キャナルシティ博多や天神ビジネスセンターなどを手がけてきた福岡地所は、九州大学の病院キャンパス内にライフサイエンスに特化した新たな創業支援施設を開設すると発表しました。ライフサイエンスとは生命科学とも呼ばれ解明されていない生命の現象を研究し、医療や薬の発展や、環境問題の解決などにつなげるものです。
福岡市の都心部にライフサイエンスラボができることで、何が期待されるのでしょうか。
細菌・ウイルス取り扱う実験室も
福岡市東区にある九州大学の病院キャンパス内に開設される「福岡馬出ライフサイエンスラボ」。
医療の発展や新たな医薬品作り食料・環境問題の解決など、人々の生活に関わるライフサイエンスに特化した6階建ての創業支援施設で、来年12月末の竣工を目指しています。
施設には細菌やウイルスなどを取り扱うことができる実験室などを備え、入居する企業は高額な実験機器を共同で使用することもできます。九州大学病院は「この病院キャンパスから革新的な開発成果を世界へ発信していきたい」とコメントしました。
ライフサイエンス企業「自社単独での解析や実験は難しい」
ライフサイエンス企業のひとつ、福岡市の「NOVIGO Pharma(ノヴィーゴファーマ)」。
九州大学発の医療系スタートアップ企業で、皮膚から薬を簡単に吸収できる技術などを開発しています。
NOVIGO Pharma 石濱航平 CEO「臓器を狙って薬を届ける技術を開発している九州大学のスタートアップでして、定期的に服用が必要な飲み薬を皮膚から持続的に投与する技術を開発しています。最近では、アルツハイマーやパーキンソンといった脳に狙って薬を届ける技術を開発しております。」
福岡の都心部には高額な実験機器を揃えたレンタル施設はなく、新薬の開発などを目指すスタートアップ企業にとって、成長を妨げる要因のひとつだといいます。
NOVIGO Pharma 石濱航平 CEO「実験ができるラボが少ないんですよね。スタートアップ立ち上げ初期は、どうしても自社単独での解析や実験は難しいんですけど、装置の利用なども期待できますし、九大病院の研究室とのコラボレーションも期待できます。スタートアップがそこに集積することで、働いている研究者同士の良い刺激になると思っています。」
開発の確度が上がる」と期待
新型コロナの世界的流行で注目度が増したライフサイエンス市場は、少子高齢化が進む中、今後も拡大すると予測されています。
政府は今年7月、医薬品産業を日本の成長産業と位置づけ、新薬の研究開発を行うスタートアップへの投資を増やす方針を表明しています。
NOVIGO Pharma 石濱航平 CEO「薬というのは1社単独で開発していくのは相当難しいと思います。大学であったり連携する企業だったり、スタートアップ同士での意見交換は大事ですので、そういう場が形成されることで、より開発の確度が上がって実用化までの道筋が確固たるものになっていくのではないかと考えています。」
世界のライフサイエンス市場
アジアの創薬拠点を目指す「福岡馬出ライフサイエンスラボ」。
施設を手がける福岡地所は資金調達から臨床開発まで手厚いサポートを提供したいとしています。
福岡地所・開発事業一部 智原南斗さん「世界のライフサイエンス市場は、2023年で約150兆円と言われています。これが2030年には約250兆円規模へ成長すると予測されているので、福岡地所としては馬出の地からグローバルに羽ばたくようなスタートアップを生み出せるよう全面的にバックアップしていきたいと思います。」
国の内外からスタートアップ呼び込めるか
2012年、福岡市は雇用創出や経済の活性化を目指し、「スタートアップ都市」を宣言しました。
国家戦略特区の認定を受け、スタートアップ企業の法人税の負担を軽減したほか、廃校となった中央区の大名小学校を改装して2017年に創業支援施設フクオカ・グロース・ネクスト(=FGN)を開設。
昨年度末までに入居企業98社が合わせておよそ422億円の資金を調達するなどの成果を上げてきました。
運営は福岡地所など4社が行っていて、今年度からは入居企業に限定せず、福岡市に本社を置くスタートアップへの支援も行っています。
都市近接型のライフサイエンスラボの誕生で、国の内外からスタートアップを呼び込めるのか注目されます。