8月、福岡市で行われたインターハイの走高跳で2メートル24の高校記録を叩き出した、福岡第一高校3年の中谷魁聖。その後行われたU20世界選手権では銅メダルを獲得した。将来を期待される逸材が文字通り「飛躍」を誓う。
跳躍特化の高校で”40センチ”急成長
中谷の中学時代の記録は1m83。福岡県ではトップの記録だったが、全国大会に進出できる1m85には届かなかった。どういう助走をすれば正解なのか、いい跳躍につながるのか全く分からなかったといい「勢いよくなんとなく走って、カーブして助走するって事だけは知っていたので、カーブして走って踏み切るだけでしたね」と苦笑する。
高校で入学を決めた福岡第一高校の陸上競技部は、部員のうち8割が跳躍競技の選手という全国でも珍しい、跳躍種目に特化した部活。中谷は高校で40センチ記録を伸ばす急成長を遂げた。
「部活をするために学校に来ている」走高跳に夢中の高校生
中谷の急成長につながった要因の一つが競技を突き詰める研究姿勢だ。中谷が練習中、しきりに確認しているのは、練習や大会で自らの跳躍を撮影した動画。「自分の思っている以上に違う動きをしていたり、逆に自分の感覚ではあまりよくないのかなと思っていてもいい動きしていたりもあるので、動画を見て動きを確認するのが一番いいなと思っています」と自己分析に余念がない。
学校生活の中でも、頭に浮かぶのは走高跳のことばかり。休み時間にもタブレット端末を手に、世界トップレベルの選手たちの動画を見て研究する。「部活をするために学校来てるみたいなところもあるので」と、部活に行きたくて仕方がないようだ。
高校記録「2m24」はパリ五
輪決勝進出レベルシニア選手に「尊敬はしているけど勝とうと思っている」
中谷の視界にあるのは、世界との戦いだ。8月に行われた、U20世界選手権。中谷は2m19の記録で銅メダルを獲得した。ただ、納得はしていない。というのも、出場した選手の持ち記録では、中谷は1位タイ。優勝を狙う中での3位は、「あまり喜んでいないですね、悔しい気持ちの方が大きいなと思う」。
ただ、高校記録の「2m24」はパリ五輪では予選を突破して決勝に進出できるレベル。これからは世代別のカテゴリーを外れ、東京で行われる世界陸上や、ロサンゼルスオリンピックでの活躍が期待される。中谷はすでに、世界で戦う心構えはできている。「(世界で活躍する選手に)憧れというか尊敬している部分はいっぱいあるんですけど、憧れというよりはその選手たちに勝ちたいという気持ちがある。憧れという部分ではあまり持たないようにしているというか、尊敬はしているけど勝とうと思っている」。
「憧れ」を捨てた17歳が、世界の舞台で文字通り、渾身の「飛躍」を見据えている。