オリジナリティあふれる転生BLドラマ『MY STAND-IN〜身替わりの君〜』は、中国の大ヒットネット小説「職業替身」を映像化したタイBLドラマ。『Lovely Writer The Series』で絶大な人気を誇るUpことプーンパット・イアン=サマンと、王子様のような顔立ちの『Bake Me Please』のPoomことプーリパン・サップセーンサワットが演じた主人公カップルは、「タイ・デジタル・アワード2024」で人気カップル賞を受賞するなど大人気。海外での人気も高く、マカオ、ソウル、香港など、ファンミーティングのワールドツアーも行われている。
作品自体はとってもポジティブなニュースに包まれているが、物語は第1話から波乱の幕開けとなる。なんと主人公のジョー(Poom)が、スタントの撮影中に崖から転落してしまうのだ。このような状況に陥ったのには、複雑な事情があった。
ジョーはもともと人気俳優トンのスタントマンを務めていた。そのため、スクリーンに映るのは背中ばかり。密かに俳優業に憧れを持っていたようだがスタントの腕が良く、トンに気に入られていることもあり、顔出しデビューは難しい。そんなある日、撮影現場にトンの恋人の弟で財閥の御曹司のミン(Up)が現れ、彼との出会いがジョーの人生を大きく変えてしまう。
ミンはトンの代表作で見た彼の後ろ姿に一目惚れして以来、トンに片思いしているのだが、トンと姉が付き合うことになり、苦しい立場に置かれる。現実逃避のためアメリカに留学もしたが、気持ちは変わらない。どれだけ頑張っても叶わぬ思いを抱えているためか、性格はすっかり歪んでしまい、トンや家族以外には仏頂面で態度も横柄。だが、人のいいジョーはミンに優しく声を掛け、その結果、一夜を共に過ごすことになる。そうして二人の関係が始まるのだが、ミンはとにかく身勝手なのだ。独占欲が強く、ジョーが韓国でアイドルをしている後輩のソルと話すだけでおかんむり。ジョーが嫌がっているにも関わらず、レストランのトイレで強引にキスをするなど執着心をのぞかせる。
一方のジョーは、困惑しつつもそんなミンを受け入れる。事務所の社長など、いい人たちと出会ってきたからか、小さい頃に両親を亡くしたにも関わらず、真っ直ぐに優しく育ったジョー。彼はトンへの憧れを捨てきれないミンと、ジョーとミンの交際をよく思わないトンの板挟みとなる。そんなある日、ミンがジョーの背中を抱いてトンと呼んでしまったことから、二人の関係に亀裂が走る。
それと同時に、演技が上手いジョーに対して現在の優位性を保ちたいトンは妨害工作を企てる。そして、その共犯者はミンだった…。仕事だけでなく私生活でも“トンの代役を演じていた”ことに気付いた上に仕事も失ったジョーは、失意の末、やむなく違法撮影に参加し、事故に遭ってしまう。遺体は見つからないが状況から転落死は間違いないと思われていた。ところが、ジョーの魂は生き続けていた。ジョーは自分と同じ日に事故に遭い、しばらく意識不明だったモデルのジョーとして目覚める。そして何の因果か、新生ジョーも同じ事務所でスタントマンとなり、ミンと再会することになる。
そして、今度はミンにとって、前世のジョーの代わりとして生きていくことになるのだ。彼は代役ではなく、自分の人生を歩みたいと思っているだけなのに、それすらも許されないのか? 果たして“ジョーは彼自身の人生を掴めるのか?” というのが大きなテーマとなるが、ジョーとミン、トンのビジネス的三角関係、ジョーとミンとソルの恋愛的三角関係など、見どころ満載だ。
正直、新生ジョーに対するミンの態度は目に余るものがあり、かわいさに溢れる顔立ちのUpでなければ見ていられないキャラクター。第4話以降、“ソルの方が新生ジョーを幸せにできるのでは?” と思わせられるエピソードが続くが、そこから秀逸な展開を見せるので、乞うご期待。転生後もほとんどの場面を前世ジョー役のPoomが演じているので、最初は慣れないかもしれないが、それがより深い感情移入をいざない、結末へと導いていくのがお見事だ。
(文・及川静)