石破新政権は、2020年代に最低賃金を全国平均で1500円にする目標を掲げています。
人手不足が深刻な日本の労働市場。時給のアップは解決につながるのでしょうか。
最低賃金が過去最大幅で引き上げられた10月。アルバイトの獲得に苦慮する様々な業界で現状を取材しました。
「賃金上がるならパートしたい」期待の声
子育て中の母親
「野菜をいろいろ食べさせたいんですけどその野菜が高くて種類を沢山っていうのはできない感じになってますね」
10月に値上げされる食品などは2911品目におよび年内最大の値上げラッシュとなっています。
一方、10月からは最低賃金も過去最大の上げ幅で引き上げられ、福岡県では5日から、時給992円と51円アップしました。
賃上げに期待する声も聞かれます。
飲食店アルバイトの大学生
「去年最低賃金が上がった時に上がったので上がると思います。今回も上がったらいいなって感じです」
社会人
「もうちょっとお給料上げてほしい。生活費もっと余裕持って貯金したりとかしたいです」
子育て中の母親
「子どもも大きくなってきたので賃金が上がるんだったらパートしたいなって思っていて。子どもにかかるお金が結構大きいのでそれで少しでも賄えればなって思ってます」
人件費のアップ つらい企業も
一方、従業員の賃上げは企業にとっては人件費のアップであり、求人情報を扱う会社の担当者は、企業収益の圧迫につながっていると指摘します。
クリエイト福岡営業所 木村淳一 所長
「色んなものが値段が上がっているところで、それをそこの会社さんのサービスの料金単価に転嫁できてればいいんですけど、なかなか色んなものが上がっているので利益率が下がってしまってそれを賃金に反映しづらい、そういったお客様も多くなっています」
節電やシフト調整で時給上げた野球用品店
福岡市内の野球用品店は10月からアルバイトの時給を、50円引き上げ、1000円にしました。
輸送コストなども上がる中での人件費のアップは楽ではないと話します。
野球工房M福岡店 岡田大志 店長
「物価高がかなり進んでいるので、ベースアップしていかなければならないというのは仕方がないことなのかなとは感じているんですけど、会社としては人件費がその分増えますので、ちょっと苦しいという状況もあります」
アルバイトの時給を上げるため?、電気をこまめに消したりシフトを細かく調整したりと経費節減を徹底しました。
一方で、「賃上げで従業員のモチベーションが上がり、店に活気が出て売上が上がるという好循環」が生まれることを期待しています。
野球工房M福岡店 岡田大志 店長
「働くスタッフもベースがあがるというところで、それをモチべーションアップにつなげてもらって、お店の方も活気を出していきたいなという感じです」
店で働く20代のアルバイトの男性も、やる気をにじませました。
アルバイト
「時給が上がる前に比べたら自分のモチベーションとかも上がると思うので、その分やる気がでるかなって思ってます。車が趣味なので車に投資したい。めっちゃテンション上がります」
「10年で状況は変わった」
福岡県では、この10年の間に、最低賃金が265円上がりました。
しかし、賃上げだけではアルバイトを確保できないほど人材獲得競争が激しくなっているといいます。
クリエイト福岡営業所 木村淳一 所長
「10年前であれば、福岡だと700円台が最低賃金になっていましたけど、10年でも大分状況は変わって来ておりますので、上げないと人が集まらないという状況」
人手不足が続く日本の労働市場。特に深刻なのが、飲食業や清掃業などのサービス業です。こうした業界では、最低賃金に合わせた引き上げだけでは厳しいと話します。
記者Q
いくらくらいの時給を提示すれば人は集まるのでしょうか。
「最低賃金が992円の福岡県の場合、やはり理想をいえば、1200円くらいあると非常に集まりやすくなります。1400円とか1500円で求人を出すお客さんもいらっしゃいますけど、あまり高いと、求職者が逆に『その分大変なお仕事なんじゃないか』と思われる可能性がありますので、ある程度適正で高いラインは1200円。、現実的に難しいのであれば1100円とかにしませんか、とかそういうご提案をさせていただいております」
「まかないが美味しい」「家から近い」賃上げプラス必要なこと
加えてカギになるのが働き方です。
特に人材獲得競争が激しい飲食業界で働く若者は賃金以外にも様々なことを求めています。
アルバイト大学生
「まかないがあることと、そこまで遅くまでやってるお店じゃないので、帰る時間が遅くならないところ」
アルバイト大学生
「近さで選びました。やっぱりまかないが美味しいところ。きょうは遅くまで残れる?とか聞いてくれる、融通が効くというか、親身に授業が明日は早いとかそういうのを聞いてくれるところがいい」
アルバイトの若者に限らず、人材を獲得するためには賃金だけではなく、どんな働き方を提示できるかが求人への応募数に大きく影響するということです。
クリエイト福岡営業所 木村淳一 所長
「時給だけではなくて、今の方は、働き方というのをとにかく重視してますので、自分の働きたい時間で、または自分の家の近くでとか、都合の言いタイミングで働きたいというニーズが多い。そういうことをできるかできないかで、応募が来る来ないというところに影響している状況です」
少子化の影響で生産年齢人口が急減し、人材獲得競争は今後更に激化することが予想されます。
賃金アップは、従業員を雇用するための最低条件。
この競争に勝つためには多様な働き方に対応する必要がありそうです