江戸時代に「江戸前寿司」の流行とともに生まれた日本独自の調味料「赤酢」。日本酒を作る過程で出る「酒粕」を原料としています。
佐賀県では今、日本酒の製造過程で出る酒粕を有効活用しようと、「赤酢」プロジェクトが始まっています。
酒粕を有効活用 1年以上熟成させ赤酢の原料に
今年1月から販売が始まった「佐賀の赤酢」。一般的なお酢より色が濃く、赤みを帯びています。「佐賀の赤酢」プロジェクトは、日本酒の製造過程で出る酒粕を有効活用しようという思いから始まりました。
佐賀県赤酢プロジェクト実行委員会 本山智子さん「佐賀県といえば米どころであり酒どころということで、酒どころゆえに酒粕がどうしても出てきてしまうんですけれども、酒粕を有効活用して何かしたいなというところから始まっています」
光武酒造場 光武博之社長「ここらへんが赤酢用(の酒粕)です。メーカーによって違うが仕込み量の3割くらいは酒粕になるんじゃないかな」
「佐賀の赤酢」の原料は、日本酒醸造の過程で出る酒粕を、1年以上熟成したものです。酒粕を提供した酒蔵のひとつ、鹿島市にある創業336年の光武酒造場も今回のプロジェクトに期待を寄せています。
光武酒造場 光武博之社長「率直にいいプロジェクトだなと思いました。廃棄するか漬物に使うしか今までなかったのが赤酢にというのは非常にありがたい話。酒蔵の中で徐々に熟成させていくのが我々の役目」
熟成された酒粕は、赤酢の製造を手がける佐賀市の「サガ・ビネガー」に運ばれます。
サガ・ビネガー 右近諭志常務取締役「赤酢を詰めているところになります」
「佐賀の赤酢」は、酒粕を酢酸菌の力だけで発酵させる伝統的な方法で、さらに180日以上かけて丁寧につくられます。原料の酒粕は佐賀県内の5つの酒蔵が提供していますが、酒蔵ごとに、赤酢の香りや味が異なるため、それぞれ別の商品として売り出しています。
サガ・ビネガー 右近諭志常務取締役「それぞれの蔵によって酒粕の状態も違うので、熟成が進んでいるものもあればもう少し熟成が必要なものもあって、微調整しながら適切なタイミングで仕込んでいくので見極めが難しい。それぞれのメーカーのお酒の味わいが酢にも影響していて口に含んだ時の鼻に抜ける香り、味わい、深みにも影響している」
RKB 江越楓「こだわりの佐賀の赤酢、いただきます。とってもまろやかで酸味の中にしっかりとコクがあっておいしいです」
光武酒造場 光武博之社長「まずはそのまま飲んでもらう氷を入れてとか飲んでもらって、あとはどう料理に使っていただけるか、そこを楽しみにやってもらえればなと思いますし、われわれも料理店とレシピを今構築中です」
「佐賀の赤酢」全国コンテストでグランプリ受賞
5月、鹿島市の料亭では、「佐賀の赤酢」をつかった特別メニューが振る舞われました。
シャリに赤酢が使われた佐賀牛の寿司に…赤酢のポン酢が添えられた鯛の刺身、赤酢の餡がかけられた一品などが並びます。これまで赤酢に馴染みがない人が多かったものの、評判は上々です。
佐賀市から来た人「赤酢餡があまりにもおいしくて全部つけて食べて、それくらい赤酢を楽しませていただきました」
鹿島市から来た人「体にいいねと思ってぜひこれを今から飲んでみたいと思います」
割烹清川 成松悦子さん「ますますこの企画が大きくなって『佐賀に赤酢あり』という形になっていくことを期待しています」
今年2月、地域資源を生かした全国の商品が集まるコンテストの「調味料・ソース部門」でグランプリを受賞した「佐賀の赤酢」。今後も商品開発やPRに力を入れていきたい考えです。
光武酒造場光武博之社長「今後は2年熟成の酒粕、3年熟成、5年熟成の酒粕と積み上げていって、熟成の酒粕でつくった赤酢であったり、新しい酒粕でつくった赤酢、バリエーションも今からどんどん出てくると思います。それがまた楽しみ」