「アイゴ」や「イスズミ」という魚をご存知でしょうか?海藻を食い荒らし、磯焼けの一因ともなっている海の厄介者です。
独特の磯臭さのため、食用としては流通していないこれらの魚を活用したドッグフードが開発されました。
福岡市のスタートアップ企業が開発したこのドッグフード、ワンちゃんたちの「食いつき」もいいとのことで、9月1日に発売されます。
「厄介者」の魚が「犬の健康を守る宝物に」
スタートアップ企業「オーシャンリペア」 光斎翔貴 社長(立命館大学准教授)「『海の厄介者』と言われていたイスズミなどが、もしかしたら犬の健康を守る宝物に生まれ変わるような可能性があるんじゃないかなと、そこでドッグフードを開発したわけです」
福岡市で商品発表会を開いたのは、立命館大学発のスタートアップ企業「オーシャンリペア」です。
食用として流通しない魚を使ったドッグフードを開発・販売する会社で、今年2月に福岡市で起業しました。
オーシャンリペア 光斎翔貴(こうさい・しょうき)社長(立命館大学准教授)「『オーシャンハーベスト』というドッグフード。イスズミとアイゴという2種類の魚をベースにして作られた白身魚のドッグフードとなっています。アイゴとイスズミという魚は海の中にある藻を食べてしまう食害魚と言われている。『磯焼け』という問題を引き起こしている点からもイスズミとアイゴを、より積極的に利用しようと考えています」
「磯焼け」に拍車をかける「食害魚」
今、全国の海で問題となっている「磯焼け」。その原因の一つが海藻を食べるアイゴやイスズミといった「食害魚」です。
長崎県の対馬周辺の海ではこれらの食害魚が海藻を食べ尽くして、藻場が焼け野原のようになり、サザエやアワビが少なくなっています。
アイゴやイスズミは磯臭さが強いため食用としては流通せず、定置網にかかっても放流されるため数が減っていないのです。
「食害魚」を食べてみると…
水産物仲卸「白水商店」 原一仁 社長
「これはイスズミの刺身になります」
試食した人はー
「ちょっと磯っぽい感じが出てきますね」
「今、口の中がすごいことになっています」 「確かに」
白水商店 原一仁 社長
「獲れてもお金にならないので市場にも出さない。(このドッグフードは)環境を良くして、さらに漁師の収入も増える。すごく良い商品だと思います」
オーシャンリペアは長崎県五島市で獲れたアイゴなどの食害魚を新鮮なうちにすり身に加工し、九州内の工場に直送しています。
「磯臭い」けど高タンパクで低脂質
アイゴヤやイスズミは高タンパク・低糖質でビタミンDも豊富な白身魚です。
そのため通常のドッグフードより、脂質成分が少ないのが特徴です。
ワンちゃんの食いつきは上々
飼い主およそ120人に実施したモニター調査では、92%の人が愛犬の食いつきの良さを実感したということです。
モニター調査に参加した人は
「好き嫌いが多い子だったんですけど、すごくよく食いついて美味しそうにしていた」
「環境問題にも配慮していて、これだけ栄養素があって3500円だったら別に高くもない」
食害魚を活用し、藻場の回復を目指すドッグフード「オーシャンハーベスト」は500グラム3500円で、9月1日から全国のペットショップなどで販売されます。
オーシャンリペア 光斎翔貴 社長(立命館大学准教授)
「福岡市はスタートアップに非常にサポートいただけるような場所。磯焼けの問題を解決する基軸を作りやすいのが福岡市かなと思い、福岡市で起業しました」
社会課題解決へ スタートアップ企業支援
福岡市は社会課題を解決するスタートアップ企業を支援しようと、ふるさと納税を活用した新たな取り組みを今年度から始めました。
福岡市のふるさと納税の寄付メニューにスタートアップ企業10社のプロジェクトを掲載し、集めた寄付金を財源として補助金を交付するものです。
福岡市によりますと、自治体として全国初の取り組みということです。
30社を超える応募があり、書類選考やプレゼンテーションなどを行い10社を選抜。その1つがオーシャンリペアです。
次はキャットフードの開発も
今年7月から寄付の受け付けを始めたところ、オーシャンリペアには8月27日時点で59万円の寄付があったということです。
オーシャンリペアは「補助金はキャットフードの開発や福岡市西区小呂島の藻場の改善などに活用したい」と話しています。
「セルフ美容」「教員支援で専門家紹介」などの提案も
そのほかには、認知症やうつ病の発症リスクが高まる「フレイル」を予防するために、セルフ美容の講習会などを提案する企業や、教員の負担が重く授業の準備をする時間が不足しているという課題に対し、専門家を紹介するサービスを提供する企業などが選ばれています。
福岡市の高島市長は「支援される企業が軌道に乗ってくれば持続可能に社会課題を解決できる」と期待を示しています。