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「墓じまい」どうしてますか? 遺された家族に金銭的・肉体的・精神的に負担をかけないお墓とは 多様化する故人の弔い方最新事情

RKB毎日放送 2024年8月16日 16時19分

墓石を撤去して供養の方法を改める「墓じまい」。厚労省によると、2022年度に全国で15万件を超え、過去最多となりました。過去10年間で比較すると約2倍の増加です。少子高齢化などを背景に、弔い方、お墓のあり方も変化しています。

神社が「海洋散骨」

博多湾を航行する船の中で行われていたのは、神社の神職による祭祀。船に同乗していたのは県内に住む3人姉妹で、今年3月に84歳の母を亡くしました。

福岡市西区の姪浜・住吉神社では、「こどもたちに迷惑をかけたくない」「後を任せるものがいない」「この海に眠りたい」などの希望を受け、海洋散骨を行っています。

3人姉妹の次女Aさん「母の地元がもともと長崎で、お墓が遠いのもあって、私たちもなかなか行けない。本人が一番希望していたこともあって海洋散骨を決めました」

海洋散骨は、パウダー状に粉砕した遺骨を環境に配慮した水に溶ける布などに納めて、海に撒く自然葬です。

専門業者が執り行うことが多い海洋散骨ですが、こちらの神社では今年4月から海洋散骨の受付を開始し、すでに40件を超える問い合わせがきているということです。

住吉神社・宮司 菊池友久さん「これからお墓を持つのをどうしたらいいかわからないとか、管理をする人がいない、自分たちの代で『墓じまい』をしないといけないとか・・・もっとお墓離れがこれから進んでいくと思います。これは少子高齢化の中で仕方がないことだと思う」

『海におばあちゃんがいる』と思えるよね

3人姉妹の三女Bさん「あっけないなとは思いますが、、やっぱり自分たちが年をとったあとにずっと心配するという懸念があったので、こういう方法も正解かなと思います」

3人姉妹の長女Cさん「おばあちゃんのところにお墓参りに行こうっていう時に、具体的な場所がないということはありますが、大きい目で見ると『海におばあちゃんがいる』と考えられるよねと話して・・・」

住吉神社が行うのは、遺骨の洗浄、粉骨、船舶費用、献花、献酒、散骨証明書、永代供養。遺族は散骨費用と埋葬許可書を用意します。この日行われた「合同散骨プラン」の費用は14万円です。

日本海洋散骨協会によると、会員業者が実施した海洋散骨の件数は、この5年で倍増しています。特に九州は、海で働く人や海になじみのある人が多いことから、海洋散骨の需要が高まっているということです。

希望者多い「樹木葬」

福岡県新宮町にある新宮霊園。今、希望者が増えているのが『樹木葬』です。『樹木葬』とは、墓石の代わりに樹木を目印にするお墓の一種で、墓石分の費用が安くおさえられる上、承継者を必要としないのが特徴です。

新宮霊園 本田宏之さん「一般墓を買う方は、今はほとんどいません。5年ほど前から樹木葬のニーズが増えまして、3年前には樹木葬が全体の6割くらいになってきました」

立花山を仰ぎ、玄界灘を一望できる、四季折々の花に囲まれた高台にある樹木葬エリア。継承者不要タイプのお墓で、この霊園の価格は58万円から。

夫婦向けの2人用タイプから、先祖代々納骨できる大きなタイプまであります。

「ガーデン墓」や「桜墓」

さらに専属の庭師が毎日花の手入れをする『ガーデン墓』や、桜の下で永久に眠ることができる『桜墓』など、残された家族に負担がかからないお墓が多くなっています。

新宮霊園 本田宏之さん「価値観が多様化してきている時代なので、少子化もありますし、それぞれのニーズにあうお墓作り、お墓選びが必要になってくるのでは」

自宅で手元供養

長年、墓石を製造してきた福岡市の山野石材です。

山野石材 一木浩平さん「こちらが樹木葬の石碑になります。数で言うと圧倒的に樹木葬の方が多い。新しくお墓を建てる方が月に数件だとしたら樹木葬が数十件とか」

一般墓の需要が年々減る中で、3年前に新たに売り出したのが手元で供養できる自宅墓『おくぼ』です。

山野石材 一木浩平さん「コロナ禍で外出ができないというところで、『おくぼ』は問い合わせの件数が増えました。今後、暑さもそうですけど、高齢になるとお墓参りが大変になるので、自宅で供養する手段があることは大事かなと思います」

その『おくぼ』は、高さおよそ9センチの小さな骨壺に分骨した遺骨を納めて、墓石をかぶせるもので、値段は9万円。

『墓じまい』が増える中、『おくぼ』に入らない遺骨を、樹木葬墓地に納骨するプランや海洋散骨とセットになったプランもあります。『おくぼ』の遺骨が管理できなくなった場合も、同じ方法で納骨・散骨してもらえるということです。

山野石材 一木浩平さん「問い合わせの3分の1は『墓じまい』に関すること。そもそもどうやって進めるのかとか、見積もりの依頼とか、問い合わせが非常に増えてきています。親族間の相談やお寺さんとの今までのお付き合いもあるので、丁寧に相談をしながら進めるのが大事です」

『墓じまい』にかかる費用は

『墓じまい』をする場合、親族の同意や自治体での手続き、墓地の管理者へ連絡、墓石を撤去、新しい受け入れ先に納骨・または散骨という流れで進めていきます。

株式会社鎌倉新書「いいお墓」2024年によると、『墓じまい』にかかる費用で最も多いのが31万円~70万円ほど。ただ、それ以上の金額がかかったケースもあり、一般的には墓地の広さに比例して費用がかかるということです。

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