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箱根駅伝、台風の目は明治大だ!“高速化”の象徴、史上最速のレースへ注目選手は?

REAL SPORTS 2020年12月30日 19時42分

今回で97回目を迎える箱根駅伝。前回大会は10区間中7区間で新記録が生まれ、“高速化”の傾向が顕著に表れた。今シーズンに入ってからも全日本大学駅伝で8区間中4区間で新記録が生まれており、この流れはさらに加速している。今回の箱根は、変化と進化に最も適応した者が頂点に立つに違いない。それはいったいどこの大学になるだろうか――。

(文=花田雪)

“史上最速”の箱根駅伝から1年。「高速化」はさらに加速するか?

国内外問わず、近年の長距離界のトレンドが「高速化」なのは間違いない。

フルマラソンの世界では2019年10月12日にエリウド・キプチョゲ(ケニア)が参考記録ながら人類史上初の2時間切りを達成(1時間59分40秒)。

日本でも2018年2月25日の東京マラソンで設楽悠太が日本記録を16年ぶりに更新すると、その2年後、3月1日の東京マラソンでは大迫傑がその記録をさらに更新し、2時間5分29秒までタイムを縮めている。

もちろん学生長距離界最大のイベント、箱根駅伝にも「高速化」の波は押し寄せている。前回大会では往路優勝の青山学院大学から4位の東海大学までが往路記録を更新。復路でも東海大学が大会新記録。総合記録も優勝した青山学院大学と東海大学の2校が、新記録を達成している。個人記録に目を向けても、10区間中、7区間、計13人が区間記録を更新するなど、記録ラッシュの大会となった。

もちろん、箱根駅伝に出場した多くの選手が履いたナイキ社の厚底シューズ「ヴェイパーフライ」の効果もあっただろう。

ただ、箱根の高速化はそれ以前から傾向として表れており、ヴェイパーフライの登場はその流れに拍車をかけただけともとれる。

コロナ禍でイレギュラーな大会となる今回だが、おそらくこの流れは継続されるはずだ。

前回総合6位から8人が残った明治大学。最注目は…

そして今大会、「箱根の高速化」の象徴となるかもしれないのが、明治大学だ。

前回大会で総合6位に食い込み、5年ぶりのシード権を獲得した10選手のうち、8人が残る「経験」がまずは大きい。特に1~5区までは前回大会のメンバーがそのまま残っている。区間配置がどうなるかは分からないが、仮に前回と同様の配置でいくとなれば、前回大会からの上積みは大いに計算できる。

また、箱根での経験にとどまらず、今季の明治大学はその「選手層」でも充実の一途をたどっている。走力の目安でもある1万mのタイムを見ると、学生トップレベルの目安である28分台が実に14人(参加大学中、最多)。

個人で注目したいのが、前回に続いて山上りの5区を任されることが濃厚な鈴木聖人。往路のフィニッシュ区間である5区は、「花の2区」と並ぶ往路の最重要区間なだけに、前回、区間5位と好走を見せた鈴木の走りが、チームの命運を左右するかもしれない。

また、「箱根経験者」以外ではルーキーの児玉真輝にも注目だ。1万m 28分22秒27の記録はチーム3位。1年生ながら、調子次第では往路1区での起用も十分考えられる。

全日本大学駅伝で3位に躍進。箱根の目標は「優勝」へ上方修正

ここ数年、箱根駅伝の戦い方は「往路偏重」から「バランス型」へとシフトしつつある。往路でなるべくタイムを稼ぎ、復路で逃げ切るという形は箱根の王道パターンではあるが、ランナーのレベルアップや高速化に伴い、復路にもエース級を配置する大学が増えてきた。

もちろん、そのためには往路でも戦える「選手層」が不可欠になるが、今年の明治大学はこのトレンドに合致する。往路メンバーと遜色ない実力を持つメンバーで復路を戦うことも可能だろう。

明治大学は2020年11月1日に行われた大学3大駅伝の一つ、全日本大学駅伝では3位。シーズン前は箱根5位を目標に掲げていたチームだったが、この結果と記録会でのタイムを見て、目標を「優勝」へと上方修正した。

経験、個々のタイム、現在の勢いを考えると、明治大学が「高速レース」を制する可能性は決して低くない。

「絆大作戦」の青山学院大学は連覇なるか? スーパールーキーにも注目

また、選手層でいえば明治大学以上ともいえるのが青山学院大学だ。過去6年間で総合優勝5回、2位1回と、圧倒的な実績を誇る大学駅伝界の雄は、今年も優勝候補筆頭に挙げられる。1万m 28分台は10人、さらにハーフマラソン1時間3分以内の記録を持つ選手は実に8人。前回大会の優勝メンバーは5人残り、そこに全日本大学駅伝で5区の区間新記録を樹立したスーパールーキー・佐藤一世も加わった布陣はまさに鉄壁。

原晋監督は今大会、「絆大作戦」を掲げ、往路、復路、総合の完全優勝を堂々宣言している。

タイムだけを見れば明治大学とほぼ互角ではあるが、経験や箱根で毎年のように見せる「地力」では、青山学院大学のほうがやや上回るかもしれない。

前回総合2位の東海大学は、黄金世代6人が抜けたが…

明治大学、青山学院大学以外にも、全日本大学駅伝を制した駒澤大学、昨年7位の早稲田大学、予選会からの勝ち上がりながら箱根経験者も多い中央大学などが優勝・上位争いの中心と考えられているが、筆者が注目したいのが昨年総合2位の東海大学だ。

「黄金世代」と呼ばれた前4年生が抜け、今季は戦力低下もささやかれた。しかし、全日本大学駅伝では最後まで駒澤大学と優勝争いを演じての2位。前回の箱根2位メンバー6人が卒業したことでチーム内の競争が激化し、結果としてチーム力の底上げにつながった好例といえるだろう。

注目は、塩澤稀夕、名取燎太、西田壮志の4年生3本柱。3選手とも前回大会は箱根で往路を走っており、今大会も往路起用が濃厚だ。特に自身も1区を希望してる塩澤稀夕は1万m 28分8秒83の記録を持つ大学トップランナーの一人。

また、箱根未経験ながら急成長を遂げ、全日本大学駅伝で6区区間新記録の長田駿佑、1年生ながら同じく全日本大学駅伝で4区区間賞の石原翔太郎など、ここにきて選手層も厚みを増しつつある。

前回大会、優勝候補筆頭に挙げられながら、悔しい2位に終わった東海大学。チームをけん引した「黄金世代」の背中を見て成長した現4年生以下の選手たちが、先輩の雪辱を晴らす――。そんな光景が、今大会は見られるかもしれない。


コロナ禍のあおりを受け、今季の大学長距離界は3大駅伝の一つ、出雲駅伝が中止を余儀なくされた。全日本、そして箱根はなんとか開催されることになったとはいえ、史上初の無観客など、イレギュラーな形になる。

決戦まで、あとわずか。

願わくばスタートの号砲が鳴るその瞬間、さらにはゴールテープを切るその瞬間まで、210人全てのランナーが無事に走り切る姿を見たい。

<了>








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