マイナンバーカードを健康保険証とするマイナ保険証への移行のため今の健康保険証の発行は12月2日から停止されます。
これに対し、今の健康保険証を廃止しないで欲しいと医師や歯科医師らが署名活動を行っています。
何が問題視されているのでしょうか。
駅前で行われた署名活動
多くの人が行き交う九州の玄関口JR博多駅前。26日、健康保険証の廃止に反対する署名活動が行われました。
「健康保険証を残して欲しいという署名です。ぜひよろしくお願いします。」
署名活動を行ったのは、多くの医師や歯科医師が加盟する福岡県保険医協会や歯科保険医協会も参加する「保険証をのこして」ネットワークふくおかです。
「保険証をのこして」ネットワークふくおか 七里正昭 事務局長「障害をお持ちの方、認知症の方、ご高齢の方などマイナ保険証を取得できない方々がたくさんいらっしゃいますので、そういう方々を取り残さないで国民皆保険を守ってという思いで、今回『保険証を残して』宣伝行動いたしました」
マイナ保険証のメリットとは
政府は、マイナ保険証のメリットとして過去に処方された薬や特定健診などの情報をスムーズに医療機関に共有できることや、確定申告の際に医療費控除の申請が簡単に出来ることなどをうたっています。
マイナ保険証への移行のため12月2日からは従来の健康保険証の発行が停止されます。
なぜ利用者増えない
しかし、マイナ保険証を登録している人が今年7月末時点でおよそ7450万人だったのに対し、マイナ保険証の利用率は12.43%。
87%以上の人がマイナ保険証を登録していても利用はしていないのが現状です。
どうしてなのでしょう?
記者 Qマイナ保険証使っていますか?
使っていない男性「マイナカードは持っているけど保険証としては使っていません。便利になる面がそれと同じくらいにあればいいけど、何か便利になったっていう実感がまだ今のところわかない」
利用していない夫婦「個人情報を間違えてたとかいうのがあって、あんまり信用はしていません。任せてもいいのかなって。出来るなら今のままがいいよね」
”トラブル”も敬遠される理由
マイナ保険証が敬遠される理由の一つはトラブルの多さです。
福岡県歯科保険医協会が去年11月から今年1月まで調査した結果、県内の142の歯科医院のうち104医院、つまり7割以上の歯科医院がトラブルがあったと回答しました。
この状況は今も改善されていないということです。
大正時代から続く歯科医院
福岡県北九州市で大正時代から続く歯科医院。院長は、マイナ保険証への移行に戸惑いを感じています。
杉山歯科医院 杉山正隆院長「わずかなスペースだけど、やっぱりこんなのも置かないといけないから、22坪しか無いところに機械置くのって邪魔になるんですよ」
登録情報の文字化けやタイムラグによる支払いトラブルもあるそうですが一番の問題は顔認証だと言います。
杉山歯科医院 杉山正隆院長「一つはやっぱり認証の問題でピッてやってすぐ認証できる方もいれば、できない方もいるんですね。顔写真を撮る機械も基本的には固定されているので、例えば小さい子だと抱え上げないとできなかったりとか、障害のある方、車いすの方とかもできないということがあります。その方の病歴もだいたい頭の中に入っているし、カルテに書いているものなんですけど、そういう方であっても、あんた、誰ね?というのがマイナの制度。それで認証ができなければダメなんですね。そこがやっぱり最大のデメリットですよね。」
マイナ保険証を利用しない選択肢もあるけれど・・・
政府は移行措置として従来の健康保険証も有効期限内であれば、最長で来年12月1日まで利用できるとしています。
また、それ以降もマイナ保険証を取得していない場合には、資格確認書を発行して、保険診療を受けることができるとしています。
マイナ保険証を利用しない選択肢も残されてはいるのですが、そのことはあまり周知されていません。
薬局を利用した人「80代ぐらいの方だったと思うんですけど、自分は持っていないからどうしたらいいですか、と尋ねてあったんです。窓口の方に。そしたら、手続きをしてくださいと。来月は必ず。次回のときには必ずマイナ保険証を提示してください、とかなり強めの口調でおっしゃられていましたね。」
医療機関に政府が警告
政府が全国の薬局に通知した資料にはマイナ保険証を患者にすすめるフローチャートが細かく指示されています。
さらに政府は利用実績が低い医療機関は場合によっては療養担当規則違反になるおそれがあると警告しているのです。
「保険証をのこして」ネットワークふくおか 七里正昭 事務局長「マイナ保険証を登録する。使用するというのはそれぞれの個人の方の任意、自由です。また、法令では健康保険証や処方箋でも薬を処方できると決まっていますので、こうした対応は法令違反であると考えています。」
政府は、半ば強引にマイナ保険証の普及を進めています。
従来の健康保険証を残して欲しいという医療現場からの声には、耳を貸さないのでしょうか?