スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。元プロ野球選手の五十嵐亮太とスポーツキャスターの秋山真凜がパーソナリティーを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。今回からWwbメディア「REAL SPORTS」の岩本義弘編集長が今一番気になるアスリートやスポーツ関係者にインタビューする新コーナー「岩本がキニナル」がスタート。第1回目のゲストには、サッカー元日本代表で、先日FリーグのYSCC横浜への入団が発表された松井大輔選手が登場。Fリーグ挑戦の経緯やフットサルの魅力、解説を務めたFIFAフットサルワールドカップ、そして今後のキャリアについてなど、“松井大輔の今”を語り尽くす。
(構成=篠幸彦)
楽しんでサッカーを終えるためにフットサルを選んだ岩本:まさかのフットサル転向、びっくりしました。まずはなぜフットサルを選択したのか、そこから聞かせてもらいたいと思います。実際、他にサッカーのクラブからオファーはありましたよね?
松井:そうですね。ベトナムリーグでやっていたんですけど、今年のリーグ戦が(新型コロナウイルスの影響でロックダウンしたため)中断・中止といろいろあって、次の開催が来年2月になったんです。それで今年のシーズンがプレーできなくなってしまいました。それに加えてJリーグの移籍期間が8月半ばまでということで、Jに復帰するのであればそれまでに選手登録をしなければいけない状況でした。
いろいろとオファーをいただいた中で、フットサルからオファーをいただいて、すごく面白いなと思ったんですよね。前からフットサルはかじってはいましたけど、今回本格的にやってみようと思いました。
岩本:サッカーファンはテレビ朝日「やべっちF.C.」のフットサル対決企画などを通して松井選手のフットサルへの対応力の高さだったり、見ていて楽しいプレーというのはサッカーの時と同様に感じていました。でもそれと実際にFリーグという舞台でプレーするのは、また全然違う話じゃないですか。
松井:Fリーガーの人たちとは、毎年やべっちF.C.で一緒にプレーさせてもらっていて、すごくうまいなと思っていました。でも慣れればいけるというか、面白いんじゃないかなと思いましたね。その中で「最後に自分が楽しんでサッカーを終えられればいい」という思いからフットサルを選びました。
フットボーラーとしてプレーしながら、セカンドキャリアも……岩本:サッカーのFIFAワールドカップを経験した選手がFリーグに入るのは初めてのことなので、Fリーグ界の盛り上がりは松井選手が感じている以上にすごいです。
松井:僕は全く感じていないんです(笑)。いつもどおりという感じですね。練習でも違和感というか、最初のほうはみんなに「場違いじゃない?」という感じの目をされていたんですけど、今はだんだんと慣れてきた気がしますね。
岩本:練習は朝すごく早い時間から始まると聞きました。
松井:朝4時半に起きて5時には家を出て、5時半に着いて6時から8時まで練習ですね。
岩本:それはチームのみんなが日中働いているからその時間しか集まれないということですよね?
松井:そうですね。皆さんはその後に仕事に行かれるので。
岩本:逆に早起きした後、松井選手は一日どう過ごしているのですか?
松井:僕はJリーグのほう(J3・YSCC横浜)でも練習させてもらったり、オファーがあればいろいろなところでコーチをやらせてもらったり、テレビにも出させてもらったり。いろんなことをやらせてもらっています。
岩本:確かに活動の幅はすごく広がってますね。
松井:広がりましたね。副業がOKなので、そこでいろいろできれば面白いなと思っています。
岩本:そういう意味ではボールを蹴るというフットボーラーとしての仕事をしながら、次のキャリアに向けた活動もできるわけですね。
松井:それが僕的には理想の形ではあったんです。フットボーラーでありながらもいろんな活動をしていく中で、子どもたちにサッカーを教えたいという夢というか、願望もあるので、そこもうまく準備できるかなと思います。またオンラインで指導者をするのも面白いんじゃないかなと思っています。
「やりやすいやつらが4人集まったのがフットサル」岩本:Fリーグという日本のトップリーグに入るにあたって、どんなプレーをしたいと思っていますか?
松井:まずはフットサルに慣れていきたいと思っています。その中で自分が子どもの頃に戻ったようなワクワク感を感じたいですね。フットサルはサッカーと違ってコートが小さいので熱いというか、すごく激しくて、面白いんですよね。それで一気にアドレナリンが出て興奮するというか、今までにない感覚でした。それがすごく楽しかったですね。
岩本:それを聞いてFリーグの公式戦デビューが楽しみで仕方ないです(編注:インタビュー後の10月8日、湘南ベルマーレ戦でFリーグデビューを飾った)。その前にまず練習を見に行きたいくらい、練習から充実している感じですね。
松井:練習はめちゃくちゃ楽しいですよ。一対一の局面とか、細かいプレーが多いし、何より浮き球がないから(サッカーに比べてより長い時間)ボールを足で触れますからね。それでみんなテクニックがあるので、そこで駆け引きがあるんですよ。そういうことを毎日練習でやっていて、サッカーとはまた違った刺激を受けています。
岩本:サッカーもフットサルもずっと取材していますが、今の話を聞いてこれは相当やれるようになるだろうなと感じました。
松井:やれるかどうかはわからないですけど、毎日練習に行くのが楽しいのは間違いないですね。
岩本:一緒にやる選手たちも楽しいですよね。だって、テレビで見ていたサッカーのワールドカップに出場していた松井大輔が同じコートにいるわけです。
松井:そう思われているかは聞いてないからわからないんですけど、僕はいつもと変わりなくボールと戯れている感じなので。みんなと一緒にフットサルができて僕はうれしいですね。
岩本:フットサルとサッカーで一番違う点はどこに感じていますか?
松井:足の裏をすごく使いますね。あとは取られたらもうカウンターなので、ボールを持っている時の緊迫感、緊張感はサッカーと違うところかもしれないですね。
岩本:あと当然、フィールドプレーヤーが4人しかいない中で、一人一人の守備の部分での責任感も強いですよね?
松井:コンビネーションというか、4人の連携というのはサッカーと全然違うかもしれないですね。「やりやすいやつらが4人集まったのがフットサル」みたいな感じです。
岩本:そこの組み合わせがすごく大事ということですね。
松井大輔が見たフットサルワールドカップ岩本:フットサルをプレーして難しさを感じるところはありますか?
松井:セットプレーはたくさんのパターンが決められていて、そこを完璧に覚えなければいけないところですね。今は全く覚えられていないです(苦笑)。
岩本:カズさん(三浦知良選手)が、Fリーグに参入した時もサインプレーを覚えるのに苦戦していましたね。フットサルワールドカップ本番でも覚えられていなくて、カズさんが入った時はカズさんが覚えているサインプレーしか使えないと言っていました(笑)。
松井:この前カズさんと電話で話した時もサインプレーは20個くらいあったらしいんですけど、「1、2個しか覚えられなかった」と言っていました(笑)。
岩本:カズさんとは(YSCC横浜に加入する際に)事前に話したりしました?
松井:移籍する前の7月に「どうですかね?」みたいな話はしました。その時は「フットサル面白いんじゃない?」とか、移籍が決まった後に電話した時も「でも、フットサルやった後、またJに戻ってくればいいじゃん」とか、そういう軽いノリでしたけどね(笑)。
岩本:カズさんほどではないですが、松井選手もそういったキャラクターになってきていると思います。「面白いと思えることをやったらいいじゃん」という立ち位置でぜひ。
松井:でも本当に面白いと思いますよ。フットサルにはボーッとする瞬間がないので、いつまでも攻防戦というか、目が離せないですよね。フットサル日本代表のワールドカップの試合を見た時も、夜中にやっていたので絶対に眠くなると思っていたんですけど、全然眠くならずに見入っていましたね。
岩本:いや、解説の仕事で観てたわけですよね? そこは普通に眠くならないでください!(笑) でも、今回日本がスペインやブラジルなど、世界のトップレベルを相手に善戦しました。
松井:スペイン戦(2−4)は本当に対等にやっていましたね。前半は勝っていたので、勝てるんじゃないのかなとも思っていました。ただ、やっぱり最終的に力負けというか、スペインの強さが出たかなと思いました。でもみんな本当にうまかったですね。あれをサッカーに取り入れることができれば、面白いなとも思いました。
岩本:実際、ブラジルやスペインはフットサルも強くて、とくにブラジルのサッカー選手はみんな子どもの頃からフットサルをやっています。日本でもそうやってフットサルをサッカーにも生かせる可能性はありますか?
松井:(ペップ・)グアルディオラもそうですし、いろいろな監督や選手たちがフットサルからヒントを得たりしていますよね。フットサル上がりのサッカー選手もいますし、サッカーのほうにうまくフットサルの経験を伝えられるんじゃないかなと思っています。
「カズさんの背中を見ていると、やらないといけない」岩本:将来的にFリーグとJリーグの両方の選手をやるということもありますか?
松井:どうなんでしょうね。具体的にオファーがあればやりたいなとは思います。本当は今年で(現役を)やめようと思っていました。やめるというか、ベトナムに行ったということは、ベトナムで選手生活を終えようと、それくらいの気持ちで行っていました。でもこういう形で(また日本に帰ってプレーすることになって)人生何があるかわからない。逆に自分の幅が広がるようになりましたし、ありがたいなと思っています。
岩本:最初に松井選手にインタビューさせてもらったのが、松井選手がル・マンでプレーした25歳くらいでしたけど、まさかあそこから15年たってまだ現役を続けているとは思わなかったです。
松井:僕も31、32歳くらいでやめると思っていたので、まさかこんなに続けるとは思ってなかったですね。やっぱりカズさんの背中を見ていると、やらないといけないというか、引っ張られるところがありますね。「求められているなら頑張ります」という感じですね。
岩本:まずは50歳を目指してやってもらいたいです。
松井:それは絶対無理ですね(笑)。
岩本:カズさんのすごさを一緒にやっていた選手たちにはより声を大にして伝えてほしいですね。
松井:誰よりも情熱とか、サッカーが好きという気持ちが伝わってきますからね。
岩本:松井選手もカズさんのグアムキャンプに何度も参加していますし、僕も何度もグアムキャンプを密着取材させてもらっていますが、とてもハードなメニューをこなしていて、本当にすごいなと。
松井:毎日がストイックですから。他の人が想像しているよりもはるかに練習していますし、考えられないですね。
五十嵐「僕がもしFリーガーでいきなり松井選手が来たら引きます(笑)」
岩本:五十嵐さんから松井選手に聞いてみたいことはありますか?
五十嵐:僕がもしFリーガーでいきなりサッカーの松井選手が来たら引きますよ(笑)。大丈夫ですか?「うわ、松井が来た!」とか引かれてないですか?
松井:最初の距離感はだいぶ遠かったですね(笑)。
五十嵐:だってフットサルは若い選手が多いですよね?
松井:そうですね。20歳くらいで「僕、大学生です」みたいな選手とかいますよ。
五十嵐:若い選手からしたらプレッシャーですよね。「松井さんの足を引っ張らないように」とか、いい緊張感をもたらしているのかなと。
松井:いえ、僕が逆にフットサル素人なので、「下っ端です!」という感じでいってます。
五十嵐:それはそれで若い子は余計に困ると思いますよ(笑)。
松井:でもわからないことは知ったかぶりするより、聞いたほうがいいんですよ。「これはどうやるの?」と毎日聞いています。
五十嵐:元JリーガーがFリーグに行って「どうやるの?」と毎日聞くことがあるということは、やっぱりサッカーとフットサルが全く違う種類のフットボールということですよね。
松井:守り方とかも特殊だったりするんですよ。あと5ファール(編注:チームとして6つ目のファウル以降、10mマークから直接FKが与えられる)とか、まずはルールから覚えなければいけないことがたくさんあります。
五十嵐:フットサルのほうが、サッカーよりも戦略としては細かいような気がします。
松井:細かいですね。でも最終的には技術だったり、アイデアというのは点を取るためには大事なので、そこはみんなと一緒に考えたりできるかなと思います。
<了>
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パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜
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