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「絵本は時間が流れない滞在時間、自由に選べる魅力」 ”猫が案内する絵本作家二人展”

RKB毎日放送 2024年8月16日 16時55分

福岡県嘉麻市の美術館で、2人の絵本作家の原画などを集めた展覧会が開かれています。

年齢を問わず、絵本の魅力に触れることができるイベントです。

嘉麻市の織田廣喜美術館。

入り口の猫が描かれたのれんから一歩入ると、2人の作家の絵本の世界が広がります。

嘉麻市出身の絵本作家、石川えりこさんです。

石川えりこさん(69)
「たまたま猫を飼っているので、猫好きとか大猫ファンというわけじゃないけど、このへん歩いているので描きやすいというか、猫が登場するという感じです。」

石川さんの絵本、「ほんやねこ」では、色んな表情の猫たちが、童話の世界に導いてくれます。

石川えりこさん(69)
「いまのこどもたちとかおかあさんは、アンデルセンとか私達が小さい頃に読んだジャックと豆の木とかピノキオとか原作を知らなくて、アニメとかそれがスタートだと思ってる親御さんが多いので、イソップとかアンデルセンとかグリムとかが作った本なんだよ、ということを何かのきっかけで知ってほしいなと思って」

東京都出身の絵本作家、ささめやゆきさん。

ささめやさんも猫が主人公の作品がいくつかあります。

「あしたうちにねこがくるの」は日本絵本賞を受賞しました。ささめやゆきさん(81)
「自分のうちに明日猫が来る、どんな猫が来るか、そこのお嬢さんが妄想する、というストーリーを、石津ちひろさんが書きました。

カメレオンみたいな猫がきたらどうしようかとか、じっとして動かなかったらどうしようかとか。私は、それに合わせた原画を15枚から20枚描いたんです。」

絵本は、最後にかわいい猫が来てよかったね、で終わります。

ささめやさんは、パリやニューヨークで絵を学び、帰国後、油絵や版画を手がけました。

「ルーの来た日」では1984年ベルギードスルホフ国際版画コンクールで銀賞を受賞しました。

ささめやゆきさん(81)
「絵っていうのは、線と形と色なのね、その基本をふつうの常識的なことではみつからない、当たり前になっちゃう、当たり前じゃだめなんですよ。」

石川えりこさんは絵本の魅力は、自分で滞在時間が選べることだといいます。

石川えりこさん(69)
「動画だとながれていってしまう、けど絵本はそこに止まってくれてる。じっとみてしまう滞在時間が自由に選べるっていうのが絵本の魅力の一つなんじゃないかなと思ってます。」

トークイベントでは、石川えりこさんが、自分の絵本、「ボタ山であそんだころ」を朗読しました。

石川さん自身の体験から生まれた絵本です。

〈「ボタ山であそんだころ」より〉
私が生まれた町には炭坑がありましたお父さんは炭坑の仕事をしていました
家でお風呂をわかすのにも燃料として石炭をつかっていました

この絵本には、1965年に237人が死亡した山野炭鉱爆発事故でのえりこさんの体験が出てきます。

〈「ボタ山であそんだころ」より〉
突然ばりばりばり、耳をつんざくような轟音がひびきました
空にはみたことのないようなヘリコプターが飛んでいきます
ヘリコプターは一斉に炭坑のほうに飛んでいきます

「ボタ山であそんだころ」は、講談社の絵本文化賞を受賞したほか、海外でも高く評価されています。

しかし、発刊から今年で10年を迎えることから、出版社は、来年7月には販売を終了する予定です。

石川えりこさん(69)
「是非こどもたちに筑豊地区の歴史を知ってもらうために
1冊こどもたちに手渡してくだされば大変うれしいです。」

展覧会には、「ボタ山であそんだころ」のほか、こどもたちを主人公にした石川さんの絵本の原画も展示されています。

訪れた子供
「この顔の絵が好き」

子供の母
「初めて見た作家さんなんですけど、かわいいなと思って。絵本を探してみようかと思いました」

好きな絵本に出会えそうな絵本作家のふたり展。

9月16日(月・祝)まで嘉麻市立織田廣喜美術館で開かれています。

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