公立の小中学校で、水泳授業を民間に委託する動きが広がっています。
福岡県内では、古賀市がすべての公立小中学校で民間委託しているほか、福岡市などでも一部の学校で実施されています。子供たち、先生に双方にメリットがあるようです。
福岡市南区の西長住小学校です。午前8時半、子供たちがバスに乗り込んで向かったのは福岡市立城南市民プールです。
スイミングスクールのインストラクターが児童を指導
「おはようございます」
この日、城南市民プールでの水泳授業を受けるのは4年の2クラスおよそ50人です。
普段スイミングスクールに所属しているインストラクターが指導にあたります。
RKB本田奈也花アナウンサー「学校のプールに比べて場所が広々としています。そして、屋内ですので、きょう雨の予報なんですけど、その心配もありません。そしてさきほどから子供たちの元気な声が聞こえていますけど、グループごとに指導してもらえるところも1つメリットです。なにより楽しそうです」
福岡市では4小学校で民間委託
福岡市が水泳授業の民間委託を始めたのは2022年度。今年度から新たに加わった西長住小学校を含めて、4つの小学校でモデル事業として実施されています。
西長住小学校の水泳の授業が行われるのは、市民プールが休館日となっている毎週火曜日。
子供たちは、1日2時間の授業を5回、あわせて10時間、ここで水泳を学びます。
ノウハウ生かし子供たちの能力にあわせて指導
特徴の一つが、子供たちの能力に合わせた指導。レベルごとに4つのグループに分かれ、それぞれに2人のインストラクターがつくのです。
インストラクター「苦手な人で息をしてみてください」「肩までつかってあごをビート板に乗せてみましょう」
水泳授業を委託されたセントラルスポーツ山崎秀哉さん「私たちの強みは指導のノウハウ。長年培ったものがあるので、プロの指導をしっかりみなさんにお届けすることで上達が早くなると思っています」
授業を受けた4年生「スクールの担当の先生たちが詳しく教えてくれて水が全然怖くなかった」「潜るのが怖かった。でも潜るのを練習して、泳ぐ練習もできたから泳げるようになりました」「学校のプールは冷たくて、かぜをひきそうなくらい寒かったけど市民プールはいいにおいもして温かくて楽しかった」
ところで、西長住小学校にはプールが設置されていますが、なぜ授業を民間に委託する事になったのでしょうか?
民間委託の背景にプールの老朽化
西長住小学校のプールは設置されて今年51年目。設備の老朽化が進んでいます。
西長住小学校楠原貴己子校長「福岡市から(水泳授業委託の)話をもらったが、その前に学校から、『ろ過装置が古いことや床にヒビが入っているところをなんとか改修してください』とお願いをしていた」
福岡市教育委員会によると、プールの改修には1億円から2億円の費用がかかります。また、すぐに改修にとりかかることも出来ないため、今年度は民間委託することにしたということです。
西長住小学校に関する今年度の委託費用はおよそ440万円となっています。
民間委託で教員の負担軽減に
民間委託は教員にもメリットがあるといいます。
プールの水をきれいにする「ろ過装置」。水泳の授業が実施される期間中は毎朝授業前に、先生たちが当番制で動かしていました。
西長住小学校楠原貴己子校長「(ろ過装置を)動かさなくていいです。城南市民プールの方にすべてお世話になります」
学校でのプール授業にかかる手間が省けるほか、こんなことも。
4年生の担任「プール学習の後に、算数とか社会とか教えないといけない。ものすごく体力を使うので、すごく負担軽減になっています」「自分はスイミングの経験もまったくなかったので丁寧な指導が行われていることを感じています」
学校の近くに、委託できる民間業者があるかなど課題はあるものの、教員の負担軽減が求められる中、水泳授業の民間委託の動きはさらに進んでいきそうです。