過去10年、47都道府県で最も多くのプロ野球選手を輩出しているのはどこか――。
本稿では、2009年から2018年までにドラフトで指名され、プロ入りを果たした全選手を対象に出身地別でランキング化した。
上位はどの都道府県か? いったいどんな傾向が見えてくるのか? そしてあなたの出身地は、いったい何人のプロ野球選手を生み出しているのだろうか? ぜひ予想しながら読み進めてほしい。
(文=花田雪、写真=Getty Images)
1位は圧倒的91人の大阪 断トツの人口を誇る東京は4位に過去10年間、ドラフトで指名されてプロ入りを果たした選手は995人(育成指名も含む)。そのすべてを対象に「出身地別」でランキングを作成すると、興味深いデータが導き出される。
1位に輝いたのは大阪の91人。平均すると毎年9人のプロ野球選手を球界に送り込んでいる「野球王国」だ。プロ野球選手の輩出数は、当たり前だが都道府県の人口とおおむね比例する。大阪府の人口は2019年6月現在で882万3069人。全国では東京都、神奈川県に次いで3位だ。ただ、神奈川県の64人(2位)、東京都の54人(4位)と比較しても過去10年、大阪のプロ野球選手輩出数は群を抜いている。
理由として考えられるのは、シンプルに「野球が盛んで、アマチュアのレベルが高い」ことが挙げられる。現在の高校野球界では大阪桐蔭が「王者」として君臨しているが、それ以外にも履正社、近大付、大体大浪商、東海大仰星などの強豪校がひしめく激戦区。2016年を最後に休部状態となっているが、1980年代以降の高校野球界を牽引し続けたPL学園もまた、大阪球界を代表する高校の一つだ。
高校のレベルと比例するように、小学校、中学校のレベルも非常に高い。そのため、中学までは大阪でプレーしながら高校からは他県の強豪校に進学し、その後プロ入りを果たしている選手も多い。代表的な選手としてはダルビッシュ有(シカゴ・カブス/大阪府羽曳野市出身で高校から宮城・東北高校)などが挙げられる。
2位の神奈川県も大阪府同様、高校野球が盛んなのが大きな理由といえる。過去10年のプロ入り選手だけを見ても、秋山翔吾(埼玉西武ライオンズ)、菅野智之(読売ジャイアンツ)、田中広輔(広島東洋カープ)、松井裕樹(東北楽天ゴールデンイーグルス)など、そうそうたるメンツがプロ入りを果たしている。
そんな中、人口は47都道府県で断トツ(1392万9286人)の東京都が54人で4位というのはやや意外な結果といえる。菊池涼介、鈴木誠也(広島)、秋吉亮(北海道日本ハムファイターズ)、山﨑康晃(横浜DeNAベイスターズ)、茂木栄五郎(楽天)といった主力レベルの選手も多いが、ドラフト時に「目玉」と呼ばれたような選手は佐々木千隼(千葉ロッテマリーンズ)、清宮幸太郎(日ハム)くらい。前述の大阪府、神奈川県同様、高校野球のレベルも高く、小中学校の野球部やクラブチームの数も全国的に見ればまだまだ多いが、ランキングではやや「劣勢」といったところか。
最下位の鳥取は2人 島根は44位タイながら……ただ、ランキング上位についていうと、そこまで大きな驚きはないというのが正直なところ。その上で、上位と対極的なランキング下位の都道府県にも目を向けてみたい。47都道府県での最下位は鳥取県。過去10年間でわずか2選手しかプロ入りを果たしていない。県の人口も全国最下位なのだから仕方ないともいえるが、アメリカ、ブラジル、台湾といった「海外出身」よりも少ないのはやはり寂しい結果といえる。ちなみに、プロ野球でも稀有な「現役の鳥取出身選手」は九里亜蓮(広島)と巽大介(巨人)。2019年7月時点での支配下登録選手は九里一人だ。
鳥取県と混同されがちな島根県も過去10年間でのプロ輩出数は4人(44位タイ)。しかし、実はそのメンツがすごい。白根尚貴(元DeNA)、東方伸友(元福岡ソフトバンクホークス)の2選手はすでに引退しているが、2014~2017年まで4年連続60試合以上登板を記録した福山博之(楽天)、プロ3年目ながら阪神タイガースの主将を務める糸原健斗と、4人中2人が「主力級」に成長。さらに、過去10年のくくりを外すと、メジャーリーグでもプレーした和田毅(ソフトバンク/2003年入団)、DeNAの主軸・梶谷隆幸(2007年入団)がいる。現役の島根県出身選手はこの4人のみで、その全員が所属球団でしっかりと結果を残しているのだ。
34位タイの岩手からは、球史に名を残すレベルの逸材が生まれているそして最後に、「プロ野球選手の出身地」というテーマにおいて決して避けては通れない県にも触れておきたい。それが、岩手県だ。過去10年間のプロ輩出数は9人(34位タイ)。人口も122万9432人で全国32位なので、決して特筆すべきランキングではない。ただ、肝心なのは「誰を輩出したか」だ。
岩手県は2009年の菊池雄星、2012年の大谷翔平と、この10年間でドラフト1位選手を2名輩出。さらに、この2人は共に現在、メジャーリーグでプレーしている。菊池は今季からシアトル・マリナーズに移籍して開幕ローテーションをつかみ、大谷は昨季、ロサンゼルス・エンゼルス移籍1年目から「二刀流」でメジャーを席巻した。
2人の共通点はそれだけではない。出身校は共に地元・岩手の花巻東。高校時代は菊池が最速155km、大谷は160kmを記録した「超高校級投手」として全国にその名を轟かせた。岩手は過去、甲子園優勝が一度もなく、全国的に見ても決して野球が盛んなイメージはない。にもかかわらず、これだけ短いスパンで「怪物」を生み出している。
そして今年もまた、岩手球界には佐々木朗希(大船渡)という菊地、大谷をしのぐほどの才能を秘めた怪物がいる。自身は出場を逃したセンバツ直後、4月6日に行われた侍ジャパンU18候補合宿では高校野球史上最速の163kmを記録(プロを含めても大谷の165kmに次ぐ日本人歴代2位)。「令和の怪物」は今、日本中の野球ファンの注目を一身に浴びている。
菊地、大谷と同様、岩手で生まれ育ち、中学卒業後も地元・岩手の高校に進学。順調にいけば今秋ドラフトでの1位指名、さらにいえば複数球団の競合も間違いなし、掛け値なしの「逸材」だ。
ドラフト1位レベルどころか、野球史に名を残すレベルの逸材をコンスタントに輩出し続ける岩手県。「岩手の特産物には、球速が上がる不思議な食べ物でもあるのか」と馬鹿な考えが頭をよぎるほど、説明不能な現象が岩手県に起きている。
全国の野球ファン、さらには日本プロ野球、もっといえばメジャー関係者が今、「岩手県の野球」に熱視線を注いでいる――。
本稿で紹介した出身地別ランキングでは「プロ輩出数」のみで順位づけをしているが、各都道府県が「誰を生み出したか」にまで注目すると、より楽しめるのではないだろうか。
<了>
[都道府県別 プロ野球選手出身地ランキング]
1位 大阪 91人
2位 神奈川 65人
3位 福岡 57人
4位 東京 54人
5位 兵庫 53人
6位 千葉 41人
7位 愛知 38人
8位 埼玉 36人
9位 沖縄 35人
10位 広島 32人
11位 北海道 30人
12位 静岡 27人
13位 京都 22人
14位 茨城 21人
14位 大分 21人
14位 岡山 21人
14位 群馬 21人
18位 三重 20人
19位 宮城 19人
20位 熊本 18人
20位 和歌山 18人
22位 佐賀 16人
22位 岐阜 16人
24位 鹿児島 15人
25位 新潟 14人
26位 石川 13人
26位 長崎 13人
26位 奈良 13人
26位 宮崎 13人
26位 滋賀 13人
31位 栃木 11人
32位 福井 10人
32位 山形 10人
34位 青森 9人
34位 岩手 9人
34位 徳島 9人
34位 福島 9人
38位 愛媛 8人
38位 山口 8人
40位 富山 7人
41位 秋田 6人
41位 香川 6人
41位 高知 6人
44位 島根 4人
44位 長野 4人
46位 山梨 3人
47位 鳥取 2人
(番外)
アメリカ 3人
ブラジル 3人
台湾 3人
タイ 1人
※2009~2018年実施のドラフトより集計