Infoseek 楽天

「市長より稼いだ」アワビは激減 幻の高級魚が増加「色のついた赤い魚が多くなった」海の異変

RKB毎日放送 2024年10月10日 16時24分

九州の北部・玄界灘ではこの10年前後で海藻が激減し、サンゴや熱帯魚の仲間が増え続けています。漁業にも変化が起きていて「幻の高級魚」と呼ばれるクエなどの水揚げが増加しています。

ダイビングスポットで見た「海の変化」

RKB 今林隆史記者「地球の歴史を感じられる七ツ釜ですが、海の中では異変が起きています」

国の天然記念物に指定されている佐賀県唐津市の七ツ釜。

溶岩が冷え固まる時にできる柱状節理という規則正しく並んだ柱のような構造が海の中まで続いていて、ダイビングスポットにもなっています。

かつては岩肌が見えないほど海藻に覆われていた七ツ釜。

玄界灘で40年近く潜ってきた浪口志郎さん(77)はその変化を目の当たりにしています。

唐津マリンスポーツクラブ 浪口志郎さん「最近はもうこの海藻もほとんど私が見た感じからすると10分の1ぐらいしかないです。おそらく枯渇傾向」

アワビは”絶滅危惧種”に

浪口さんの父親は七ツ釜でアワビを取る潜水漁を行っていた海士で、かつては「市長よりも稼ぐ」と言われていたそうです。

ただ、ここ10年ほどで海藻が激減し、海藻を食べるアワビは絶滅危惧種と呼ばれる状態になっています。

海藻が消えた海ダイバーには・・・

一方、海藻が消えたことで柱状節理がはっきり見えるようになり、ダイバーを楽しませています。

海の変化は海藻が消えたことだけではありません。

カメラで捉えたクマノミの越冬

RKB 今林隆史記者「イソギンチャクの間から姿を見せたのは熱帯魚のクマノミです。いたるところでその姿を見ることができます」

JNNは20年にわたり玄界灘の水中を取材。熱帯魚の一種クマノミが姿を見せるようになりやがて越冬し世代交代していく様子を撮影してきました。

海の変化について浪口さんは…

唐津マリンスポーツクラブ 浪口志郎さん「南方系の色合いといいますかね、海の中が。ソフトコーラルがいっぱいになったり、今まであまり見なかったアラがたくさん見れたりしていますね」

幻の高級魚「クエ」が増えた

玄界灘でダイバーが目にする機会が増えているのが九州ではアラとも呼ばれるクエです。

ユネスコの無形文化遺産に登録されている「唐津くんち」の際に姿煮がふるまわれるほど特別な魚です。

「幻の高級魚」とも呼ばれるクエですが、九州北部での水揚げは増加しています。

調査を行った水産研究・教育機構は温暖化で九州北部がクエの仲間にとって「生存に望ましい環境になっている」と指摘します。

水産研究・教育機構 奥山隼一さん「クエはまだマシな方でですね、特に九州近海では熱帯性のハタ類、具体的にはスジアラ、アカハタ、あとオオモンハタといった種類のですね、元々サンゴ礁域熱帯域に住んでたような魚種が近年九州近辺あるいは本州の方で増加している」

「色のついた赤い魚が多くなった」

福岡の魚市場でもクエやその仲間のハタ科の水揚げが年々増えているということです。

福岡魚市場 貞兼清治さん「ここ数年本当多くなりましたね。こういうものが、色のついた赤い魚が多くなりました。クエの小さいのにしてもキジハタの小さいのにしてもアカハタの小さいのにしても、鮮度のいいやつ、サイズのあったやつは台湾に輸出しています」

玄界灘を含む東シナ海北部の海面水温はこの100年で年平均1.31℃上昇。

日本近海の平均を上回る水温の上昇によって漁業、そして海との付き合い方は大きく変わっています。

この記事の関連ニュース