Infoseek 楽天

和希そら オススメ宝塚作品3選:インタビュー後編

Rエンタメディア 2024年10月5日 10時0分

今年2月に、惜しまれつつ宝塚歌劇団を退団した和希そら。その実力を活かした今後の活躍に期待が高まる中、退団後初の出演作となるのがミュージカル『9 to 5』。明日海りお、平野綾、和希そらの3人の女性社員が、別所哲也が演じるハラスメント社長への復讐作戦を決行する痛快ミュージカル・コメディだ。2009年にブロードウェイで上演されるや大きな話題を集め、トニー賞、グラミー賞にノミネートされた。その後、2019年にはロンドンのウエストエンドでもヒットを記録。働く女性の仕事や恋愛の悩みを描いた、現代を生きるすべての女性に贈る傑作ミュージカルである。
インタビュー前編では、この作品に出演したいと思った理由や、役について、新たな歌の表現などについて話を聞いた。そして、後編ではRakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品から、おすすめ作品をセレクトしてもらい、それぞれのセレクト理由や思い出を語ってもらった。
(文&写真:岩村美佳)

※本インタビューは7月上旬に実施いたしました。


●おすすめ作品その1
タランテラ!(06年雪組・東京・千秋楽)


ーRakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品からセレクトして頂いた、おすすめ作品について伺わせてください。まずは『タランテラ!』について、セレクト理由をお聞かせください。

私のファンの方々にはまた言っていると思われるかもしれないですが、絶対に外せない大好きな『タランテラ!』。音楽学校に入る前、宝塚に憧れていたファン時代に観ていた作品で、朝海ひかるさんの退団公演のショー作品です。まず、荻田(浩一)先生の世界観が大好きで、ショーなんですが、1本通してストーリー性があるじゃないですか。あの世界観も大好きですし、その中でも好きな場面がたくさんあるんですが、皆さんの歌、踊り、表現力、全ての技術が本当に、レベルが高すぎて。

ー名作ですよね。

1本通して割とダークですよね。私は本当にダークな作品が好きなんですね(笑)。『タランテラ!』は実際に客席で観ていましたし、始まったところから本当に没頭して見てしまう感じで、最後にかけても本当にかっこいい素敵な場面、美しい場面がたくさんあるので、ぜひ観ていただきたいですね。(力を込めて)本当に好きです。

●おすすめ作品その2
金色の砂漠(’17年花組・東京・千秋楽)


ー次に選んでくださったのは『金色の砂漠』ですね。

明日海りおさんの主演作品ですね。現役時代に出した写真集の中で撮る扮装写真で、二つ扮装が選べるんですが、そのひとつを『金色の砂漠』にしたぐらい好きなんです。奴隷と王女様の、格差がある恋愛、たまらないです。

ーその設定がたまらないんですね。

なかなか苦しい作品じゃないですか。実際に客席で観て大号泣して、見終わって楽屋に戻るときに、客席を嗚咽しながら通ったくらい泣きました。

ーパレードを経てもまだ泣かれていたんですね?

デュエットダンスでも泣きました。一本物や後物のときの、フィナーレナンバーが本編(の役)を感じさせるところ、好きなんですよ。例えば本編中で結ばれなかったり、どちらかが亡くなっていたり、どちらも亡くなっていたり。そんな登場人物が、フィナーレのデュエットで、その後の関係性を打ち出してくれたり、
幸せそうにしてくれていると、本当に感動してしまいますね。
『金色の砂漠』は世界観も、それぞれの登場人物の関係性も好きで。ドラマがたくさんあって。これも重い作品ですね。

ー作品全てが好きで大号泣されたんですね。

そうですね。2人の関係性はもちろん、それぞれのカップルがいて、何かつらい選択をしていたり、男同士の友情などもありましたし、最高でしたね。

ー今回ご一緒する明日海さんの作品ですね。

そうなんですが、忖度でも何でもありません(笑)。本当に好きな作品なんです。

ー明日海さんに、その思いはお伝えになったんですか?

ビジュアル撮影のときに「扮装させて頂いたんです」とお話ししたら、「それ(フォトブックの扮装)に、『金色』を選ぶってなかなかコアだね」と。

ーなるほど。でもお伝えはできたんですね。

お伝えしてしまいました。

●おすすめ作品その3
蒼穹の昴(’22年雪組・東京・千秋楽)


ー最後は、『蒼穹の昴』を選んでくださいましたが、理由などお聞かせください。

初めての中国物の作品で、所作なども普段とは違いました。日本物とも洋物とも全然違って、しかもその時代のお辞儀の仕方とか、手を持っていく場所とか、いろんな所作があったんですが、実際に中国の方が来てくださって、色々なことを教えてくださいました。そういうこともすごく新鮮でしたし、自分が演じた役(順桂)としても、かなり重いものを抱えた人物だったんですが、過去には無い役どころで。口数は少ないですが、内にすごく熱いものを持っていて、信念がとても強く、人物像的に本当の意味でかっこいい男性でした。ひとりで任務を全うして、結果命を落としてしまう役だったんですが、演じていてとても楽しかったです。
作品としても、幕が開いてから、もっと観たいと言ってくださるお客様が多くて、すごくありがたかったですし、曲も素敵でしたし、それこそいろんな人間模様があって、観ていても楽しいのではないかなと思いますね。
フィナーレナンバーもすごく好きでした。羽山紀代美先生が大好きで、音楽学校に入る前から好きでした。とてもかわいがっていただいたのですが、お亡くなりになる前に、組としても、私としても、最後に振り付けしていただいた作品だったので、そういう意味でもすごく思い入れがあって、大好きな作品ですね。

ー男役のフィナーレナンバーのお衣装なども素敵でしたね。

扇子を持って踊るフィナーレナンバー、というのも珍しくて。好きでした。

ー私も『蒼穹の昴』が大好きで、観れば観るほど観たくなる作品でした。和希さんが銀橋で歌うシーンで、本舞台の景色が青空になっていて、多くを語らない役でしたが、彼の背景というか、滲み出てくる感じが印象的でした。今、彼に思うことなど何かありますか?

その銀橋で歌った曲「韃靼の秘歌」を、ディナーショーでも歌わせていただきました。あの曲には彼の思いと覚悟みたいなものがすごく詰まっているので、ディナーショーで歌うときは、その役で歌うときとはまたちょっと違う感覚ではあるんですが、やっぱりどこか1個、感覚としてずっしりしたものがあって。
お稽古中に曲が仕上がる前に歌詞をいただいて、どんな曲が来るんだろうと、その次の場面とかを思うと、勢いのある曲が来るのかなと思っていたらとても穏やかで。それが逆に彼の強さや、思いの強さをすごく表現しているなと。振り返っても彼には本当に重たいものが最初から最後まであって。心を軽く人と接している場面はほぼなくて、仲間内でちょっと砕けて喋っているところとかも、やっぱりどこかに何かを抱えている。すっごくわかりやすく言うと例えば「わ~!」ってディズニーに行っているみたいな感覚は絶対にないじゃないですか。生まれてから今まで生きてきた中で、そんなときが1回でもあったのかなって。
幼い頃からずっとそういうふうに教育されて、奥さんや子供がいても、完璧にそこから逃れることはなかっただろうから。でも彼にとっては、それが当たり前のこととして血に流れていたんだろうから、もしそうじゃない人生を送っていたら、彼はもっと幸せに笑っていられたのかなとか思ったりしますね。今振り返っても。

ーあのシーンで感じた空気が忘れられないですね。劇場全体が集中していて、張り詰めた空気があって、本舞台の空が印象的で、さらに広く見えて。ご覧になった皆さんも、おそらくハイライトのひとつとして覚えていらっしゃるんじゃないかなと思います。

自分としても歌っていて、思いの強さがすごかったので。だから歌い終わった後にいただく拍手に不思議な感覚がありました。もちろん自分としては思いも繋がっているし、次に阿片の場面が始まるから、思いとしてはもう次に繋がってはいるんですけど、そこですごく大きな拍手をいただいて、普通に気持ちいいなっていう気持ちとはまた違う感覚があったと思います。

ー色々なお話をありがとうございました。ぜひ皆さんに3作品をご覧いただければと思います。

ありがとうございました。ぜひご覧ください!

この記事の関連ニュース