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“ソノカム”園田・嘉村ペア、知られざるダブルス結成秘話“風呂場での誓い”。日本バドミントン男子初メダルへの道程

REAL SPORTS 2021年7月23日 12時0分

ついに開幕した東京五輪。“世界最速の戦い”ともいわれるバドミントンは、24日に予選リーグ初戦を迎える。男子ダブルスで頂点を競う実力を持ち、メダル獲得を狙う「ソノカム」こと、園田啓悟/嘉村健士ペアは果たしてどのような戦いを披露してくれるのか。躍進の期待を胸に、ダブルス結成秘話から現在までの道のりを振り返る。

(文=平野貴也、写真=Getty Images) 

初挑戦でメダル獲得を狙う「ソノカム」

もし、東京五輪をいい機会と捉えて初めてバドミントンを見てみようという方がいたら、このペアはぜひ見てほしい。瞬間最速493キロ(ギネス記録)というスピードを誇る競技の醍醐味(だいごみ)を存分に味わえる。「ソノカム」が愛称の男子ダブルス園田啓悟/嘉村健士ペアだ。

2人が得意とするのは、低空戦。ネットの白帯スレスレのところをシャトルが高速で行き交うラリーを展開する。球ではなく羽根を使うバドミントンは、前述のとおり初速がすごい。ただし、抵抗が大きいため、失速も早い。その落差を巧みに使うプレーは玄人好みだが、初見では少し分かりにくい。

競技の魅力の一端であるスピードの魅力を最も分かりやすく伝える種目が男子ダブルスで、特に「ソノカム」は世界でも屈指の低空ラリーを見せるペアだ。相手が打ち合いを避ければ、後衛に入る園田が豪快なジャンピングスマッシュを何発でも連続してたたき込む。ネット前では嘉村が待ち構え、押し込まれるラリーから逃げようとする相手の行く手を阻む。2018年の世界バドミントン選手権大会では、銀メダルを獲得。世界の頂点を争える実力を持ち、初のオリンピック挑戦でメダル獲得を狙う。

「俺はシングルスをやめてもいい、ダブルスをやろう」

2人がペアを組んだのは、八代東高時代だ。ともに1990年2月生まれの同級生。卒業後、園田はくまもと八代YKK APクラブ、嘉村は早稲田大へ進み、別々の道を歩んだ。

しかし、国民体育大会で熊本代表として再結成。その挑戦が2年目を迎えた2009年、国内最強ペアを打ち破る金星を挙げた。クラブではシングルス中心だった園田が「ダブルスでやっていけるのかなと思った」と手応えを得て、宿舎の風呂場で再結成を呼びかけたという。嘉村は「園田はもともとあまりしゃべるタイプではないので、自分(園田)の思いみたいなものを聞いたことがなかった。日本で一番強いペアに勝って興奮していたのか、『俺はシングルスをやめてもいい、ダブルスをやろう』という言葉をもらって。正直、どうした?というのが感想だったけど(笑)、その言葉が、自分たちソノカムのスタートだったと思う」と当時を振り返った。

以降、小柄ながらパワーのある後衛の園田と、スピードのある展開の中でも器用さを見せる前衛の嘉村という明確なスタイルのペアは、存在感を強めていった。園田が移籍したトナミ運輸に、嘉村が早大卒業後に加入。2013年に日本代表入りを果たした。2016年のリオデジャネイロ五輪は出場権獲得レースで結果を残せなかったが、世界選手権では2017年にベスト4、2018年に準優勝と頂点を狙えるまでに成長した。

戦術的な選択肢を増やしたプレースタイルの進化

プレースタイルも進化している。

世界のトップで戦うようになってからは、相手に低空戦を警戒され、避けられるようになった。嘉村は早い段階でプレースタイルのバリエーションを増やす必要性を感じていた。大きく高い球を上げて高速ラリーを避ける相手に、園田がスマッシュを打ち込むだけでは、崩しきれなかった時に消耗する。逆に、相手に攻めさせてレシーブから高速ラリーに持ち込む手段を考えていた。しかし、レシーブが苦手という園田はスタイルを変えなかった。

ところが、嘉村は「最近は、園田のほうが(プレーに幅を持たせることを)意識してプレーしている。今までのスマッシュだけから、ドロップ(強打のモーションから弱い球をネット前に落とす技)を交ぜて緩急を使っているし、レシーブでもドライブ(速い球)を返すだけでなく大きな(相手コート奥に高い球を返す)展開もしている。まさか、この段階で変わってきたかという戸惑いはあるけど、ゲームメイクの時に変化を生かせればプラス。ちょっとずつ、低空戦だけでないスタイルができていると感じる」と苦笑いを浮かべながら、戦術的な選択肢が増えてきている手応えを語った。

器用な嘉村と武骨な園田。話すバランスは「9対1」

「ソノカム」が面白いのは、コート上だけではない。

器用な嘉村に対し、園田は武骨なイメージ。取材対応時は特に対照的だ。口下手な園田に対し、日本代表の主将を務めたこともある嘉村は話し上手。必ず嘉村が先に話し、園田が似たような表現で続く。園田は促されなければ話さないこともあり、嘉村は話すバランスを「9対1」と笑う。しかし、コートでは、あうんの呼吸で一心同体。高速ラリーの中で抜群の連係を見せ、両者が同時に雄たけびを上げる姿が印象的だ。

嘉村が「初出場なので、コートに立ってみないと自分がどういう状況になるか分からないけど、立てることは楽しみにしているので、持ち味を存分に発揮して自分たちらしいプレーができればいい」と話すと、園田も「自国開催でなかなかこういう機会はない。自分たちらしくプレーして、持ち味の低空戦を見てもらえるように頑張っていきたい」と続いた。このペアを見て損はない。

<了>






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