飛ぶように売れる新米でも「助けてこのままじゃ生きていけない」
生産者の苦境 JAが水田に記者を呼んで訴えた
コメの価格が高止まりする中、JAグループ福岡がコメ作りの現状を知ってもらおうと現地説明会を開きました。
価格が上がっても経営は非常に厳しいと生産者は訴えています。
「甘みあっておいしい」新米の味
RKB 江里口雄介記者
「JA嘉穂の元気つくし、新米をいただきます。美味しい、粒もたって、甘みもあっておいしいです」
「令和の米騒動」と言われる中、コメの価格や農家の現状について正しく知ってもらおうとJAグループ福岡が1日、報道陣向けに開いた現地説明会。
新米の収穫作業などを紹介しました。
Q今年の元気つくしはどうですか?
嘉穂才田農塾第一利用組合 斉藤保生 組合長
「まあ、普通じゃないですかね。今年は日が照るから、同化作用(光合成)が激しいでしょう。それでやっぱり肥料の多いところが、多いようです」
今年は気温の高い日が続いたため、コメの生育が早く追加の肥料をまくなど、例年より手間とコストがかかったと言います。
5キロ・2700円 例年より500円高く販売
そうした中、近くの直売所では、新米の夢つくしが5キロ・2700円で販売されていました。
去年より500円ほど高いそうです。
JAふくおか嘉穂 ファーマーズマーケット 大内田伸二 店長
「売れ行きは例年に比べてかなりいい状況です。5割以上です」
この直売所では去年のコメは7月に売り切ってしまったため、新米が入るや否や飛ぶように売れたということです。
機械・肥料・農薬 採算合わない
一方で生産者は、まだまだ今の価格では経営的にも厳しいと話します。
嘉穂才田農塾第一利用組合 斉藤保生 組合長
「もう再生産価格(コストに見合う販売価格)が全然合わんですよ。コンバインの4条刈りやったら、900万近くするとですよ、それに田植え機が2~300万円するですしね、とてもやないけど減価償却しよったら合わんですよ。みんな作り手がないですよ。」
兼業農家が8割に
原料の多くを輸入に頼る肥料や資材の高騰に加え、10年ほどで更新が必要な機械の負担も相まって、重くのしかかる生産コスト。
コメ農家だけでは生活が成り立たないため兼業農家が増えていて、JAふくおか嘉穂によりますと生産者、およそ2000人のうち今や8割あまりに上るといいます。
そうした状況を少しでも改善しようと、JAグループ福岡ではコメを集荷する際に生産者に前払いする概算金を今年は60キロ当たりおよそ3500円上乗せし、昨年比で28%程アップしました。
ただ、コメの小売り価格に対してJAグループ福岡は…
JAふくおか嘉穂 畠中和好 専務理事
「今回のお米の値上がりにつきましては、肥料、農薬等、生産資材の値上がりに対する価格の転嫁が原因ではございません。コメ不足による一時的な値上がりであるということ」
生産コストの高騰を価格転嫁出来ていない現状と需要のバランスの難しさを改めて訴えました。
コメの値上がりが全国的な問題となっていますが
実は、コメの価格は30年前の水準よりも低い状況なのです。
コメの適正価格は
JAグループ福岡では、コメを貯蔵をするカントリーエレベーターの老朽化による改修費用や、低温農業倉庫の新設にも莫大な費用が必要だとして、施設が維持できる事業の在り方を模索しているとしています。
嘉穂才田農塾第一利用組合 斉藤保生 組合長
「今、ちょうど値上がりしてるけど、まだそうでもない。もうちょっと農家を助けちゃらんと、今のままじゃ生きていかれんですよ」
コメの値上がりは家計にとって大きな痛手ですが、JAは「消費者に農家の現状を知って欲しい」と訴えます。
需要と供給のバランスを見極めながらも、生産者が「コメ農家だけで食べていける」ための価格転嫁が喫緊の課題となっています。