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広島・森下暢仁、“勝てない時期”に試行錯誤して手に入れた新たな武器「思ったより手応えが良かった」

REAL SPORTS 2021年12月18日 9時40分

スポーツ界・アスリートのリアルな声を届けるラジオ番組「REAL SPORTS」。元プロ野球選手の五十嵐亮太とスポーツキャスターの秋山真凜がパーソナリティーを務め、ゲストのリアルな声を深堀りしていく。今回はWebメディア「REAL SPORTS」の岩本義弘編集長が今一番気になるアスリートやスポーツ関係者にインタビューする「岩本がキニナル」のゲストに、広島東洋カープの森下暢仁が登場した。新人王を獲得した昨年と比べ、チーム状況も相まって苦しんだプロ2年目。苦悩の1年をどう乗り切ったのか、そのリアルに迫る。

(構成=篠幸彦、写真=Getty Images)

勝てない時期だからこそ、野球に向かう姿勢が大事

岩本:森下選手は昨年新人王を獲得されました。今シーズンは2年目ということで、難しさもあったと思います。振り返るとどんなシーズンでした?

森下:今年は昨年より試合数が増えた中で、思うように自分のピッチングができないことが多かったですね。来年はそこを引っ張らず、切り替えていきたいと思っています。

岩本:五十嵐さんは今シーズンの森下選手をどう見ていましたか?

五十嵐:確かに苦しい時期もありましたが、そこをどうにか粘ったシーズンだったと思います。中盤で体力的に疲れてきたり、対策されてきた中で心境の変化などはありました?

森下:勝てない時期の行動だったり、野球に向かう姿勢だったり、そういう時期だからこそちゃんとしなければいけないと思いました。苦しい時期はバッターに対して自分が投げたいところに投げられないこともあって、でもそこを考えながら取り組めたのは良い経験だったと思います。

岩本:ご自身では納得されていないと思いますが、クオリティ・スタート(QS/先発投手が6イニングを投げて自責点を3点以内に抑えた場合に記録される評価項目)はかなりの試合数を続けていました(24登板中19試合でQSを記録、QS率はリーグ2位の79.2%)。正直、見ている側は打線の援護がなかったと思うところもありましたが、そこに対してはどう捉えていました?

森下:クオリティ・スタートをしていても先制点を取ってもらった試合で逆転されたり、勝ち切れない試合があったり、なんとか点を取ってほしいと思う試合もありました。自分がどうこうできるわけではない試合も多かったので、そこは気にせず、自分の投球に集中しようと思っていました。

苦しい時だからこそ試せた“新しい球種”

五十嵐:チーム状況があまり良くないというのは、メンタル的には苦しかったですか?

森下:勝ちたいという気持ちで投げている中で勝ちが続かない時は、しんどさが倍増していきましたね。

岩本:そこを切り替えるためにやったことなどはありましたか?

森下:グローブを換えてみたり、ウォーミングアップを長くしてみたり、いつもとは違うことを取り入れてみたことはありました。

五十嵐:僕もそういうことやりましたね。グローブの変更はけっこうフォームに影響するので、そこで新たな発見があったりします。フォームの修正などはしていたと思いますが、技術的なところでは他にどんな変化がありました?

森下:カーブとチェンジアップがダメな時は試合をつくるのが難しくなりました。そこでキャンプの段階で練習していたツーシーム系を試すということはありました。

五十嵐:実際に使ってみてどうでした?

森下:思ったより手応えが良くて、今後も使っていけるんじゃないかと思いました。

五十嵐:そういう苦しい時期があったからこそ、新しい球種を試すことができたんだと思います。

岩本:来シーズンのために、森下選手自身はどんな成長が必要だと思いますか?

森下:まずは先制点を取ってもらった試合は、その点差を粘って守り切ることが必要だと思います。それから良いピッチャーと対戦する時は勝ち切れるようにすること、そしてケガなくシーズンを終えることが大事だと思います。

勝利投手となった東京五輪決勝・アメリカ戦

岩本:東京五輪の決勝・アメリカ戦で5回3安打無失点、勝利投手となった時の感想を含めて、改めて振り返っていただけますか?

森下:なかなか経験できる舞台ではなかったですね。ただ、外国人相手に自分の球が通用するかという不安はありました。1回、1回を必死に投げていて、あっという間に終わってしまった感覚でしたね。

五十嵐:あのプレッシャーのかかる舞台で、あれだけのピッチングができて素晴らしいなと思いました。森下選手はボールの違いに違和感は覚えなかったですか?

森下:ボールは思ったよりなじみました。

五十嵐:普段のシーズンと変わらない投球ができたということなんですね。

岩本:決勝前から相当な緊張感がありました?

森下:前日に練習があって、稲葉(篤紀)監督に「決勝で先発できるのは一人しかいないんだから」と言ってもらった時は緊張感が増しましたね。でもそういう舞台で投げるんだから腹をくくってしっかりやろうと。すごく緊張感はありましたけど、それ以上に決勝のマウンドで結果を残したいという気持ちがありました。

五十嵐:普段ブルペンで顔を合わせない日本代表選手たちに囲まれて、これまでと違う環境の中でのプレーは楽しめました?

森下:自分が普段テレビで見てきた選手たちが周りにいるというのは、なんか変な感じがしました。でもその中で一緒にプレーできたことがうれしくて、自分もそんな選手になれたらと思えた時間でしたね。

岩本:そういう選手たちとプレーすることで得たものはありますか?

森下:一番印象に残っているのは、千賀滉大選手に「若いうちはどんどん勢いで投げていけるけど、年を取れば思ったように体が動かなくなってくるから若いうちにトレーニングやケアはしっかりやっておけ」と言われたことですね。今のうちから気をつけていきたいと思っています。

岩本:2年目の若い選手でありながら、そのアドバイスが一番響いたというのがすごいですよね。

五十嵐:やっぱり千賀選手に言われたという影響力は大きいですよね。

メジャーはもしチャンスが来たら挑戦してみたい

岩本:森下選手はバッティングセンスがすごく評判で、高校時代までは投手兼野手で二刀流をやっていたんですよね。大谷翔平選手の活躍で二刀流が今すごく注目されていますが、そこにチャレンジしたいという思いはありますか?

森下:ないですね。

五十嵐:ないですよね(笑)。でもセ・リーグは投手も打席に立ちますが、バッターはやっていて楽しいですか?

森下:高校、大学の頃はバッティング練習を毎日やっていたので楽しさはあったんですけど、プロになると球の質が全然違うので痛いんですよね(笑)。

五十嵐:セ・リーグだと打つことより、バントをしっかりやるという雰囲気がありますよね。

森下:そうですね。バントでしっかり進塁させることを考えることが多いです。

五十嵐:バントが成功するとチームの雰囲気もガラッと変わるので、大事なプレーですよね。

岩本:大谷選手がメジャーでMVPに選ばれましたけど、同じプロ選手として彼の活躍はどう感じていますか?

森下:ちょっと次元が違いますね。あそこまでやれると野球が本当に楽しいだろうなと思います。でもあれほどストイックに野球をやれるのもすごいと思いますね。

岩本:大谷選手もそうですが、黒田博樹さんや前田健太選手など、カープの先輩もメジャーに挑戦して結果を出しています。森下選手も将来的にはメジャーへの思いはありますか?

森下:そうやって評価される選手になりたいと思っていますし、もしそういうチャンスがあるなら挑戦してみたいという思いはあります。

岩本:東京五輪という舞台で投げたことで、その思いがより強くなるということはありました?

森下:まずはカープでしっかりと結果を残したいという気持ちが強くあります。結果を残した上で、もしチャンスが来たら挑戦してみたいですね。

満員の応援歌をまだ聞いたことがない

岩本:コロナ禍ではありますけど、マツダスタジアムにようやく熱狂が戻り始めてきました。あの雰囲気で投げるのはやっぱり違うものですか?

森下:でも本当の満員のスタジアムの中で投げるのは全然違うと先輩方から聞いているので、満員になった時のことが楽しみですね。

五十嵐:2年目だからまだ(コロナ禍の影響で)満員の中で投げた経験がないわけですね。

岩本:コロナが収束して、来シーズンは満員のマツダスタジアムで投げられたらいいですね。

五十嵐:ホームではすごく勇気づけられるし、ビジターはめちゃくちゃ嫌でしたね。

森下:応援歌もまだ聞いたことがないので、すごく楽しみなんですよ。

岩本:今シーズンも声出しは禁止だったので、そうなりますよね。

五十嵐:カープファンの応援は本当にすごいので、来年もし解禁されたら間違いなく良い成績を残せると思います。今年はオフが短いですが、1年目と疲労感は違いますか?

森下:1年目は何も考えずにその日を必死に過ごしていました。それと比べるとシーズンを通した疲労は違いましたし、休んだ後に体を動かすと固まっていた感覚がありました。

五十嵐:今シーズンが終わって、すぐに来シーズンの準備に入らなくてはいけないから調整も難しいと思います。そういった中でもちゃんと休んで準備をして、来シーズンも素晴らしい活躍を期待しています。

<了>






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InterFM897ラジオ番組「REAL SPORTS」(毎週土曜 AM9:00~10:00)
パーソナリティー:五十嵐亮太、秋山真凜

2019年にスタートしたWebメディア「REAL SPORTS」がInterFMとタッグを組み、ラジオ番組をスタート。
Webメディアと同様にスポーツ界やアスリートのリアルを発信することをコンセプトとし、ラジオならではのより生身の温度を感じられる“声”によってさらなるリアルをリスナーへ届ける。
放送から1週間は、radikoにアーカイブされるため、タイムフリー機能を使ってスマホやPCからも聴取可能だ。
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