俳優・古谷一行さんが主演を務めたテレビドラマ「火曜サスペンス劇場 盲人探偵・松永礼太郎」シリーズがRakuten TVにて配信された。同作は古谷さん演じる盲目の元刑事・松永礼太郎が、相棒の盲導犬・メリアと共に鋭い推理力と研ぎ澄まされた聴力で難事件を次々と解決に導くサスペンスドラマで、1993年から2001年まで「火曜サスペンス劇場」枠で放送された人気シリーズだ。2022年にこの世を去ってしまった名俳優・古谷一行さん。今回は彼のキャリアを振り返りながら、同シリーズの魅力を紹介する。
1944年生まれ、東京都出身の古谷さんは大学在学中に俳優座の養成所に入所し、役者としてのキャリアをスタートさせた。彼の生涯の代表作の一つといえば1970年代後半に放送された「横溝正史シリーズ」、1980年代前半から約20年にわたって放送された「名探偵 金田一耕助シリーズ」の金田一耕助役だろう。ボサボサの頭に袴をまとい、下駄履きで全力疾走する古谷さんが扮(ふん)する名探偵・金田一耕助はたちまち人気を博し、彼自身も一気に脚光を浴びた。ただ、実は演じるまで金田一耕助という探偵の存在を知らなかった、と後にインタビューなどで話している。
古谷さんは金田一や「盲人探偵・松永礼太郎」シリーズもそうだが、「混浴露天風呂連続殺人」(1982年〜2007年)シリーズや「松本清張スペシャル」(1985年ほか)シリーズなど、多くのサスペンスシリーズ作品の常連だった。彼が出演する作品が高視聴率を獲得することから“高視聴率俳優”としてもその名をはせていった。
一方で“金妻”こと「金曜日の妻たちへ」(1983年〜1985年)シリーズやドラマ『失楽園』(1997年)では、濃厚なラブシーンを演じる“色男”として、新たな一面も見せた。
近年では『虹』(1970年)以来、47年ぶりの“朝ドラ”出演となった連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年、NHK総合)に、有村架純が演じたヒロイン・谷田部みね子の祖父・茂として出演。寡黙でぶっきらぼうなところはあるが、家族を支える“優しいじいちゃん”として多くの視聴者に安心感を与えたことも記憶に新しい。
そんな古谷さんが長年出演してきた「盲人探偵・松永礼太郎」シリーズでは目が見えないというハンディキャップを背負いながらも、自身の鋭い聴覚を頼りに難事件を解決する元刑事役に扮している。なぜ盲目になってしまうのかは第1作『その足音』(1993年)で描かれており、とある事件の容疑者を追っていた松永は不運にも撃たれてしまい、崖から転落した際の大怪我が原因で失明してしまう。
盲導犬との訓練を終えた松永は、持ち前の推理力を生かし、親友であり捜査一課長の矢部(ケーシー高峰)に協力しながら、事件に立ち向かっていく。全シリーズ1話完結型の作品であり、起承転結がしっかりとした構成であっという間に視聴できてしまうのも本シリーズの魅力の一つ。
また、現場を訪れるどの刑事よりも粘り強い推理で事件を解決に導き、時には犯人から命を狙われてしまうような危険な目に遭いながらも、見事に犯人逮捕に導くという名探偵ぶりも堪能できる。
さらに毎回豪華なゲストが出演していることでも有名な本シリーズには、美保純、高橋克実、塚本高史などの俳優陣が出演しており、劇中で古谷さんとどんな掛け合いがあるのかにも注目してほしい。
秋の夜長に見る作品を探している人は、古谷さんの代表作の一つ「盲人探偵・松永礼太郎」シリーズで本格的な推理サスペンスに没頭してみては。
(文=suzuki)