去年、福岡県久留米市で小学校教員の女性(当時35)が、自宅マンションで亡くなっているのが発見され、当時会社員だった女性の夫(42)が殺人罪などで逮捕・起訴された。
福岡地裁で始まった裁判員裁判では、女性の死因をめぐり法医学者の見解が割れている。女性は、夫に殺されたのか。自殺したのか。
殺人と死体遺棄の罪に問われた夫
起訴状などによると、福岡県久留米市の無職・渡辺司被告(42)は去年9月、自宅マンションで小学校教員の妻・彩さん(当時35)の首を圧迫して殺害したうえ、およそ1か月間、自宅に遺体を放置したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われている。
初公判で渡辺被告は、死体遺棄の罪は認めたものの、殺人罪については起訴内容を否認した。弁護側は「彩さんは自殺した」と主張している。
検察側の証人 解剖した医師は「自殺の可能性は低い」
9月26日、法廷には検察側の証人として妻の遺体を解剖した医師が出廷し、遺体の解剖結果などについて証言した。
医師は、喉仏の下にある骨に残っていた骨折の痕について、「自傷では起こりがたい」などと証言し、自殺の可能性は低いという見解を示した。その上で、彩さんが抵抗した痕跡が確認されなかったことから、「睡眠薬やアルコールを摂取させられるなど、何らかの理由で抵抗できない状態だった可能性も考えられる」と述べた。
反対尋問で弁護側は、「窒息死した遺体に見られるうっ血などの特徴が、彩さんの遺体に認められなかった理由」について質問。医師は、「腐敗が進んでおり、死後変化の影響が考えられる」と回答した。
弁護側の証人 法医学の教授「自殺した可能性が高い」
一方、10月1日の公判で弁護側の証人として出廷した法医学の専門家は、「窒息は首の骨折に伴う気道閉塞などによるものである可能性が高い」と証言。そのうえで「争った形跡がない」などとして、彩さんが自殺した可能性が高いという見解を示した。
夫は事件当時、利き手を骨折していた
もうひとつ、法医学者の見解が異なる点がある。
被告の夫は事件当時、利き手である右手人差し指の付け根を骨折していた。骨折した状態で、成人女性の首を絞めて殺害することはできるのか。
検察側の証人である解剖医は「指3本くらいを自由に使えれば首を絞められないことはない」と証言した。
一方弁護側の証人である法医学の専門家は、「骨折している状態で首を絞めることは困難」と証言した。
判決は10月21日
裁判は今後、被告人質問などが行われ、10月21日に判決が言い渡される予定だ。