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天神地下街から書店が消える 半世紀営業の積文館書店、14日閉店

RKB毎日放送 2024年8月14日 19時21分

天神地下街が開業した1976年以来、およそ半世紀にわたって営業を続けてきた積文館書店が14日閉店します。

かつて天神エリアは「天神書店戦争」と言われるほど、多くの書店が出店していましたが、その数は年々減少。活字離れや電子書籍の台頭で書店を取り巻く環境は厳しさを増しています。

「ほぼ毎日来てた」「さみしい」の声

RKB 三浦良介記者「福岡市地下鉄空港線・天神駅の改札から出てすぐの場所にあるのが積文館書店です。開業からおよそ半世紀、きょう8月14日を持って閉店します。」

賃貸借契約満了に伴い14日に閉店するのは、積文館書店・天神地下街店です。

積文館書店は書籍のほか、文具や雑貨も取り扱っていて、営業最終日の14日は、文具・雑貨が詰め放題の閉店セールが行われています。

来店客はー「たまに寄っていたのでさみしいですね、残念です。」「ほぼ毎日来ていました。採算がとれなきゃ、しょうがないのかな。」

「天神書店戦争」と呼ばれた90年代

天神地下街にはかつて福岡金文堂がありましたが、2013年に閉店。積文館書店が閉店すれば、天神地下街から書店がなくなります。

1990年代後半、福岡市天神には大型書店が次々と出店し、「天神書店戦争」と呼ばれました。

1996年には岩田屋Zサイドに、全国初の喫茶店方式を取り入れた「リブロ」

1997年には大丸福岡天神店に「紀伊國屋書店」が出店したほか、「丸善」がイムズから福ビルに移転して新装オープン。

福岡三越には「八重洲ブックセンター」が出店しました。

転機が起きたのは2001年。メディアモール天神に在庫数150万冊、西日本最大級の「ジュンク堂書店」が出店し、競争が激化。

紀伊國屋書店や丸善など書店の閉店が相次ぎました。

天神エリアで閉店した書店は2010年から14日閉店する積文館書店天神地下街店まで合わせて13店舗。

現在、福岡天神にある書店は西通り沿いに移転した「ジュンク堂書店」と岩田屋本店内にある「文喫」、新天町にある「福岡金文堂本店」と「積文館書店新天町本店」の4店舗のみとなっています。

書店のないまちが27%に

活字離れや電子書籍の普及などの影響で全国的に書店は減少しています。

日本出版インフラセンターによりますと、全国の書店数は今年3月時点で1万918店で、ここ10年で4864店、3割ほどが姿を消しています。また、出版文化産業振興財団によりますと今年3月時点で、全国1741市区町村のうち、書店が1店舗もない自治体は482市町村で、全体の27.7%に上るということです。

福岡県では60市町村のうち、19の自治体が書店ゼロで無書店率は31.7%。

11の自治体では書店が1店舗のみという状況です。

佐賀県では4つの自治体に書店がなく、無書店率は20.0%。

7つの自治体には書店が1店舗しかありません。

佐賀駅構内にオープンした書店は黒字

そんな中、去年12月に佐賀駅の構内にオープンした書店があります。

「佐賀之書店」。経営するのは、直木賞作家の今村翔吾さんです。

佐賀駅に書店が開設されるのは3年9か月ぶりです。

来店者はー「新刊とか出ても買いに行けなくて、ずっと困っていたので助かります」

経営する直木賞作家「書店には魔力がある」

開業から半年以上が経過した今も、「黒字が続いている」と今村さんは話しています。

直木賞作家 今村翔吾さん「出版の利益構造とかを見ていると、いわゆる一等地にはなかなか出店しづらい状況にあるので、どんどん郊外型になっていって。1時間車で遠い本屋さんに行こうっていうのはさすがに『う~ん』ってなるかもしれないですけど、生活動線上にあれば入ってしまうだけの魅力とか魔力みたいなものってまだ書店は持っていると思うんですよね。経済産業省が打ち出した『書店の支援』も、そういう一助になればいいなとは思っている。」

経済産業省は”書店振興プロジェクト”

経済産業省は今年3月、街の書店を振興するプロジェクトチームを発足させました。

齋藤大臣は会見で「街中にある書店は、多様なコンテンツに触れられる場として、地域に親しまれている」「日本人の教養を高める、一つの基盤」と話しています。

ただ、書店に対する具体的な支援策はまだ何も決まっていません。

RKB 三浦良介記者「福岡市天神に来年春開業するワンフクオカビルディング。西鉄によりますと、このビルに書店が入居するのかどうかは、まだ決まっていないということです。」

現在、福岡市天神に書店は4店舗ありますが、そのうち2店舗は同じく天神ビッグバンで再開発が予定されている新天町にあります。

街の人はー「絶対になくなって欲しくない。うちの隣も本屋だったけどなくなり、ぱっと入れる本屋が至る所にあったら良いですね。」「ネットで読めるじゃないですか、漫画とかも。あんまり困りません。」「本屋さん、よく行く。」「電子書籍があるから、減ってもしょうがないのかなと思います。実際に手に取るのは違うので、あった方がいいかな。」「あったほうが勉強になるし、算数の勉強がいっぱいできる」

本を売るだけではなく、文化の発信機能も担ってきた街の書店。

全国で閉店が相次ぐ中、その存在する意味が見直されています。

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