中国時代劇ドラマ『瓔珞~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~』(2018年)でブレイクし、トップスターへの階段を駆け上がったシュー・カイ。同作をはじめ時代劇が続き、長身を生かした古装(昔の衣装)の着こなしの美しさでもファンを魅了してきた。そんなシュー・カイが出演する、現代を舞台にしたドラマ2作をピックアップ。
モデル出身のシュー・カイ。“国宝級”“神級”と称されるほどの凛々しく整った顔立ちと長身で抜群のスタイルは、頭髪をそりあげて一部残した部分を三つ編みにして後ろに垂らす辮髪(べんぱつ)といわれるヘアスタイルも、『招揺』(2018年)などファンタジーな古代の世界での風になびく衣装も、ぴったりと似合って、物語の世界観を盛り上げる。
●Falling Into Your Smile 君の笑顔にメロメロ
そんななか、まさに現代的なeスポーツの世界を舞台にしたドラマ『Falling Into Your Smile 君の笑顔にメロメロ』(2020年)で、シュー・カイはプロゲームチーム「ZGDX」のリーダーであるルー・シーチェンを演じる。チームメイトたちとの絆、友情、ライバルとの熱い戦いが展開しつつ、ZGDXに紅一点で入ったヒロインのトン・ヤウ(チェン・シャオ)とのラブロマンスが繰り広げられる。
序盤、シーチェンは毒舌で冷たく映る。とはいえ、頭脳明晰で男らしく、優しくて、御曹司の品の良さと、惚れてしまう要素はたっぷり。トン・ヤウも女性初のプロゲーマーとして世間の注目を集めるなかでの奮闘が描かれ、恋の本格進展は後半までお預け。けれども、それまでの惹かれ合いながらもぶつかったり、もどかしさに引き込まれたりしながら、タイトル通りにシーチェンが“メロメロ”になる姿はいっそうキュンキュンすることに。シュー・カイのツンデレ表現がうまい。
シュー・カイが演じていることもあってか、ヒロインがシーチェンのスマホ登録名を「足長怪物」にしていたのにはクスっとする。ゲーム中のシーンでは動きがほぼないので、PC画面を見つめる瞳や表情の演技が重要になるが、美しさに引き付けられるだけではない心情を伝える力量があるのが魅力的だ。
●マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則~
『マリアージュ・ブラン~嘘つき弁護士の愛の法則~』(2022年)では、トップスターの一人である『永遠の桃花~三生三世~』(2017年)などのヤン・ミーと共演。ヤン・ミーは大手法律事務所に所属する優秀な弁護士のチン・シーを、シュー・カイは有名大卒のエリートだったにもかかわらず、ある理由から現在は株取引で生計をたてて(両親からは無職とみなされている)実家暮らしのヤン・ホワを演じる。
契約結婚、偽装結婚は、たびたび中国ドラマのテーマとなっているが、本作では独身女性が敬遠される法律事務所に入るためにチン・シーがネットにあった写真で選んだイケメンのヤン・ホワを勝手に“夫”と偽っていたことに始まる。そんなことは露知らずなヤン・ホワが同じパーティー会場に現れ、慌てたチン・シーが周囲にバレないようにキスをするという出会い。弁護士なのにうそをついていることで不信感を持つヤン・ホワだったが、自身が結婚&就職をするように親から催促されていたことで、契約を結ぶことに。
これまで一途な愛や見守る愛を見せてきたシュー・カイが、今回は年下男子。ぶっきらぼうだけどペットのカメを大事にしているところは愛おしく、スマートさもあって頼りになる。バリキャリな女性をギャップ萌えでとろけさせる塩梅が絶妙だ。
また、中国は国土が広く、様々な方言があるため、テレビ放送では普通語というルールで、ドラマも吹き替えされていることがほとんど。しかし、本作のシュー・カイは、初めて本人の生声が使われているのもポイント。声で放つ演技を堪能することができる。
扮装なし、ナチュラルな現代男性でも際立つ存在感。恵まれたイケメンというだけでなく、かわいさを含有し、かっこよく見せるセンスに長けていて、それぞれの作品のキャラクターに合った丁寧な演技と共に目が離せなくなる俳優だ。
(文・神野栄子)