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“音を立ててはいけない”“においを残したらいけない”“息をしてはいけない”という命にかかわる禁止ルールがある世界で、得体の知れない「怪物」が登場するホラー名作選

Rエンタメディア 2024年9月27日 10時0分

ホラー映画と呼ばれるものには、ゾンビ、幽霊、悪魔、怪物、殺人鬼、ヒトコワなど様々な恐怖の対象が現れる。日本では幽霊を題材にした作品が多いが、海外では悪魔やゾンビ、殺人鬼などが登場する作品が多い印象だ。今回は「絶対に〇〇してはいけない」してしまうと“何か”に襲われる…という恐怖を描いた洋画ホラーの名作を紹介する。


“音を立てたら即死”という恐怖を描いた映画『クワイエット・プレイス』。2018年に公開されたこの作品は、盲目だが聴覚が極めて敏感な“怪物”に支配された世界が舞台になっていた。リー・アボットと妻エヴリン、長女リーガン、長男マーカス、次男ボーのアボット一家は、オモチャの音を鳴らしてしまったボーを失うという悲しい出来事があったが、ひっそりとした農場で音を立てない工夫を凝らしながら生き延びていた。長女が聴覚障がいがあったことで、手話で意思疎通をはかることができたことも彼らが生き延びられた大きな要因だと言える。怪物たちが反応する“音”は、人間に関わる音。会話はもちろん、生活音と呼ばれる音、オモチャの音や車のクラクションなども含まれる。動物の鳴き声や自然の音には反応を示さないという特徴がある。大ヒットを記録し、2021年に続編『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』も公開された。“音が立てられない”という極限状態の世界は、見る側にも緊張感が伝わり、没入感も大きい。

そして、シリーズ最新作『クワイエット・プレイス:DAY 1』(2024年)がRakuten TVでも配信がスタートした。本作はタイトルにある「DAY 1」の文字通り、“始まりの日”が描かれている。舞台は田舎町ではなく、音を立てないことが不可能な大都市ニューヨーク。まさに青天の霹靂。賑わいを見せているニューヨークに、突如、得体の知れない怪物が大量に降ってきた。猫のフロドと暮らす女性サミラもバスに乗っている時に巻き込まれ、意識を失った。救助されて目を覚ました時にはもうすでに“音を立ててはいけない”世界になっていた。助けを求めたり、避難するように誘導したり、そんなふうに声を発すると瞬時にして怪物に襲われてしまう。そんなサミラは偶然出会ったエリックという男性と一緒にニューヨークからの脱出を試みる…。冒頭のニューヨークの街の喧騒から一転、怪物たちが現れた後は静寂が広がっていく。サミラ役のルピタ・ニョンゴ、エリック役のジョセフ・クインの言葉少ない中での表情などでの表現が見事で、その演技に引き込まれていく。猫にも注目して見てもらいたい。

「クワイエット・プレイス」シリーズ同様、“禁止ルール”のあるホラー映画をいくつか紹介しょう。一つは『クワイエット・フィールド』(2017年)。ここでの禁止ルールは“におい”。人間を襲うヴァンパイアによって荒廃した世界が舞台で、生き血を求める彼らは人間のにおいを察知し、襲ってくる。生き残った5人の男女は、外ににおいを残さないように車で移動しながら安全な場所を求めてさまよっていた。真夜中に襲われていた女性ヴィッキーを助け、彼女の提案で核シェルターを所有する彼女の亡き父親の家に向かうことにした。“におい”というのも気をつけていればどうにかなるというものではないので、これもまた緊迫感漂うシーンが多くなっている。

『ドント・ブリーズ』(2016年)は、タイトル通り“息をするな”というルールの作品。10代のロッキーは、生活能力のない両親の元から、幼い妹を連れて逃げるための逃走資金を必要としていた。恋人のマネーから、地下室に大金を隠している盲目の老人宅へ友人と一緒に強盗に入る計画を持ちかけられる。それに参加し、老人宅に忍び込んだ。盲目の老人からお金を奪うのは簡単なはずだったが、その老人はどんな音も聞き逃さない超人的な聴覚を持っており、想像を絶する異常者でもあった。息をすることも油断できない状況は恐怖の連続となる。続編『ドント・ブリーズ2』も2021年に制作されている。

『ドント・スリープ』(2016年)のルールは“寝てはいけない”。アメリカ中で健康体の人間が睡眠中に死亡するという事例が多数発生した。原因は不明で「悪夢死」と呼ばれ、世間を賑わせている。一時的に体が動かなくなる“睡眠マヒ”(金縛りのようなもの)に見舞われた人たちが“鬼婆”と呼ばれる女性に次々と殺されていく…。眠ると襲われるという、これも避けようのない状況だけに、極限状態で恐怖と向き合う怖さが充満している。

禁止ルールの中で、どう生き延びるのか、どう克服するのか。自分ならどうする?と置き換えて見てみると、より恐怖心が感じられるかもしれない。

(文・田中隆信)

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