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「必ずやらなくてはいけない失敗だった」。橋岡優輝、世界陸上10位で入賞ならずも冷静に分析する理由

REAL SPORTS 2022年10月29日 10時30分

2019年世界陸上では日本勢初入賞の8位、昨夏の東京五輪では日本勢37年ぶり入賞の6位。次々と快挙を成し遂げ、さらなる飛躍を誓った走幅跳の橋岡優輝だったが、今夏オレゴンで開催された世界陸上では入賞を逃す10位に終わった。本人として「必ずやらなくてはいけない失敗だった」と分析するその理由とは――?

(インタビュー・構成=野口学、写真提供=株式会社UDN SPORTS)

「結果としては失敗に終わってしまったんですけど…」

――2019年世界陸上(ドーハ)は8位で日本勢初の同大会入賞、昨夏の東京五輪は6位で日本勢37年ぶりのオリンピック入賞を果たしました。橋岡選手は自身のこれまでの成長曲線をどのように見ていますか?

橋岡:それを考えると、2021年まではずっとかなり緩やかな成長をしていて、2022年に入ってまた緩やかになってしまったなという印象です。

――これまで次々と快挙を成し遂げてきたので、もっと急激な成長を感じているのかなと思っていたのですが、自身では“緩やか”という印象なんですね。

橋岡:大学2年生の2018年にダブルシザース(※踏み切り後に空中で左右の足を2回入れ替えるフォーム)に変わったんですが、2019年になってモノにでき始めたかなという手応えがあって、その手応えを持ったままもっといけるという感触はありつつも、そこまで出し切れずにくすぶりながら、という感覚です。でも緩やかにはずっと成長していると感じていて、今回の(8月オレゴン)世界陸上も結果としては10位だったんですが、それ以上の価値があったと感じています。

――“それ以上の価値”というのは?

橋岡:結果としては入賞もできませんでしたし、今回あんまり良くなかったんじゃないかと思われるかもしれませんが、大会へのアプローチの仕方だったりを少し変えていて。これまでは決勝に残ることを考えて予選に向けて調整してきたんですが、今年は決勝に向けて調整するような試合運びでやってきました。オレゴンでも予選に向けた調整はしていない中で8m18を出せましたし、自分では跳び過ぎたなと感じるぐらいうまく予選に入ることができました。決勝は2本ファウルしてしまいましたが、そこは経験値が足りなかっただけなのかなと。オレゴンでは実際にメダルを狙える記録も出せた(※)ので、手応えはすごく感じています。(※編集記:橋岡が予選で跳んだ8m18は、同大会決勝の銅メダルに相当する記録だった)

――今後メダルを狙うことを考えれば、決勝にピーキングを合わせるチャレンジはいつか必ずやらなければいけない。今それを試しているということですね。

橋岡:そうですね。結果としては失敗に終わってしまったんですけど、今後の成長、今後の目標に向けて必ずやらなければいけない挑戦だったので、具体的な課題や手応えをつかむことができましたし、来年はもっと面白くなると感じています。


「周りからは“よくやった”と言っていただいても、自分では全然満足できない」

――橋岡選手はドーハ世界陸上でも東京五輪でも、はたから見れば快挙といえる結果を残しながら、直後のインタビューで喜びや満足感というよりも反省や課題の言葉を口にすることが多いと感じます。

橋岡:やっぱり自分の中に確固たる目標と、実現できるだけの自信があるので、やっぱりそこまで達成できなかったときにはどうしても先に反省が出てきます。周りからすれば“よくやった”と言っていただけるかもしれないんですが、それでも自分では全然満足できない。現状に満足するということはありませんし、僕の中では純粋に競技を楽しむことを大事にしているのですが、楽しむ上で目指している目標を達成したいというのがやっぱりあるんだと思います。

――どういう考え方で目標設定をしているのですか?

橋岡:本当に細かく目標設定をしていて、階段を一段一段上がるように一つずつ目標を踏みしめていくように自分の課題をクリアするイメージです。将来ここでこうありたいという大きな目標に対して、今ここまでやっていかないと間に合わなくなるよねというところを最低限の目標に立てていく感じですね。

――パリ五輪まではあと2年となりましたが、現在の立ち位置は橋岡選手の目標ステップと比較していかがですか?

橋岡:本当に今自分が達成しないといけない最低限の階段にギリギリ手がかかっていうという感じですね。

――お話に出ていたピーキングも課題の一つだということですよね。他に現在取り組んでいる課題としてはどんなものがありますか?

橋岡:やはりまだまだ技術的に足りない部分が多過ぎるなと感じます。欲が出たときにパワー重視になり過ぎてしまって技術を出し切れなくなってしまうので。今年はけがもあったせいでまだうまく見つけ切れていないので、パワーと技術のどちらも底上げしていきながらちょうどマッチするところを探しているところです。

――先ほど経験値が足りなかったというお話もありましたが、どうやって埋めていこうと考えていますか?

橋岡:本当は今シーズンでその経験値を得たかったんですが、けがの影響もあって思うようにうまく経験値を稼げませんでした。来シーズンは結果を求めながらも一喜一憂しないで、泥臭くもっともっと海外遠征を増やしていって、来年の世界陸上(ブダペスト)でメダルに手が届く準備をできればと思います。


本取材は、橋岡が所属するスポーツマネジメント会社、UDN SPORTSが新たに始動したSDGsプロジェクト『地方からミライを』のトークセッション後(9月26日)に行った。

桃田賢斗(バドミントン)、楢﨑智亜、楢﨑明智(共にスポーツクライミング)、水沼宏太(サッカー)、大竹風美子(7人制ラグビー)らと共に本プロジェクトのアンバサダーを務める橋岡はトークセッションに参加。「関心の高いSDGsの17の目標は?」という質問に対して「住み続けられるまちづくりを」を挙げ、「運動ができるような場所が年々減ってきていると感じる」と語り、「スポーツ施設をSDGsの学びの場として、まちづくりの中でスポーツが生活の一部となれば、そこで暮らす人々の生活にも大きな影響を与えられるのかなと思う」と目標を掲げた。


後編では、“イケメンアスリート”として女性誌などで特集されることを率直にどのように感じているのか聞いた。


<了>







PROFILE
橋岡優輝(はしおか・ゆうき)
1999年1月23日生まれ、埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。中学で本格的に陸上競技を始め、高校で走幅跳に転向した。日本選手権5度優勝(2017~19,21,22)。2019年、アジア選手権優勝。世界選手権(ドーハ)8位で日本勢初の入賞を果たす。2021年、東京五輪6位で日本勢37年ぶりの入賞。2022年、世界選手権(オレゴン)で予選トップの8m18を記録。決勝は10位に終わるもののメダルを狙える位置にいることを示した。自己ベストは8m36(2021年6月日本選手権)。

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