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逮捕者が語る「酒はもう抜けていると思った」は本当か 年齢も性別も違う記者3人が検証した 「酔ってる感じはないのに・・・」

RKB毎日放送 2024年8月26日 17時16分

なくならない飲酒運転。

飲酒運転で逮捕された人の多くが「酒は抜けていると思った」と弁解しています。

休憩したら酒は抜けるのか。年齢も性別も違う3人の記者が、実際にアルコールを摂取して検証しました。

飲酒運転が無くならない背景にはアルコールの影響に関する誤った認識があるのかもしれません。

飲酒運転の通報を義務化した福岡県

8月23日、福岡市で飲酒運転の通報訓練が行われました。

福岡県は4年前に、飲酒運転撲滅条例を改正し、飲酒運転を目撃した際に通報することを「県民の義務」だと定めました。

通報を義務化したのは全国でも初めてのことで、飲酒運転に対して福岡県が他の自治体よりも厳しい姿勢で臨んでいることを表しています。

幼い3人のきょうだいが亡くなった

18年前の8月25日、福岡市東区の海の中道大橋で当時、福岡市の職員だった男が酒を飲んだ状態で車を運転し、前方の車に追突。

追突された車は海に転落し、幼いきょうだい3人の命が奪われました。

この事故をきっかけに福岡県では、飲酒運転撲滅を目指す活動が活発化しました。その結果、2021年まで、飲酒運転の検挙件数は減少しましたが、2年前から増加に転じました。

逮捕者が語る『もう抜けていると思った』

8月に入って26日朝までに、福岡県内で30人以上が酒気帯び運転の疑いで逮捕されています。

逮捕された容疑者の多くが取り調べに対し、『もう抜けていると思った』『完全にお酒は抜けていないが大丈夫だと思った』などと話しています。

本当にお酒が残っているという自覚が無かったのでしょうか?

RKB 土橋奏太記者(24)「本当にアルコールは抜けているのか、年齢性別の違う記者3人で検証してみます」

検証したのは、土橋奏太記者(24)、田中康徳記者(41)、奥田千里記者(24)の3人。

ビール1缶とチューハイ2缶を30分以内に飲み、時間を空けて、アルコールの数値を調べます。(いずれもアルコール度数5%)

カメラマン「酔ってきてます?」

田中康徳記者(41)「いま2本目ですけど赤く熱くなってますね、結構危ないというか酔ってるなと」

飲んだ直後に呼気を測ってみると・・。※飲酒直後結果

土橋奏太記者 0・42ミリグラム

田中康徳記者 0・41ミリグラム

奥田千里記者 0・49ミリグラム

酒気帯び運転にあたるアルコールの基準値は呼気1リットル当たり0・15ミリグラム。

3人からは基準値のおよそ3倍にあたるアルコールが検出されました。

もしこのまま運転すると検挙され、運転免許も取り消されます。

2時間休憩して再び検査

RKB 土橋奏太記者「アルコールを摂取した3人の記者がこれから休憩して、どのくらいアルコールを分解するのかみていきます」

3人は仮眠して2時間後に検査してみました。

RKB 土橋奏太記者「おはようございます。まだ普通にくらくらしています。まだアルコールが回っているのと身体が熱いです」※2時間後の検査結果

土橋奏太記者 0・29ミリグラム

田中康徳記者 0・21ミリグラム

奥田千里記者 0・46ミリグラム

3人とも数値は下がったものの酒気帯び運転の基準値は超えたままです。

RKB 奥田千里記者「身体はさっきよりすっきりしているので、あまり下がってないのをみてびっくりしています」

さらに2時間後の検査結果

土橋奏太記者0・09
田中康徳記者0・00
奥田千里記者0・30

RKB 土橋奏太記者「おはようございます。だいぶすっきりしたかなと」

RKB 田中康徳記者「2時間前よりも頭の重い感じがなくなっています」

3人の記者のうち2人は酒気帯び運転の基準値を下回りました。

福岡県警によると、体重約75キロの成人男性では今回3人の記者が摂取したアルコールと同じ量を飲んだ場合、6時間がアルコール分解の目安です。ただ、体調や体質などで個人差があります。

一方、1人は、酒気帯び運転にあたるアルコールの基準値の2倍でした。

RKB 奥田千里記者「まだ基準値の2倍出てますね、全然酔ってる感じはないですけど」

「頭がすっきり」は感覚の話 分解しているかは別

飲酒運転の撲滅に向け活動する栗田晋医師は、分解速度について個人差が大きいとしたうえで、「自分なら大丈夫」という考えは危険と指摘します。

雁の巣病院・栗田晋医局長「頭がすっきりしてるというのはその人の感覚の話です。お酒の酩酊感に対する強さと、お酒を分解しているかしてないかは違うので、基準を自分の感覚に持ってくるのは危険ではないでしょうか」

酒を飲んで運転したら・・・自動車学校で体験教室

お酒を飲んだ状態で運転するとどうなるのでしょうか。

8月20日、警察の指導の下、筑紫野市の自動車学校で行われた飲酒運転の体験教室に記者も参加してみました。

まず教習コースを運転したあと、お酒を飲んで同じコースを運転します。

飲酒前には問題なく走行できたコースですが・・・

RKB 馬場遼之介記者(25)「あぁあぁ」

教官「事故ですね」

クランクでポールに接触したりコーンに衝突したりと終始、不安定な運転が続きました。

RKB 馬場遼之介記者「自分では正常に運転しているつもりなんですけど。自分の気付かないところでぶつかってるということがあったと思います」

「飲酒運転は絶対しない・させない・許さない・見逃さない」

「アルコールは抜けたと思った」「これくらいなら大丈夫」こうした甘い考えが飲酒運転につながるのです。飲酒運転は取り返しがつかない事故につながります。

そうなれば楽しく飲んだお酒が事故の被害者と自分自身を不幸に陥れてしまうことを忘れてはいけません。

福岡県警・筑紫野警察署 前島雅一 交通課長「県民の皆さん1人1人に飲酒運転の危険さというものを知っていただいて、飲酒運転は絶対しないさせない許さない、そして見逃さないということをしっかり認識し周知していただければと思います」

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