私たちの生活を支える橋やトンネルといったインフラ設備。
維持するためには点検と補修が欠かせませんが、それを担う人材が足りていません。
人手不足を解決しようと福岡市の会社が新たな点検機器を開発、コンセプトは「未経験者でも使える技術」です。
「楽」「安全」インフラ点検に新技術
叩いた音の違いによってコンクリートの状態を確認する打音点検。
使われているのは「銃打音(ガンダオン)」という機器。
従来、人がハンマーを使って力加減を調整しながら行っていた作業を、一定の強さ・速さで行います。
重さは160グラムとハンマーよりも軽く、長さ10メートルまで伸ばすことができるポールと合わせて使うことで、はしごを立てる必要もありません。
点検作業するグエンホアイバォリンさん「とても軽いです。長い時間腕をあげていても楽です」
佐藤汰一さん「はしごが転倒した際などにけがのおそれや危険性がありますが、ガンダオンを使うことでそういったものを使わずに点検が行えますので安全性を確保できます」
「経験の浅い人でもできるように」
この点検機器を開発したのは、橋やトンネルの点検作業などを行う福岡市の「オングリットホールディングス」。
「銃打音」の最大の特徴は経験の浅い人でも、音の違いがはっきりわかることです。
オングリットホールディングス 森川春菜社長「若手の技術者の方だとどうしても判断しづらいということで、標準的な結果が得られるように開発したのがこの銃打音になります」
背景には「インフラの老朽化」と「人手不足・高齢化」
銃打音を開発した背景にはインフラと建設業界をめぐる問題がありました。
国土交通省によると、現在、国内にある約73万の橋のうち、建築から50年が経過したものは約37%。10年後には61%まで増加するとされています。
一方、建設業界の就業者数は1997年の約685万人をピークに2022年には7割まで減少。60歳以上の技術者の割合が全体の4分の1を超えるなど、高齢化と人手不足が深刻化しています。
オングリットホールディングス 森川春菜社長「今までのような、全て人でやっていくというやり方ではなかなか追いつかない状況。テクノロジーなどを活用しながら進めていかないと、安全な維持管理ができないという課題には直面しています」
海外展開も視野に・・・
こうした中、開発された「銃打音」。
従来の技術に比べ安全性や経済性などが優れていると確認され、今年1月、国交省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録されました。
「誰でも使える」をコンセプトに注目される新しい技術。
森川社長はさらに世界に通用する製品を開発していきたいと話します。
オングリットホールディングス 森川春菜社長「インフラの老朽化と人手不足というのは全国の課題だと思うので、それを今後国内で展開していって、最終的には外国の方でも分かるとか、そういうツールを海外にも展開していきたいと思います」