Infoseek 楽天

機能を失った災害拠点病院 8億5000万円かけて水害対策 多額の費用負担など課題も

RKB毎日放送 2024年6月27日 18時24分

災害時に傷病者を受け入れる拠点となるのが、災害拠点病院です。

しかし、その災害拠点病院自体が被災してしまったら・・・。

福岡県では、記録的な大雨で機能の多くを失い、外来の受け入れを8日間停止した病院が、8億円以上をかけて防水壁や排水ポンプなどを整備しました。

国の補助は一部にとどまっており、今後、災害対策をどうしていくのが課題も露呈しています。

床上30センチまで浸水 医療機器が水没

福岡県久留米市田主丸町にある田主丸中央病院は、24時間365日、患者を受け入れる救急指定病院で、おととし、災害拠点病院に指定されました。

県内で指定されている33病院のうちのひとつです。

しかし去年7月の記録的な大雨では、耳納連山から流れてきた雨水がJR久大線の土手でせき止められて、病院の1階が床上30センチまで浸水。

1階にいた約50人の患者はスタッフが2階に避難させて無事でしたが、医療機器は水没し、使えなくなってしまいました。

院長「拠点病院の働きできず忸怩たる思い」

田主丸中央病院 鬼塚一郎 院長「予想を上回るような水量だったので太刀打ちできなかったCT、MRIをはじめとする高額医用機器がほとんど使えない。外来機能が8日間停止して、入院患者も300人弱いたが、周りの病院に受け入れてもらうとか200人まで減らさざるを得ませんでした。竹野地区で土砂災害が起こって、亡くなった方もいらっしゃったんですけど、自分のところの被害に対応するのが精一杯で、災害拠点病院たる働きができなかった。もどかしというか、忸怩たる思いでした。」

完全復旧までに5か月

のべ700人のボランティアの協力もあり、被災から8日後に外来診療の受け入れを再開できたものの、被災前のような医療提供体制に戻るまでには約5か月かかったということです。

コンクリート製の防水壁 赤外線カメラ

RKB 三浦良介記者「浸水対策として、病院の周りを取り囲むように高さ1.6メートルの防水壁が整備されました。去年7月の記録的大雨では、この色の違うブロックのあたりまで水につかったということです。」

今年3月からはじまった浸水対策工事。

病院の敷地約1万9300平方メートルを取り囲むように、630メートルにわたってコンクリート製の防水壁を整備し、外の浸水状況を確認するため、赤外線カメラも新たに設置しました。

さらに、敷地内にたまった雨水を排水できるよう、排水ポンプを30台整備しました。

田主丸中央病院 山本和雄 医療情報部長「去年の水害の時に、こちらの機械はほとんど水没して故障しました。ですから今年は2段かさ上げして、水害に遭わないようにしています。」

手術室に高さ50センチの止水板

また、高さ50センチの止水板を購入し、高額な医療機器がある手術室など院内15か所に設置できるようにしました。

田主丸中央病院 鬼塚一郎 院長「水害に負けない病院、強靱な病院」にして、地域の人たちを助けられる病院にしたい。」厚生労働省によると、よりますと、2018年の西日本豪雨では95の病院、2020年の九州豪雨では34の病院、そして去年7月の大雨では田主丸中央病院を含む9つの病院が浸水の被害を受け、外来診療を休止しました。

田主丸中央病院の場合、浸水対策工事にかかった費用は約、8億5000万円。費用の一部は国から補助が出ますが、病院側の負担は小さくありません。

病院が久留米市に要望した対策

また、田主丸中央病院のそばにはJR久大線が走っていて、この土手が山から流れてきた雨水をせき止めるため、この地区ではこれまでも浸水被害が起きていました。
そのため田主丸中央病院は去年4月、久留米市に対し、浸水対策として「JR久大線の軌道を横断する排水路を大きくしてほしい」と要望していましたがその3か月後に、記録的な大雨で浸水被害を受けました。

去年11月に病院は改めて久留米市長に要望書を提出。

久留米市は排水路の拡幅の設計費用として7800万円を補正予算案に計上し、25日の6月議会で予算案は可決しました。久留米市は2026年度の工事完了を目指し、JR九州と協議するとしています。

この記事の関連ニュース