元日に最大震度7を観測した能登半島地震から半年。
断水が続いたことで、被災地は深刻なトイレ不足に陥りました。
震災を体験した人が「盲点」だと訴える災害時のトイレ問題。問題の深刻さがようやく認識され、自治体だけでなく企業からもアクションがおきています。
トイレ不足は命にかかわる
元日に石川県などを襲った能登半島地震。
多くの人が避難生活を余儀なくされましたが、大きな問題となったのが「トイレ」でした。
被災地では水道管が破裂した影響で断水が発生。広い範囲で深刻な「トイレ不足」となったのです。
トイレ不足の問題は感染症だけでなく、水分補給を控えることでエコノミークラス症候群を引き起こすおそれがあり、命を落とすことにつながりかねません
「全部まき散らされた」排泄物の袋 パッカー車で破裂
避難者
「水が流れないとだんだんと排泄物が溢れてきてしまってそれもちょっと大変でした。」
避難者
「ごみを集めるパッカー車に排泄物の袋を入れたら破裂してしまって、全部そこにまき散らされて」
簡易トイレの備蓄 6倍に
能登半島地震を受け、自治体でも対策が進められています。
福岡市地域防災課 小川末男 課長
「この一帯が簡易トイレに関する付属品も含めたところの保管場所になっています」
福岡市は今年5月に防災計画を修正。
簡易トイレの備蓄を、これまでの6倍近くにのぼる300台以上に増やすことを決めました。
福岡市地域防災課 小川末男 課長
「中を見て頂きますとこういう形で便座と手すりのアームがセットになっています」
便座は1回ごとに袋を取り換えなくて済むように50回分をセットすることができます。
ボタンを押して1分半→排泄物を密閉
ボタンを押すと排泄物が入った袋を自動でラッピングします。
福岡市地域防災課 小川末男 課長
「この中でフィルムを下のほうに吊り下げて、中間部分で熱によってフィルムを圧着している状態になっています」
およそ1分半で密閉されたごみ袋が下から出てきました。
水がなくても処理できる
排泄物に触らずに処理できるだけでなく、水を使わないため断水した時にも使うことができます。
福岡市地域防災課 小川末男 課長
「生理現象としてトイレは必ずありますので、対策は必須だと思っています。発災後すぐ避難所で使えるように各校区に分散して配置する予定にしています」
家庭でも”トイレ”の備蓄を
一方、福岡市にある企業は、「日常生活の中に防災を取り入れてほしい」という思いからこんなグッズを開発しました。
ドリームホールディングス 藤村彩央里さん
「備える絵と書いて“備絵(そなえ)”と読みます」
一見すると普通のアートのようですが、フレームを外してみると・・・
ドリームホールディングス 藤村彩央里さん
「箱が2つ入っていまして、蓄便袋と用を足したあとに固める凝固剤。あとはお尻拭きにも使えるウエットティッシュが30回分入っています」
今回のプロジェクトには、桑田佳祐さんのCDジャケットのデザインを手掛けた人気アーティストなどが参加。
24種類のアート 中には・・・
様々な場所に飾れる、24種類のアートを用意しました。
販売価格は、3万3000円~4万4000円(税込)です。
ドリームホールディングス 藤村彩央里さん
「飾りたくなったり贈り物としても贈りたくなったりするように描いていただいています」
開発者は熊本地震で絶望
今回、プロジェクトリーダーを務めた藤村さん。開発の背景には、2016年に起きた熊本地震での被災経験がありました。
ドリームホールディングス 藤村彩央里さん
「汚物まみれになっているトイレを目の当たりにして、目だけではなく臭いもひどいですし、これからどうなっちゃうんだろうっていう不安や絶望を感じました」
地震で自宅の一部が損壊した藤村さん。
家族と避難生活を続ける中で大きな不安を感じたのが、トイレの問題でした。
簡易トイレ 備蓄している人は2割
しかし、藤村さんたちが去年11月に20代~60代の男女1000人を対象に実施した調査では災害時の簡易トイレを備蓄している人は全体の2割ほどにとどまりました。
ドリームホールディングス 藤村彩央里さん
「防災リュックを備えているから大丈夫と思う方も増えてはいると思うんですけど、意外と盲点になっているのがトイレ問題。どういう災害が起こるかわからないと思うのでそれぞれが自分事化して備える意識を持っていただきたい」
被災者だけでなく支援する側にも大きな影響を与えるトイレの問題。
能登半島地震を教訓にした備えの見直しが必要となっています。