会にするためにどうしたらよいか、多くの人に問題意識を持ってもらいたい」と述べました。また、そのために自身の経験を積極的に発信することに意欲を見せました。
完治しづらい多発性骨髄腫 主治医との治療目標共有が大切セミナーでは、塚田信弘先生(日本赤十字社医療センター血液内科副部長)が多発性骨髄腫の特徴や治療法について解説しました。塚田先生は多発性骨髄腫では継続して治療を行うことが非常に必要だとし、「長い目で見て、付き合っていかなければならない病気」と話しました。
塚田信弘先生(ジョンソン・エンド・ジョンソン提供)
そのうえで、前向きに治療を継続するためのポイントとして、①自分の病気を知る、②担当医との信頼関係を築く、③治療中に困ったことがあれば我慢せずに聞く、④治療以外の時間を有意義に過ごすことを考える、の4つを挙げました。さらに塚田先生自身が患者さんへの病状説明で気をつけていることにも触れ、「治療目標とそれを達成するための治療プランを最初に提示しておくようにしている。治療目標が共有できていないと信頼関係が築きにくい。反対に、最初に提示したプランが予定通りに進むことで患者さんとの信頼関係が強まる」と語りました。
医療者との信頼関係構築が、前向きに治療を継続すること、さらには治療をしながら人生を豊かにすることにつながると言えそうです。(QLife編集部)