高齢者施設で洋服の移動販売を行う男性がいます。洋服を手にすると明るくなる高齢者の表情に、ニーズの広がりを感じています。
ブラウスなど400着 施設の会議室に
RKB本田奈也花アナウンサー「色とりどりの服が並んでいます。ブティックのようなこの場所、実は老人ホームなんです」
福岡県志免町の介護付有料老人ホーム「サンカルナ博多の森」で行われたのは洋服の移動販売。
ブラウスや下着など約400点が施設の会議室に並び、多くの入居者が買い物を楽しみました。
利用者「これは見たらつい買いたくなってね。素敵でしょ」「何を着ても似合うから」
利用者「良いですね。楽しみ。見るだけでもね。この次は何か良いのがあったらと思って」
利用者「移動で来てくれるのは助かります。外に出られないからね。それに今の流行りがわかるでしょ。お部屋で何もしないで退屈しているよりちょっと見せていただくだけでも視野が広がります」
「高齢者の表情明るくなる」
サンカルナ博多の森では、約90人の入居者のうち3割ほどが自由に外出ができない状況のため2か月に一度、洋服の販売会を開催しています。
西鉄ケアサービス運営管理担当 中川洋平さん「昔いろいろご自身で買い物をされてたときを思い出されるみたいで表情がすごく明るくなって普段とは違った表情を見せてくれます。」
卸売から移動販売の道へ
洋服の移動販売を行っているのは馬場一郎さん。
元々、洋服の卸売業者で働いていましたが、高齢者施設の入居者が思うように洋服を買いに行けないという声を聞き移動販売を始めました。
大坪産業・婦人服販売課 馬場一郎課長「入居者が洋服を選んで、自分が着て、自分が購入するっていうこの一連の行動で達成感が出て沈んだ顔がちょっと明るくなっていました。これはやらないといけないと思い継続してやらせていただいています。」
移動販売は5年前から始め、これまで約90の高齢者施設を訪れました。
当初は福岡県内だけで行っていましたが、施設側の評判も良く現在は熊本県や山口県など県外にも展開しています。
移動販売は週に6日行っていて、馬場さんは施設側からのニーズを聞き取り、毎回、商品を変更しているということです。
一度の販売で約400点の商品を準備するという馬場さん、どのようにして仕入れているのでしょうか?
大坪産業・婦人服販売課 馬場一郎課長「仕入先も含めて7~8社から協力いただいて、もう何万種類という中から週に1回もしくは10日に1回ピックアップしながら、施設にお伺いする前にきちんと品揃えをして提供しています。」
移動販売に賛同するメーカーも徐々に増えていて安い価格で商品を入荷しているということです。
円安で苦労も「続けたい」
一方、最近は円安などの影響で仕入れ価格が上がり、金額をあげざるを得なくなりました。
さらに、どこの施設へ行くにも移動は車のためガソリン価格の高騰が燃料費の増加につながっています。
ただ、利益が減ったとしても馬場さんはこの仕事を続けたいと話します。
大切にしているのは入居者との会話
販売会で馬場さんが最も大切にしていることが入居者との会話です。
大坪産業・婦人服販売課 馬場一郎課長「会話が日常的にほんの少しかもしれない。そういうところで私がお伺いして、会話の相手になればと思って、従事させてもらっています」
入居者「隔絶されてるじゃない、社会から。だからやっぱりこうして人に会えるのが魅力。おしゃべりなの。楽しいです。」
洋服の販売を通じて始まった交流。馬場さんは今後、全国の高齢者施設で移動販売を行うのが目標だということです。