佐賀県玄海町の脇山町長はいわゆる「核のごみ」の最終処分場選定に向けた第1段階となる「文献調査」を受け入れると表明しました。
町長は「最終処分場への関心につながって欲しい」と説明していますが、国のマップで大半が「好ましくない」とされてきた玄海町が約1か月で受け入れを決定したことに不安の声も上がっています。
非公開の全員協議会で表明
RKB野島裕輝記者「現在この奥にある町議会で非公開の全員協議会が開かれていてこの後、脇山町長が文献調査への判断を示すものと見られます」
玄海町議会で、10日午前非公開で開かれた全員協議会に出席した脇山町長。
原発から出る高レベル放射性廃棄物=いわゆる「核のごみ」の最終処分場選定の第1段階となる文献調査について「受け入れる」という考えを伝えました。
「受け入れ」の理由は?
玄海町議会は4月、「文献調査」への応募を求める請願を採択していて、今回、脇山町長は受け入れを決めた理由として「住民の代表が集う町議会の結果を重く受け止めた」と説明しました。
脇山伸太郎町長「原子力発電事業に長年携わり様々な形で国に貢献してきた立地自治体がさらに文献調査に協力することは非常に重い決断であります」
文献調査は、北海道の寿都町(すっつちょう)と神恵内村(かもえないむら)ですでに実施されていて、玄海町は全国で3か所目、原発の立地自治体としては初となります。
文献調査は、2年ほどかけて実施され、受け入れた自治体に最大で20億円が交付されます。
今回、脇山町長が文献調査の受け入れについて悩んだ理由の一つとして挙げていたのが、玄海町が最終処分場に適した場所なのかという問題です。
脇山伸太郎町長(5月7日)「玄海町の3分の1くらいが、そこに占められる、そうなると、住民さんが地下埋設場のうえに生活するような状況となる、もう少し広いところがあったらいいんじゃないかなって私は感じています」
科学的特性マップ玄海町はほぼ全域が「好ましくない地域」
原発で生じる高レベル放射性廃棄物を地下300メートルより深い場所に最終処分場を設けて埋める地層処分。
国は火山や地震、浸食などの影響を長期間受けないとする場所を地層処分に適した「科学的特性マップ」として公開しています。
そのマップで玄海町は、ほぼ全域が「好ましくない地域」に分類されています。
玄海町には石炭などの鉱物資源が埋まっていて将来掘削される可能性があるためです。
専門家が示す懸念「大きな問題がある」
原子力に関する調査研究を行うNPO法人の研究員は、埋蔵されている資源の問題から玄海町が「文献調査」を受け入れることに懸念を示します。
原子力資料情報室 高野聡研究員「石炭ですと以前にメタンガスの流出事故が何度も起きていましたし、炭鉱では崩落事故もあります。そのような安全性の懸念がある中でほとんどシルバー一色の玄海町での文献調査は非常に大きな問題があると思っています」
経産省「マップは大まかな形」
一方、経済産業省の担当者は玄海町はほとんどの場所が「好ましくない地域」とされていることについて「科学的特性マップが示すのは大まかなものだ」と説明していました。
経産省担当者「どういった特性があるかということを大まかなかたちとしてお示ししているわけでございます。逆に言いますと、その地域全域に鉱脈が走っていて、最終処分事業を行うことができない地域というわけではありません」
海域が対象になる可能性業業者に影響も
玄海町が受け入れを決めた文献調査は、すでに北海道の2つの自治体で進められています。
そこでは海岸線から15キロ程度以内の大陸棚も対象に含まれていました。
玄海町でも海域が対象になる可能性がありますが、専門家は懸念を示しています。
原子力資料情報室 高野聡研究員「海底の場合だと海底活断層の懸念もあると思います。地上の施設も海岸部になるとなれば、そこをなりわいとしている漁業関係者にとって大きな問題になると思っています」
漁業者の不安
玄海町周辺の漁業関係者は不安を訴えています。
近隣の漁業関係者
「難しい問題やね。反対ばっかりも言われんし先がどうなるか心配ではあるもんね」
「このままなし崩し的に決まって行くんじゃないかなと思いますね」
町長「議論を喚起する一石に」
今回、原発の立地自治体である玄海町が初めて文献調査を受け入れたことについて、脇山町長は「最終処分事業への関心につながって欲しい」と話します。
脇山伸太郎町長「玄海町での取り組みが日本社会にとって欠かせない。最終処分事業への関心が高まるのにつながり、国民的議論を喚起する一石となればとの思いであります」
佐賀県知事「受け入れる考えない」
文献調査の次に行われる概要調査に進むには、知事の同意が必要となります。
玄海町の文献調査の受け入れ表明に「佐賀県として新たな負担を受け入れる考えはありません」とコメントしています。
玄海町の受け入れ表明に経産大臣は
一方、玄海町に文献調査の実施を求めていた経済産業省の齋藤健大臣は…経済産業省齋藤健大臣「立地自治体においても文献調査に関心をもっていただくことはありがたいことだと考えています地域の声大事ですのでこれを踏まえながら国として文献調査の実施地域拡大を目指して引き続き全国で必要な情報提供にしっかり取り組んで行きたい」地層処分には数万年かかると言われている中、この1か月で十分に議論は尽くされ周辺自治体も含めた理解は深まっているのか?
受け入れた玄海町にも実施する国にも今後より丁寧な説明が求められます。