今年7月に惜しまれつつ宝塚歌劇団を退団した月城かなとが、退団後初めてのコンサート「月城かなと1st Concert『de ja Vu』
」を開催する。インタビュー前編では、「コンサートで自身が変わっていく過程を楽しんでいただけたら」と考えたという月城が、退団から数カ月を経た今の思いや、コンサートに向けて準備していることなどを聞いた。
そして、後半では、表現者としての考え方や、どんな意識で月組を率いていたか、また、Rakuten TVで配信している宝塚歌劇団の作品から、おすすめ作品をセレクトしてもらい、それぞれのセレクト理由や思い出を語ってもらった。
(文・写真:岩村美佳)
ー今回のコンサートなど、役ではなく、ご自身として表現するときに、何か意識したいことや、目指すことなど伺えますか?
自分自身のまま舞台に立つということはないかもしれないですね。創り方として、明確に何かの役を演じているのではないですが、どんなものでも、曲ごとでもいいし、場面ごとでも、ここではこういうイメージを演じるとか、そういうイメージは持つようにしているので、素の自分のそのままを出すという意識はあまりないです。でも、結局そのときに自分が感じていることがその役に反映されるわけですから、オフの自分としてはいろんなことを吸収して、幅のある引き出しの多い人間になりたいとは常に思っています。
ーひとつ何かを纏うとか、表現するとかでしょうか?
それが曲なのか、セリフなのか、自分が歌う歌なのか、ひとつ表現したいというものを明確に持ってやるというのでしょうか。
ーその表現をしていくために、こんな人でありたいとか、考えていることはありますか?
常に引き出しは増やしていきたいですし、どんどんいろんな考え方ができるようになりたいと思っています。吸収することをやめてしまうと、どうしても自分が持っているものの中だけで選択したり、考えるようになってしまうんじゃないかと思うので、いろんなことに柔軟でいたいです。自分ではそういう風に考えないなと思ったとしても、じゃあなぜそう考えるんだろうと、自分でも考えてみたりすれば、いつか自分の身になる気がするので、そういうことをやめない人間でいたいなと思います。
ー意見が合わなかったり、知らなかったら、まず聞いてみるとか?
そうですね!知らなかったらすぐに調べる。わからなかったら聞く。聞けなかったら考えるとか。初対面の人にはなかなか聞けないですが、そんな発想もあるんだなと、何事にも興味を持ったら、その空気って多分相手の方も感じてくれると思うので、自分が知らないからといって、私はそういう考えをしないとかではなく、いろんな見方ができるような人間でいたいなと思います。
ー退団公演の東京公演初日前の囲み取材で「‟月組の月城かなと”ということを胸に置いて生きていく」とおっしゃった言葉が印象に残っています。月城さんが率いる月組ならではの艶やかさや、余白のある芝居に惹きつけられたのですが、その月組で過ごしてきた期間はどんなことを感じていましたか?
どういう見せ方をしたら、皆さんが喜んでくれるかなというのは常に考えていましたね。自分もそうですし、組としてどういう見せ方をして、どういうことに挑戦していくか、何を期待してくださっているのか、何に喜んでもらえるのか、というのは考えていました。それは作品によっても違うと思うので、ひとつ作品が来たときに、今回はみんなのこういう面を見せていけたらいいのではないかとか、私がそこをはっきりしていないと、みんながどうしたらいいかわからないだろうなと思っていたので、作品をやるごとにその公演の目標みたいなものを一番早く見つけて、みんなに提示してあげられるようになりたいなと思って過ごしていました。
ーそういうものが、きっと色として出るんですね。
作品によって求められていることや、見せたいことって違うじゃないですか。下級生のときには、自分の目の前のことに必死になって、それが見えなかったりするのですが、それはそれですごく必要で。だからこそ、私の立場でできることは、それをうまくまとめて、引っ張ってあげて、きちんと何か結果が出るようにしたいなとは思っていましたね。
ーお名前にも「月」という文字が入っていて、これからもずっと共にあると思いますが、「月」から今連想することとか、印象とか何かありますか?
綺麗な月を見るとすごく嬉しいですよね。「今日は初日だな」と思った時に、「月が綺麗でよかったな」など思います。
ーありがとうございます。
セレクト作品について
・星逢一夜(’15年雪組・東京・千秋楽)
・BADDY-悪党は月からやって来る-(’18年月組・宝塚)
・今夜、ロマンス劇場で(’22年月組・東京・千秋楽)
ーRakutenTVで配信している宝塚作品のおすすめ3作品を選んでいただきましたが、意外なセレクトでした。
もし、まだ宝塚作品を観たことがなくて、これから観てくださる方がいらしたらどうかなと思ったんです。
ーなるほど! プロモーション的に選んでくださったんですね?
そうです(笑)! 各部門に特化してみました。「お芝居」「ショー」「原作がある作品」です。もし、原作の映画をご覧になっていた方がいらっしゃったら、こんな作品もやるよと。そう思って選んでみました。
ーありがとうございます。宝塚をプロモーションするという新しい目線ですね。
ふふふ……(にっこり)。
ー実は単純に時期で選ばれたのかなと思いました。
ああ! なるほど! 確かにそうとも見えますね。ちゃっかり自分の主演作品も入れちゃいました。
ーむしろ皆さん喜んでくださるかと思います。それぞれのセレクト理由と、当時の思い出などを伺わせてください。
●おすすめ作品①
星逢一夜(’15年雪組・東京・千秋楽)
ー『星逢一夜』についてはいかがでしょうか。
もしかしたら、宝塚に対してお芝居のイメージってあまりないかもしれないですよね。宝塚といえば華やかな、例えば羽根やラインダンスなどのイメージがあるかもしれませんが、この作品はお芝居を緻密に作った思い出があります。作品に対してみんなが全力で向き合った、少しの抜けも許されない、その世界観に集中して入っていくように作ったので、この作品をやれたことが、多分出演していたみんなにとって、すごく思い出に残っているんです。忘れられない何かがそれぞれにあると思います。だから、ぜひご覧いただきたいなと。宝塚をご存知の方は観ていらっしゃるかとは思うのですが。
ー本当に名作ですよね。
大変でしたけれど。
ー大変だったんですね。舞台撮影をしながら嗚咽した記憶があります。
泣いたらお客様が冷めてしまうから、絶対に泣いちゃいけないみたいな、歯を食い縛りながらやっていた思い出があります。
ー実は、望海風斗さんも、咲妃みゆさんも、『星逢一夜』を選んでくださったんです。
命をかけてやっていらっしゃる真ん中の方の姿をずっと見ていた記憶もあるので、そういう意味でも忘れられないですね。
ー月城さんは、本公演では細川慶勝を演じて、主人公の天野晴興(紀之介)には反発する役をされていましたが、どんなことを思いながら演じていましたか?
複雑な話なので、説明するのが少し難しいのですが、主人公の晴興という人は、どこにも属せないんですよね。最初の蛍村でも「なんか違う、特別だ」と思われて、いざ徳川の方に行っても馴染めない、自分の居場所となるところがどこにもない人なんです。そういう空気感を作ることにすごく集中していた思い出があります。誰でも、どこにも自分の居場所がないんじゃないかとか、どこにも馴染めないとか、思ったことがあると思うのですが、そういう中でそれを見せずに、ひたすら耐える晴興の辛さみたいなものを感じていただけたらと思います。
ー新人公演では、その晴興を演じていらっしゃいましたね。
晴興をやったからこそ、細川としてどう居たら、一番疎外感を感じてもらえるか、どうしたら晴興という人が、周りからも違う風に見られるか、いろいろと考えながらやりましたね。
●おすすめ作品②
BADDY-悪党は月からやって来る-(’18年月組・宝塚)
ー2作品目は、『BADDY-悪党は月からやって来る-』を選んでくださいました。こちらはショーの名作かと思います。
宝塚を退団して、今は客観的に楽しみたい気持ちも強いのですが、多分何年か経ってから観ても面白いだろうなと思います。今、(宝塚から)離れてから観ても面白い作品で、ショーとしてとても面白い作品なので、初めて宝塚を観る方にもいいんじゃないかなと思います。
ーおすすめポイントなどはありますか?
ショーなのに、しっかりしたストーリーがあるのですが、ショーでお芝居のようなことをするのは、この頃の宝塚ではあまりなかったことなんです。それが当時の月組メンバーに合っていたんじゃないかなと思うので、宝塚はこんなこともやるんだという目線で観ていただけたらいいかなと思います。
●おすすめ作品②
今夜、ロマンス劇場で(’22年月組・東京・千秋楽)
ー3作品目の『今夜、ロマンス劇場で』は、月城さんのトップお披露目公演でもありましたが、おすすめポイントなどお聞かせください。
もし原作をご覧になっていて、舞台を観ていらっしゃらない方には、モノクロの世界という表現は、映像のイメージが強いと思うんです。それを舞台で、生で表現するのに、一体どうするんだろうと思われると思いますが、最後にカラーになるところが無理なくすごく綺麗に再現されていると思います。映像でしかできない作品なのではと思われるかもしれませんが、舞台版としてとても観やすくなっていると思うので、ぜひ映画との違いを観ていただきたいと思います。
●「月城かなと1st Concert『de ja Vu』」配信詳細
ライブ配信日時
11月30日(土) 配信開始:16:00 / 開演予定:16:30(アフタートークショー付き)
12月1日(日) 配信開始:12:00 / 開演予定:12:30(大千穐楽)
視聴チケット販売期間
11月9日(土)10:00〜各回開演30分後まで
視聴チケット販売価格
視聴チケット:各4,500円(税込、手数料別)
視聴チケット(公演プログラム郵送サービス付き):各7,000円(税込、手数料別)※送料別途必要
ヘアメイク:山本浩未
スタイリスト:青木千加子
イヤーカフ(左上)¥15,730、(左下)¥220,000、(右耳)¥94,600、バングル¥2,090,000、リング(人差し指)¥38,500、(中指)¥44,000/すべてジョージ ジェンセン(ジョージ ジェンセン ジャパン 0120-637-146)