今年2月に、惜しまれつつ宝塚歌劇団を退団した和希そら。その実力を活かした今後の活躍に期待が高まる中、退団後初の出演作となるのがミュージカル『9 to 5』。明日海りお、平野綾、和希そらの3人の女性社員が、別所哲也が演じるハラスメント社長への復讐作戦を決行する痛快ミュージカル・コメディだ。2009年にブロードウェイで上演されるや大きな話題を集め、トニー賞、グラミー賞にノミネートされた。その後、2019年にはロンドンのウエストエンドでもヒットを記録。働く女性の仕事や恋愛の悩みを描いた、現代を生きるすべての女性に贈る傑作ミュージカルである。
インタビュー前編では、この作品に出演したいと思った理由や、役について、新たな歌の表現などについて話を聞いた。そして、後編ではRakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品から、おすすめ作品をセレクトしてもらい、それぞれのセレクト理由や思い出を語ってもらった。
（文&写真：岩村美佳）
※本インタビューは7月上旬に実施いたしました。
ーチラシの仕上がりをご覧になっていかがですか？
実際にセットに全部色が付いていて、とてもかわいいポップなセットの中での撮影だったのですが、チラシ全体の雰囲気も色合いも可愛いなと思います。
ー明日海さんと平野さんと3人で一緒に撮影するのはいかがでしたか？
撮影のときも『9 to 5』の曲が流れていたり、すごくポップな雰囲気で楽しく撮影させていただきました。女性3人で結託して、チームワークを持って進んでいくお話なので、撮影からご一緒させていただけたのは、すごく嬉しかったです。
ーご出演にあたり、この作品に惹かれたところをお聞かせください。
私が今まで主演させていただいた作品は、結構ダークな作品が多くて、私は大好きなんですけど、コロナ禍になる前に比べて、観た後にハッピーになれたり、笑えたり、気持ちをちょっと軽くして観られるような作品を観たいとおっしゃる方も増えているんじゃないかなと思うんです。『9 to 5』の時代感も可愛いですし、こういう作品に挑戦してみるのもすごく楽しそうだなと思い、出演できたらと思いました。
ー和希さんがご出演されたコメディ作品というと、『プロミセス、プロミセス』などを思い出しますね。
時代感や、世界観がすごく好きでした。あの時代の映画などを見ても、お洋服などもすごく可愛いじゃないですか。そういうのもいいですよね。
ー世界全体のエネルギーが上昇気流に乗っているときのパワーというか。
この時代の流行っていたものや、ファッション、メイクとかって、今のように、なんでもスマホですぐに調べられる時代ではないからこそ、それぞれの“人”で生み出されている感じがあって。だからこそキャッチーで、時が経ってもその流行がまた来たりするくらい、根強いものがあるのかなと。そういう興味もありますね。
ーそのパワーがこのビジュアルからも伝わってきますね。
可愛いですよね。
ーお芝居が魅力的なお三方が揃っているので、共演がとても楽しみです。
私もとっても楽しみです。
ー和希さんといえば、歌もダンスも芝居も素晴らしく感嘆するばかりですが、特に今回の楽曲においては、ご自身の歌の表現として、どこに魅力を感じていますか？
私普段から音楽を聞くのが好きなんです。お風呂の中でもいつも音楽をかけていて。
特に車の中でいろんな音楽をかけて、歌いながら運転するのが大好きで、宝塚在団中も、いろんなジャンルの歌手の方の曲を、たまに歌い方を真似したりしながらドライブしていましたね（笑）。
ー歌い方を真似るんですね。
踊りと一緒で、クラシックなものも学びつつ、いろんな曲を聞いたり、真似てみることで、違う表現方法を要望された時に使えることもあるのかなと。まぁでも、ただ好きなだけなんですけどね。
ー様々な曲から取り入れた手法も、いろいろと使えるんですね。
いろいろできるようになりたいですね。
ー男役時は低音が多かったと思いますが、これからキーの高い楽曲が増えていくうえで、ご自身の高い方のキーについてはどんなふうに分析されていますか？
同じ音域でも男役と今とでは、響かせる場所も違うので、とにかく訓練訓練です。
ーさらにいろんな歌声を聞かせていただけますね。
日々訓練して頑張ります。
ー和希さんが演じるジュディ役は、3人の中でどんな女性でしょうか。
新入社員なのですが、新卒の新人ではなく、一度結婚し、離婚した後に働き始める新入社員です。
いわば世間知らずのお嬢さんで、日々接する人は夫くらいしかいなかったジュディが、初めて社会に出て、人と接していく。その彼女が周りのキャラの濃い人たちと関わっていくことによって、どのように変化していくのか。
違う女性像を持った3人のタッグも面白いと思います。
ー稽古も含めて、楽しみにしていることや、期待していることをお聞かせください。
ご一緒するキャストの方々も、スタッフさんも、新しい環境で、また違う方々と接することになると思うので、そこがシンプルに楽しみです。稽古のやり方、進み方も楽しみですね。
ーそこに向けて、何か準備をされているんですか？
とにかく今は自分のスキルを上げるしかないですね。
ーたくさんの初めましての人達のところに行くのは、得意分野ですか？
人見知りなので得意分野ではないです。ただ、宝塚で組替えを経験したときに思ったのは、新しい環境にいても意外と心と体は驚かなかったです。大変だどうしようー！！みたいにはならないです。
ースンっていう感じですか？
とりあえず全体を俯瞰してます。観察してます。
ーでも、脳の中は人見知りをしてるんですね？
脳だけでなく外側も静かに人見知りしてるんですけど（笑）、「私ってこういう人間なんですよ」って頑張ってコミュニケーションを取って自分からアピールするというよりは、存在として「私はこういう者です」と、やるべきことを淡々と、精一杯努める。組替えのときが、そんな感じでした。
ー宝塚ではない外のカンパニーは、ひとつの公演ごとに終わっていくじゃないですか。あまりにも人見知りしていると終わってしまうんじゃないかなと……。
大人ですし仕事なので、そんなことは起きません（笑）。
ー大丈夫ですか？
めちゃめちゃオープンマインドで付き合える方とは違うやり方だと思いますが、徐々に徐々にの開き方で。でも、皆様に興味があるので、知りたいなっていう気持ちで生きていれば、日々楽しそうです。
ー新しい出会いが楽しみですね！ 作品に向けて、読者の皆様にお伝えしたいことはありますか？
心を軽くして楽しみに劇場に来ていただければと思います。何度でも観られる作品だと思いますし、いろんな土地でも公演しますので、楽しんでいただければと思います。私も楽しみます。