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15年以上に及ぶ路上生活と売春 ”睡眠不足になるほど客をとった” 姉への強盗殺人罪に問われた妹(52) 収入はほぼ知人の女に送金と証言 ふたりの不可解な関係

RKB毎日放送 2024年7月17日 18時49分

知人の女と共謀して姉を殺害し通帳などを奪ったとして強盗殺人などの罪に問われているホームレスの妹、辻和美被告(52)。

16日の裁判で、子供を置いて失踪しホームレスになったきっかけを、「パチンコによる借金」だと語った。失踪前から逮捕されるまで約20年、睡眠不足になるほど続けた”売春”では、その収入の大半を知人の女に送金したと証言した。

知人の女と共謀し姉を殺害し通帳など奪ったとされる、辻和美被告(52)

起訴状などによると、辻和美被告(52)は去年6月2日、知人の岡村恵美被告(47)と共謀して、福岡県水巻町の町営住宅で姉の辻つぐみさん(当時52)の首を圧迫して殺害し、通帳3冊と印鑑を奪った強盗殺人などの罪に問われている。

これまでの裁判で、和美被告は、岡村恵美被告との共謀と姉の殺害を否認。単独で行った「強盗事件」だと主張した。

16日の公判では、証言台に立った和美被告に対し、事件当日の行動に加え、これまでの生活にも質問が集中した。

なぜ家族の前から失踪しホームレス生活になったのか

検察官 2002年頃借金をするようになりましたか
辻和美 被告 ーはい

検察官 何で借金を作りましたか
辻和美 被告 ーギャンブルです、パチンコです

検察官 大体いくらぐらいですか
辻和美 被告 ー200万円とか

法廷での証言によると、和美被告は、夫(当時)と2人の子供と福岡県水巻町の団地に暮らしていたころに、ストレス発散のためパチンコにはまった。夫(当時)は長距離トラックの運転手で、家に帰るのは月に1~2回。家庭のことや子育ての悩みから、子供を家に置いて毎日、閉店までパチンコに興じていたという。

辻和美 被告
「いろいろ家庭のことであったり子供のことであったり。ずっと旦那が近くにいるわけではないので子供には私しかいないので、なんかかんか、ちょっとした悩みぐらいはありました」

和美被告は、借金が返せる額ではなくなったことから、2008年に家を出てホームレス生活を始めたと話した。

実は、家を出る4年ほど前から和美被告は、勤務先で知り合った岡村被告に金を振り込むようになった。まだホームレスになる前の2004年から2008年までに、1400万円以上が送金されていた。

知人の女が用意した携帯電話で売春

弁護人 送金したお金はどうしたのですか?
辻和美 被告 ―売春です

弁護人 売春していたのは岡村被告に返すためですか
辻和美 被告 ―(借金を)返済するためです

和美被告は、岡村被告に出会い系サイトを教えてもらい、岡村被告が用意した携帯電話を使って客を探した、と話した。

売春で得る収入は1人あたり3000円から1万5000円。生活費を抜いて残りは岡村被告やその家族の口座に送金していた。

弁護人 売春の収入、1人あたり1回いくら?
辻和美 被告 ―まちまちというか・・・やるあれにもよります

弁護人 安い人は
辻和美 被告 ―3000円ぐらい

弁護人 高い人は
辻和美 被告 ―1万5000円

弁護人 売春で得た金は生活費に使っていましたか?
辻和美 被告 ―あまり

弁護人 1日いくらで生活していましたか
辻和美 被告 ―1000円~2000円ぐらい

弁護人 残りは?
辻和美 被告 ―送金していました

弁護人 送金していた口座は6つですか
辻和美 被告 ―はい

弁護人 岡村被告と2人の子供の口座?
辻和美 被告 ―はい

弁護人 どの口座にいくら送金するか、誰が決めていましたか
辻和美 被告 ―岡村被告に聞いて入金していました。

弁護人 理由は?
辻和美 被告 ―それは岡村被告じゃないと分かりません。

「逃げようとしたこともあった」が・・・

和美被告はその日の売り上げを、携帯電話を使って毎日、岡村被告に報告していたという。

弁護人 ―岡村被告に命じられていたから?
辻和美 被告 ―自分から

弁護人 「ホテルに入ります」「ホテルでました」という報告は?
辻和美 被告 ―していました

弁護人 どんな気持ちで暮らしていましたか
辻和美 被告 ―返すのに精一杯だったので、そこまで考えていなかったです

弁護人 家を借りる金は、岡村被告に送金しなければ、家を借りることもできたのではないですか
辻和美 被告 ―私の中では返すことが前提でしたので

そして、岡村被告から逃げようとしたこともあったと、話した。

弁護人 岡村被告から逃げたいと思ったことはありますか
辻和美 被告 ―何度かありました

弁護人 何度か実行しましたか
辻和美 被告 ―客の家に一緒に住んでいたり、何回かありました

弁護人 どのくらいの期間?
辻和美 被告 ―長くて半年、短くて2、3か月

弁護人 岡村被告との連絡を絶って客の家に逃げ込んでいた?
辻和美 被告 ―はい

弁護人 見つからずにはすまなかったのですか?
辻和美 被告 ―はい、何か月か人の家にいる時にふと(岡村被告が)目の前に現れるというか、「なんしよん」というのが何度かありました

思い出せないことはありますか? ―はい

約20年に及んだ体を売る生活は、過酷を極めていたようだ。

弁護人 岡村被告と和美は自由な意思で付き合いができていましたか?
辻和美 被告 ―いいえ

弁護人 逮捕されて1年以上経ちました。岡村被告に送金するようになって思い出せないことはありますか
辻和美 被告 ―はい

弁護人 なぜ?
辻和美 被告 ―分かりませんが、それだけ過酷だったのかと、嫌なことが多すぎたからかなと思います

弁護人 どこが過酷なんですか?
辻和美 被告 ―すみません、分からないです

弁護人 ホームレス続けることは過酷ですか
辻和美 被告 ―あまり深く考えないようにしていたので

弁護人 売春は、多い日は何人と?
辻和美 被告 ―覚えてないです

弁護人 売春をいっぱいして、寝られないことがありましたか
辻和美 被告 ―ありました、睡眠不足はあったと思います

弁護人 売春は自分からすすんでしていたわけではない?
辻和美 被告 ―はい、その気持ちすらも考えないようにしていましたので

食い違う被告ふたりの証言

和美被告は、岡村被告への送金は「借金返済のため」だと繰り返した。しかし、借金がいつからどのくらいあるのか、判然としない。

岡村被告は9日の証人尋問で、「総額で500万円の金を和美被告に貸していた。事件当日を除き返済されていない」と証言している。

一方、和美被告は「借金していた」と繰り返すものの金額については、「知りません」「現金をもらっていないから分かりません」「何万円単位で借りたことはない」などと述べた。

借りた額が分からないまま売春し返済していた、ということなのだろうか。

弁護人 岡村被告からしてもいない借金を”している”と思わされていたのではないですか
辻和美 被告 ―そこらへんは分かりません

もう一つ、ふたりの証言が食い違っているのは、和美被告が岡村被告に送金した金の行方だ。

岡村被告は、9日の公判で、こう述べている。

検察官 和美被告はあなたにお金を送っていましたか?
岡村恵美 被告 ―振り込みはありますが、そのお金は和美被告に渡していました

検察官なぜですか?
岡村恵美 被告 ―和美被告はホームレスでした、狙われるので一時的に(私の)口座に入れていました

岡村被告は、送金されたすべての金を和美被告に直接手渡ししていたと証言した。

一方、和美被告は。

(7月16日の公判)
弁護人 岡村被告は和美被告から送金された金を、預かっていただけ全部和美に返していると言っていましたが?
辻和美 被告 ―いいえ、もらっていません

二人の関係 「唯一の友人」→「債権者、債務者の関係」に

二人は、互いのことをどう思っていたのか。

検察によると取り調べの際、和美被告は岡村被告のことを「唯一の友人」と話している。(5日の初公判 検察側冒頭陳述)

しかし、16日の裁判では、違う表現をした。

弁護人 岡村被告との関係をどう思っていますか?
辻和美 被告 ―債権者、債務者の関係だと思っています

一方、岡村被告は、和美被告との関係について「大親友です」と大きな声ではっきりと答えた。(9日 岡村被告の証人尋問)

16日の裁判で和美被告は、知人の岡村被告のことを「おかむらさん」と呼んでいたが、何度か「えみちゃん」と呼ぶ場面もあった。いまだ見えてこないふたりの関係。借金の有無、送金の意味。

そしてなぜ、姉のつぐみさんは亡くなったのか。次回の公判は7月18日、和美被告の被告人質問が続けられる。

RKB毎日放送 記者 浅上旺太郎

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